第27話 つりばし効果

 あの空島へ上がるには。

 アンダレイ山脈からロープとか投げたらいい?

 ねえ、カーランドさん。


「いえ、とんでもない。あの空島は、魔族によって作られた強襲駆逐島で、外からの侵入はまず許しません。神域に攻め込むだけの魔族を乗艦させていましたから、戦争が終わった今でも魔獣が山盛りですし。各所には収容棟があるため『不沈の空牢くうろう』とも呼ばれており、さまざまな境遇の者が今も幽閉されています」


 え、じゃあ、あの金髪のティアラさんは、魔族に捕らわれちゃった囚人めしうどなの?

「いえ、ティアラ様は、母君を救うために潜入を続けています」


 するとティノちゃんが。

『まずいですね。女神像から集めたデータをディープラーニングしたところ、ティアラさまとお兄さまが将来幸せになれる可能性はゼロパーセントと出ました』


 お兄ちゃんネタには敏感なディーネちゃんが。

「でしたら無害ですわね。それに、直木さまを助けてくださった御仁ですから、むしろ『おいしい存在』ではありませんこと?」


 梨乃ちゃんは、やや警戒した様子で。

「きれいなブロンドと、おおきな胸には不安を感じますが、直木さんは小柄な女性が好みですし、控えめな性格を望むとも――」


 それはたぶん『どんな子が好み?』って聞かれたときに、顔がよくて、性格はイケメンで、年収一千万円以上あるけど、お願いすれば仕事を休んで旅行に連れてってくれる人、って答えちゃうあれかと。


 それ以前に。

 くっつきそうな気配ってあるの?


『映像を見てください。すでにおふたりは、戦場で背中を預け合うまでに絆を深めています。放置すれば、おふたりは九八・四パーセント結ばれるでしょう』


 結ばれる率たかっ!


 ディーネちゃんが慌てて。

「ど、どど、どうすれば回避できますのっ!?」


 梨乃ちゃんも、ポーカーフェイスのまま体を微動させて。

「ティノーさんのプランを信じてますから!」


『はい。おふたりとも怒らないで聞いてください。たとえ何が起きても怒らないと誓ってください。大事なことなので念を押しますが、絶対に怒らないとの契約文です。承諾しますか?』


「ええ、承諾しますわ」

「承諾します」


 あ、これたぶん。

 ろくでもないやつだ。


『私が人間アバターを使って、一時的にお兄さまを籠絡ろうらくします』

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