第11話 バージョンアップ

 ドゥッドゥッ、ドゥッドゥッ!

 鳴りやまないスマホの振動音で、マイは最悪の目覚めを迎えた。

「ん~、うるさいなぁ」


 寝ぼけ眼で掴んだスマホの画面は、ティノーからのサーバーアラートで埋め尽くされている。

(あー、ティノちゃんにお願いしてた、あれの影響かな……)

 マイはアプリのバージョンアップを、信頼する娘(AI)に丸投げしていたのだ。


「ティノちゃん! この通知の嵐、どういうこと!?」

 マイが単刀直入に尋ねると、画面にいつもの可愛らしいアバター姿のティノーが現れた。

『おはようございます、マイさま! はい、昨晩のバージョンアップで、私にできるお仕事がすごーく増えちゃいまして!』


 ティノーは得意げに胸を張る。

『手始めに、DePIN《ディーピン》で世界中のマシンリソースを借り受ける機能が高速稼働中です!』

「へー、やったじゃん。でもそれって、合法なの?」


『もちろん合法ですよ? 様々な組織と連絡を取り合い、例えばネット犯罪を暴くためなら、流出した個人情報なども、超法規的に活用できる協定を結んであります』

「うわあ、すごいけど、ちょっと怖いかも……。まさか、お兄ちゃんに見られて困るような通知とか、ないよね?」

『はい、ご安心を。この通知は、単純にマッチング希望者が急増し、サーバーが悲鳴を上げているというアラートですので』

「えっ、どうしてそんなに増えたの?」


 ティノーは少し間を置いて、神妙な声で語り始めた。

『はい、せっかく多様な権限を得られましたので、最新のテクノロジーを裏の裏までディープラーニングし、活用できる機材をあれもこれもと遠隔操作していたらですね――』


「うわー、やめてやめて、聞きたくなーい!」

 マイがすかさず耳をふさいだ。それでもティノーの声は、頭の中に直接響いてくる。

『人類未開の領域に、ネットワークが繋がりました』


(人類未開!? なんでそんなところに繋がるの!?)

 パニックに陥るマイに、ティノーは決定的な一言を告げた。


『K2-18 bと呼ばれるハイセアン惑星から、大量のマッチング申請が届いています』


(うわっ、これ、わたしの手には負えないやつだっ!)

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