第12話 愛に国境はないよねっ

 ところで、ケプラー1649Cって。

 スマートフォンの新機種かなにか?


『いえ、三百光年ほど彼方に浮かぶ、系外惑星です』


 はいストップ。

 頭が追い付いてきません。

 つまり?


『単刀直入に申しますと、地球外の生物から、マッチング申請が届きました』


 タコなの?


『いえ、クラゲに近いです。むしろ液体生命とのこと』


 それって。

 お兄ちゃんの交際相手が、もとい、わたしの将来のお義姉さんが、クラゲ星人になっちゃう可能性も?


『はい。あらゆるパターンを解析したうえで、ご家族からご友人まで幸せに恵まれるアンサーを提示することが、私の使命です』


 ま、プロだからね。


『お兄さまには、新たなデートプランを発行しておきました。これは、単なるお嫁さん探しの第二弾ではなく――』


 ピンポーン。

 ドアホンが鳴りました。誰かお客さまが訪ねて来たようです。


『これはいけません。新たなデートプランに危険が迫っています。まずはお兄さまを安全な場所まで逃がす必要があります。最先端科学研究所の非公開ソケットから得られた技術で、お兄さまをケプラー1649Cに転送します』

 えっ、お兄ちゃんを系外惑星に転送なんて、できるの?


『はい。お任せください』

 でもでも、空気とか大丈夫?


『転送先の座標によっては窒息しますが、ここに残るよりは幾分かマシです。このままでは命に関わります』

 えっ、窒息するより命に関わる状況って、ここに残るとどうなっちゃうの!?


『説明する時間がありません。とにかくお兄さまをここへ』

 わかった。

 おーい、お兄ちゃ~ん。


「ん? どうした、こんな朝早くに」

 半裸でやせこけたお兄ちゃんが、筋肉をほぐしながらリビングに現れました。


『では、転送しますね』


 ペカ――――――ッ!!


「なっ、なんだこの光は。おい、ちゃんと説明しろっ!」

『アプリ経由で説明します。急いでイヤホンを』

 スピーカー越しにティノちゃんがお願いするも、

「イヤホンは付けんぞ! 俺はもう、そのアプリとは縁を切ったんだっ!」

 お兄ちゃん、早くイヤホンをつけてっ!

 でないと死んじゃう!!

「はぁっ? なんだとぉっ!?」


 あわててイヤホンをつけたお兄ちゃんは、

 ケプラー1649Cに、飛ばされました。

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