第6話 ティノちゃんと家族

 沈む太陽は逆光でカメラを眩ませます。

 もう一つの太陽は、その美しさでお兄ちゃんを魅了します。


 夏物のワンピースを着た梨乃りのちゃんは、二次元AIのティノちゃんにそっくりで、おとなしそうな美少女でした。


『それでは始めましょうか』

 互いのイヤホンから、ティノちゃんが進行役を務めます。


『まずはお兄さま、自己紹介をどうぞ』

「ああ、俺の名は神場じんば直木なおきという。よろしくたのむ」

 ここで梨乃ちゃんの視線が上下に揺れました。

「直木さん、ですね。よろしくお願いします」

 考えてみれば、お兄ちゃんってば、ずっと半裸です。

 大ピーンチ!

 すると梨乃ちゃん、めいっぱいまで背伸びをして、お兄ちゃんの頭からタオルを引きずり下ろしました。

 やや、くたびれたマッチョを見まわして。

 よいしょ、よいしょ。

 汗をぬぐってあげます。


「直木さん、シャツを着てください」

 ですよね~。


「風邪をひかれては困ります」

 って、体調への気遣いでしたか。

 とってもいい子ねっ!?


「ところで、ティノーさんが直木さんのことを『お兄さま』と呼ぶのはなぜですか?」

「ああ、ティノはうちの家族だからな」

 すると、少しほおを赤らめて。

「もし、あなたと結婚すれば、私は、ティノーさんのお姉さんになれますか?」

 結婚というワードで、体が硬直するお兄ちゃん。

「ぬ、ちが、そ、それはだな、少々語弊があって、ティノーは俺の妹ではなく、家系図の上では、めいっ子に当たる親類だ」

 ですです。

 わたしの娘ちゃんだし。

「めいっ子さん、でしたか。では、直木さんと結婚しても、私はお姉さんにはなれない、と……」

「いや、妹は、その、べつにいるぞ」

 梨乃ちゃんの表情が、ぱぁっと明るくなりました。


 わたし、歓迎されてる?

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