第3話
直也と知り合ったのは高3の冬だった。
友達に誘われ何となく行ったゲーセンで大学生であった彼らと知り合いグループ同士で盛り上がった。
自然とカップルに分かれて色んなゲームで遊ぶようになり私は直也と一緒にプリクラを撮った。
2人並んで肩を抱かれた時、緊張と同時にときめいてしまった私は彼の目にどう映ったのだろう?
出来上がった写真の私は嬉しそうに微笑んでいた。
連絡先を交換して別れた私を友達は羨ましそうに囃し立てたが、お洒落で優しそうな直也に交際を申し込まれた私も運命を感じ嬉しかった!
実際に直也はとても優しくて待ち合わせて会うたびにどんどん惹かれて行った。
美しくもなく可愛くもない私には初めての恋人と呼べる存在・・・夢中になったのは当然かも知れない?
そしてクリスマスの夜、強く抱き締められた私は直也の腕の中で目を閉じた。
幸せ・・・!?
当時の私は幸せに包まれていた!
初めてのキスからそれほど期間を置かずに私は彼に自分のすべてを捧げてしまった。
後悔など微塵も無く、愛される喜びに震えていた。
会うたびに抱かれ、直也が求める色んな要求に嫌われまいと必死で応え続けた・・・
この愛が永遠に続くとその時は本気で信じていた!
何故もっと慎重に行動しなかったのか?
今更、自分に問い掛けても当時の私がそんな言葉を受け入れるはずもない
それほど私は直也に夢中だったのだ。
私は大学へと進学し、直也は社会人になった。
その頃から少しづつ歯車が狂い始めていたのかも知れないが私は否定し続けた!
段々と幸せが遠ざかって行くような感覚・・・
直也との距離が次第に離れて行くような焦燥感。
どんなに縮めようと努力しても叶わない
笑顔で暮らした日々は段々と涙に暮れる日々へと変わって行くと同時に孤独が多くなった!
ただこれ以上、嫌われたくはないと身体を求められれば素直に応じながらもそこに愛情は感じられない。
「私は抱かれるだけの遊び道具?」
直也を受け入れながらそんな疑問が浮かぶ
なかば拷問のような日々が続いた後に待っていたのは情け容赦ない別れの言葉だった!
ずっと前からわかっていたはずなのに・・・
すべてを捧げてしまった私が直也の心を繋ぎ止めるモノなど何一つ持っていない。
告げられた瞬間、光が消え真っ暗になった。
直也に隅々まで触られ汚れてしまった身体!
侮辱ともいえる言葉で引き裂かれボロボロになった心!
それを記憶の中に置いたまま生きては行けない・・・
深夜に家を抜け出した私は死を決意し通学用のバイクをなるだけ遠い場所へと走らせた。
そこへ彼が現れライターを放り投げた!
蓋を開いて火を着けるとゆらゆらと風に揺れる炎は何だか頑張れと囁いてるようで気持ちが落ち着いた。
返せるかもわからないのを承知で預けてくれたんだ!?
このライターを返せる日が来るまで・・・
大事に上着の内ポケットに入れた私は大きな息を吐いてスクーターを走らせ家に向かった。
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