「殺し屋」営業中です

人間

第1話

俺は人を殺したことがある。


それも1人じゃない。


もう何人殺したか覚えてねぇな。


少なくとも元カノよりかは多いな、って。



ははっ、そんな怯えた顔すんなよ。


別にお前さんを殺そうってんじゃない。


俺はただ、死にたいって言う人から金をもらって殺してやってる。


「殺し屋」ってやつだ。



色んな奴がいたなぁ。


いじめが辛くて死にたいって奴とか、


鬱病の患者とか、


ああ、自殺するのを見ててくれっていう奴もいたな。


そいつは半額にしてやったっけな。



最低、この人殺し、


ってか?


知ったこっちゃない。


このくらいしか生きてく術がねぇんだよ。


てか、そもそも需要と供給ってやつが成り立ってるからいいだろ。



なんでこんなことをしてるか?


リストラされちまったんだよ。


そりゃ、最初は再就職しようとしたよ。


でも低学歴な上に、前科持ち。


雇ってくれるとこはなかった。



まあ、こんなことはどうでもいい。


俺だって生きたくて生きてるわけじゃねぇよ、こんな腐った世の中。


じゃあ自殺すれば、って?


いやいや、無理無理。


だってあいつらみんな苦しそうに死ぬんだもん。


殺してくれって言う割に最後まで生きようと必死にもがいてさ。


あんな最期はごめんだね。




なぁ、俺は「悪」に見えるか?


「正義」ってなんだ?


誰が決めてんだ?


法律に触れれば「悪」なのか?


俺にはよくわかんねぇよ。


なぁ、お前さんにとって「正義」ってなんだ?



そろそろバス来るみたいだな。


すまねえ、変なこと聞いちまった。


暇つぶしに付き合ってくれてありがとよ。


全くここのバス停、もっと本数増やせよな。


この後3件も仕事入ってるってのに。

 


じゃあ、


元気でな。

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