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腹が満たされたので改めて店内を見回してみる。さっきはカウンターのガラス越しに並べられたメニューに夢中でわからなかったが、厨房スタッフは人間でチェック担当がオートマタだった。いましがた、伊野田のテーブルにビールを注いでくれたスタッフの頭上にも円環がぐるぐる回っていたため、それがわかった。
円環がなければ人間とオートマタの区別もつかないだろう。強いて言えば、オートマタの造形はほとんどが綺麗すぎるため、それで判断が付くこともあるが。人間味がないほど整った外見になっているのは、デザイナーにコンプレックスがあったのかもしれないと、昔に考えたことがあった。
時間のせいか、店内は賑わっていた。店の奥が特に賑やかなので少し体を傾けて様子を伺うと、大きなスクリーンにアイスホッケーの試合が放送されていた。食事だけしたい人と、ゲームも見たい人とで区切りがあるらしい。メトロシティは、ただ物騒な街という印象があったが、どうやらそうでもないようだ。いつも、街の去り際にその良さを知ることになるのが、彼には心残りだった。また来ればいいだけなのだが…。
食事を終えて席を立ち、チェック担当のオートマタにIDをかざした。彼の端末は、右手の義手と一体型になっているもので、デリケートであるが便利だった。右手は昔、肘から下を事故で無くした。
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