下 06
薫の考察通り、目印にして道を進んでいると、今度はいきなり地響きのような咆哮と出会う。
「まさかこの先にいるのか!?」
「恐らく。見てあれ。あれが例の研究所。今の唸り声はあっちから」
薫が指差した方向には、歪な建物が顔を出していた。
「じゃあ本当に奴らは…」
「生け捕り…」
「俄に信じられないな」
徐々に研究所と距離を詰めていく。
謎の道を通り抜けていくうちに、動物達の気配が色濃くなってくる。やはり、この研究所に、『いる』のだ。
しかし、どうやって。隼人は次々に疑問が浮かばせる。どんなトリックを使えばあの動物達を捕えられるというのか。まさかあのジープで?動物達はそんなにヤワでは無いはずだ。
「一体、この島で何が起きてるんだろ」
薫が漏らすように、前に訪れてからさほど立たないうちに島は明らかに様変わりしてしまっている。怪訝さを滲ませながら、隼人達は研究所の前方に辿り着く。
「妙に警備が手薄。科学者の時とは全然違う。孤島だから、油断してるのかな」
映画などならこの手の機密研究所などの悪のアジトは、恰幅のいい、そう稲葉のような男が門前で目を光らせている所だ。しかし、見張りはいない。孤島故の判断なのか、手負いなのかは分からない。
「でも好都合じゃないか。今さっきジープが出たところだし、ここから何か出てくる事は考えにくい。今のうちに正面玄関から潜り込んでしまおう」
「なんだかスパイ映画みたい」
薫はクスッと笑う。
「そんな良いもんじゃないって」
これはボランティアのようなものだ。命懸け、の。
研究所内は寂れた雰囲気があった。一度ヘリコプターが落ちて半壊したものを再利用しているわけだが、その補修もイマイチだ。というよりも、必要最低限に直しているような感じだ。
「ここに長居する気はないんだろうか、奴らは」
「動物達を捕えるだけ捕えて、本土へ持ち込むつもりかもしれないわね」
「そんなことしたら…」
本土は言うまでもなく大パニックに陥る。火の鳥が家を燃やし、巨大な虎が木っ端微塵に。考えるだけでも恐ろしい。
「隼人。足音がする!見つかる。この階段降りよう!」
薫の咄嗟の判断で、偶然通路の端にあった階段を慌てて駆け降りた。しばらくすると、上階の足音は消え去っていった。
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