第262話 村に行こう

 だから俺はケーテにいう。

「歩いて行こう。精々三時間程度だ。ケーテもついてくるなら人型になってくれ」

「わかったのである。」


 行きの三時間とゴブリン退治でアリオとジニーもケーテに慣れるだろう。

 そうなれば、帰りはケーテの背に乗せて貰えばいい。

 それだけで充分時間の短縮になるだろう。もしかしたら日没までに戻れるかも知れない。


「じゃあ、人の姿になってくるのだ」

 そういって、ケーテは近くの森の中へと走って行った。


 ケーテは急に裸になることはなくなった。人の風習に慣れてくれたらしい。

 すぐに人の姿になったケーテが戻ってきて、俺たちは村へと歩き始める。


 ケーテはジニーに楽しそうに話しかける。

「ジニーはゴブリン退治が得意なのであるか?」

「得意ってわけではないけど……」

「我は得意なのだ。人族とゴブリンの見分け方もばっちりであるからなー」

「うん? そうだね」

 ジニーは、ケーテの言葉の意味がわかっていなさそうだ。


「ケーテ、一匹二匹のゴブリンを倒すだけなら簡単だ。だが、それだけではダメなんだ」

「そうなのか? 倒せばいいと思っていたのである」

「ゴブリンは群れを作るからな。群れ全体を退治する必要がある」


 被害は一つの群れによるものか、複数の群れによるものか。はぐれゴブリンによるものか。

 また、どこの巣から来たゴブリンの群れなのか。それらをしっかり調べる必要がある。

 そして、巣ごと退治しなければならない。


 そんなことを伝えると、ケーテはうんうんと頷いた。

「勉強になるのである」

「ケーテは強いが冒険者としては初心者なのだし、俺の言うことをしっかり聞かないとダメだからな」

「了解したのである」


 村までの道のりは三時間とたっぷりある。

 その時間を利用して、俺は歩きながらゴブリン退治についてケーテに語る。


「ほうほう! そういうものなのだな!」

「勉強になります」

「ああ。ためになるな」

 ケーテだけでなく、ジニーとアリオも真面目に聞いてくれた。



 途中で休憩を挟みながら、歩いて三時間後、村が見えてきた。

「あの村ですね」

 元狩人にして弓スカウトのジニーは目がいいので、すぐに村に気づいた。


「小さな村ですね」

「ああ、何か物が不足しても村で補充することは期待できなさそうだな」

 アリオはそんなことを言う。


 冒険者の常識として、基本的には補充なしでやれるように準備してある。

 だが、不測の事態というのはよくある。

 そういうときに現地で補充できると、すごく助かるのだ。


「アリオ、ジニー。交渉は基本そっちに任せる」

「はい! 任せてください」

「俺たちも、あれから何度か冒険しているからな。交渉も慣れたもんだよ」

「それは頼もしい」

 そんなことを話しているうちに村の入り口のすぐ近くまで来る。


「……がう」

 突然、ガルヴが俺の袖を咥えた。


「どうした?」

「ガウウゥーー!」

 ガルヴは村の中を睨みながら、低い声で唸り始めた。

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