第188話
地上に出ると、大勢の狼の獣人族が集まっていた。
総勢百名近かった。
ゴランが狼の獣人たちと後始末について相談している。
狼の獣人族たちは周囲の敵を掃討したあと駆けつけてくれたとのことだ。
俺は結界を
そして、その中をエリックたちと一緒に掃討した。
だが、奇襲という特性上、その周囲は手つかずである。
エリックが言う。
「相手の本拠地だからな。当然周囲にも昏き者どもが多くいる。その掃討を頼んでいたんだ」
「どの程度の戦力があったんだ?」
「
「それは……結構な戦力だな」
特に昏竜がやばい。魔装機械も大概だ。
ヴァンパイアも七十匹いれば、大変なことだ。
その時、ダントン・ウルコットが駆け寄ってくるのが目に入った。
ダントンはシアとニアの父親だ。
「ダントン。怪我は大丈夫なのか?」
「ああ、もう大丈夫だ」
「本当はまだ、完治してないでありますよ。今日も無理して……」
「娘が頑張っているのに、父親が体を張らないわけにはいかないだろう」
ダントンは相変わらず無理をしているらしい。
少し不安になる。
「それにしても、狼の獣人族は強いな」
「そう言ってくれると嬉しいが……。昏竜がこっちに来るのを防げなかったからな」
周囲の敵が本拠地の防衛に向かうのを防ぐことも狼の獣人族の役割だった。
「昏竜は飛ぶから仕方がない。魔装機械とヴァンパイアどもを防いでくれただけで大助かりだ」
「そうだ。とても助かった」
「陛下にそういって頂けて、光栄の至りです」
そしてダントンは娘のシアに言う。
「ちゃんとロックさんたちのお役に立ったか?」
「そのつもりであります」
「シアさんには相変わらず活躍してもらってる」
「ロックにそう言ってもらえると嬉しい。ところで……ニアはどこに?」
「ニアさんは、水竜の王太女殿下の護衛だ」
「なんと……。ニアにそれが務まるのだろうか」
「戦いの途中、水竜の集落に戻ったときに見たが、立派に役割を果たしていた」
「なんと……」
「あれほど強く成長しているとは……正直思わなかった」
そういうと、ダントンは嬉しそうに笑っていた。
そんなことを話していると、狼の獣人族の族長の中でも年長の者がやってくる。
俺のすぐ近くにいたエリックに頭を下げる。
「陛下。敵の本拠地を隕石で結界ごと破壊するとは……。度肝を抜かれました」
「そうであろう」
エリックは少し嬉しそうだ。
「魔導士の方が何とかされるとは思っていたのですが、てっきり結界をこじ開けるものと」
年長の族長は周囲をちらりと見まわした。そしてドルゴをみる。
「あの魔法はドルゴ陛下が発動されたものなのですか?」
ドルゴは狼の獣人族と面識があるようだ。
ともに周辺を掃討したので自己紹介を済ませたのだろう。
「私ではないんです」
「そうでしたか。あれほどの大魔法、竜族の、それも王族の方でもなければと思ったのですが……」
「たとえ竜の王族でも、あれほどの大魔法は中々……」
そう言って、ドルゴは笑う。
年長の族長は俺の方を見た。
「もしや、あなた様があの隕石召喚を?」
ドルゴが否定したら、消去法で俺ということになる。
狼の獣人族以外で、この場にいるなのはエリック、ゴラン、セルリス、ドルゴだ。
ガルヴもいるが、隕石召喚を使いそうもない。
エリックもゴランも魔導士でないことは知られている。
セルリスも最近狼の獣人族と同行していた。戦士であることは知っているはずだ。
それゆえ、ドルゴでないならば、隕石召喚の使い手は俺ということになる。
シアとダントンは心配そうに、こっちを見ていた。
俺の正体がばれないか心配なのだろう。
「はい、その通りです。衝撃波で狼の獣人族の方々にご迷惑をかけていなければよいのですが……」
「とんでもございません。隕石召喚のおかげで、我らの仕事もずっと楽になりました。被害は相当抑えられたでしょう」
「そういって頂けると……」
「ゆっくり地上から結界をこじ開けて侵入などとやっていれば、奇襲の優位性が喪われてしまいます。敵に態勢を整える暇を与えてしまいますし」
俺と年長の族長が話している間に、さらに族長たち十人が集まって来る。
そして、年長の族長は改めて頭を下げた。
「ありがとうございます。我らが命を懸けて収集した本拠地の情報を十二分に生かしていただけました」
「いえ、そもそも襲撃が成立したのは狼の獣人族の方々のおかげですから」
エリックがいう。
「まったくである。ロックの魔法も本拠地の場所を知らなければ活かしようがない」
族長の中でも若い一人が恐る恐るといった感じで言う。
「人違いであれば、申し訳ありませぬ。大賢者にして、我々の救世主、偉大なる最高魔導士ラックさまでしょうか?」
その発言で、狼の獣人族の族長たちはざわっとした。
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