第14話 アオイ先輩

 アオイ先輩と出逢ってからも、毎日屋上に来ていた。来るときは決まって放課後で、心をめちゃくちゃにされてからここに来るのだ。私は今日もフェンスの前で悩んでいた。そこへ先輩がやってくる。


「お、もう来ていたんだ」

「・・・はい。今日死ぬのはちょっと違うような気がしますが」

「そっか。じゃあさ、コレを植えるの手伝ってよ」


私は先輩に連れられて、私が飛び降りる予定の花壇へとベロニカを植えに行く。その間に、数名の同級生とすれ違ってしまう。



「ちょっと見て、が誰かと一緒に歩いてるよ・・・」

「うへぇ、物好きな人もいるんだなぁ・・・」


私のせいで先輩まで悪く言われてしまう。そう思った私は先輩と少し距離を取った。先輩はそんな私の方に視線をやったが、特に何も言わずに歩き続けた。


 目的地である花壇にたどり着いた私は、先に到着していた先輩に謝罪をする。


「あの、ごめんなさい。急に距離を取るような、失礼な真似をしてしまって・・・」

「こちらに迷惑をかけないようにって気を遣ってくれたんだよね? 鬱陶しい外野に一喝いれてやろうとも思ったけど、君の立場をさらに危うくしてしまいそうだったから何も言わなかったよ」

「・・・すいません」


俯きながらまた謝罪をすると、先輩は私の肩を叩きある約束をしてくれる。


「君がこの世を去った後に、君を傷つけた奴ら全員粛清してやるさ!お望みなら今すぐにでもやるけどね」

「・・・いえ、私が死んでからにしてください。というか、そんなヒョロヒョロな身体で粛清なんてできるんですか? それに・・・」

「失礼な! やってやれないことは無いさ!」


私はまた笑っていた。先輩も笑っていた。

今日は死にたくないと思った。


 先輩に教えてもらいながら、私はベロニカを花壇に植える。爪の間に土が入り込み、スカートの裾も汚れた。しかしそれに気づいたのは、帰宅してお母さんに指摘されてからだった。


「リン! どうしたのその汚れ! 誰かにイジメられたの?!」


イジメられているという点ではYesだった。でも、この汚れはそのイジメによるものではない。だから私はこう答えた。


「違うよ。今日は花を植えて来たの。明日は水やりをしなきゃいけないから、いつもより早く家を出るから!」


お母さんはホットしたようで、よかったと何度もつぶやいていた。


 花壇にベロニカを植えた翌日、私は急いで学校に向かった。もう少しでベロニカが咲く。青く綺麗な花を見ることができる。先輩と植えたアオイベロニカを見ることができる日が私は楽しみで仕方がなかった。そして、学校についた私は花壇に向かった。そこにはすでに先客がいた。


「あれ、アオイ先輩、おはようございます。今日の水やりは私がやるって言ったじゃないですか」


先輩は私の呼びかけに、ビクッと肩を震わせた。そしてゆっくりと振り向き、悲しそうな表情をする。


「ごめんね・・・」


私はまさかと思い、花壇の方に目をやる。


花壇の花は全て掘り返され、生ゴミが散乱していた。


こんなことをする輩は、しかいない。


何より先輩にこんな悲しそうな顔をさせたことが許せなかった。


「先輩、私決めました」

「え?」


「・・・『粛清』は私自ら行うことにします」

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