第11話 始まり
高校生活が始まってから、すでに3ヶ月が経過していた。クラス内でもなんとなく仲の良いグループができ始めており、その例に漏れず私も数人の決まった友人とひっそりと過ごしていた。私は目立たずに高校生活をやり過ごしたいのに、彼はそれを許してくれなかった。
「赤木! おはよ!」
登校して教室に入るたびに藤沼は大声で挨拶をしてきた。恥ずかしいからやめてほしいのに・・・。私は適当に返事をして、小走りで自分の席につく。
「リンちゃん、おはよ」
「おはよう。サヤちゃん」
彼女は私の左隣の席に座っている友人の平川サヤ。私の数少ない心を許した友人の一人だ。彼女も私と同じで、静かな高校生活を願っている平和主義者であった。
「藤沼くん、リンちゃんのこと好きなのかな?」
「違うと思うよ。このクラスで唯一中学が同じだったから、友好的に接してきてるだけだと思う」
「そうかなぁー」
彼が私を好きなわけが無い。いつもクラスの中心にいて、男女両方の超人気人物だ。そんな絵に描いたような主人公タイプの彼が、ただの女子高生Aの私を好きになる理由がない。
その時は、そう思っていた。
ある日の体育の授業。男子は外でサッカー、女子は体育館でバドミントンをしていた。藤沼に気のある女子生徒は校庭に通じている通用口付近に固まっていた。そこから藤沼の様子を伺っており、彼が何かをする度にキャーキャーと騒いでいた。いつもは騒いで終わりだった。しかし今日は異なっていた。そのグループの一人が藤沼に告白をしようとしていたのだ。
「ミキ、いっちゃいなよ!」
「そうだよ! チャンスは今しかないよ!」
「えぇ、大丈夫かなぁ・・・?」
いつも固まっている三人の中の一人が藤沼に告白をするようだ。そして、二人の説得により、彼女は校庭に走り出した。彼女は沢田ミキ。容姿端麗で多くの男子から人気が高く、藤沼とはお似合いの存在であった。
「藤沼君!」
「ん? あぁ、沢田か。どうした?あ、今汗臭いからあんまり近づかないでな」
「あの・・・。私、あなたが好きです!付き合ってください!」
周りにいた男子も「おぉ」と声を出す。しかし、彼と彼女は放っておいてもいつかくっつくだろうと誰もが思っていた。そのため、この光景に違和感は感じなかった。遂に美男美女カップルが出来上がると誰もが思っていたが、彼の答えは意外なものであった。
「ありがとう! めちゃめちゃ嬉しいよ。でも、ごめん。他に好きな人がいるんだ」
「・・・え?」
空気が凍りついた。彼女も当然「Yes」という返事が来ると思っていたのであろう。彼女の顔は引きつっていた。
「俺、赤木が好きなんだ。本人には内緒にしてくれな。だから、ごめん」
「赤木・・・リン・・・?」
「そ! じゃあ、俺いくよ。本当にありがとうな」
私はそれを聞いてしまっていた。面白半分でこの光景を覗いていたからだ。学年一の爽やかイケメンが、私を選んだ。
もしこの物語が漫画や小説であれば、きっとそこから華の高校生活が始まるのであろう。しかし現実は甘くなかった。
その翌日から、沢田ミキ達からの攻撃が始まったのだ。
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