#029 ヴァイオレット? ヴァイオレンスの間違いじゃないの?

「…………」

 正直、奴隷の時よりもある意味では酷い仕打ちを受けている気がする。さすがに奴隷であっても与えられる罰は鞭でしこたま叩かれるとか、あるいは単純な殴る蹴るで捌け口にされるとか、せいぜいがそのくらいだった。

 それが今やどうだろう。

 多分、全身の骨が何箇所か折れていてそのまま手当てもしてくれずに放置。どころか、右手に手枷をつけられていてその鎖が壁の高いところへ固定されてしまっている。常に片腕上げっぱなしだ。体はあのサーベルの精霊器のせいか、ずっしりとすごく重い。で、極めつけにいぶされている。

 総括すると、とりあえず全身が痛い。そして煙が目に染みる。

 そして魔術も使えそうにない。

 殺されることはないだろうと高を括ったのが失敗だった。確かに殺すぞ的な脅しは受けたけど、蓋を開けてみれば完膚なきまでに敗北と拘束が待っていた。多分あの3人の中でもリーダー格だったのだろうとは思うけど、それにしたって圧倒的だった。というか精霊器を秘法で自在に扱えるとか言っていた。それってとんでもないチートではなかろうか。

 だけど精霊器を収集しようという行動の理由は分かった。

 問題は精霊器を使って何をしようとしているのかだ。世界征服とか言われたらどうしよう。いや、別に僕がどうこうする必要というのはないとは思うんだけれども。

 ともあれ、僕ってけっこういけるんじゃね? ――とか思ってたのが我ながら恥ずかしい。僕なんて結局、非力な子どもでしかなかったのだ。上には上がいる。僕なんてちょっとかじった程度でしかなかったのだ。

 そんなわけでこの恥ずかしさや苦痛はきっと教訓なのだと思う。

 反省、終了。


 さてと。

 どうやったら脱出できるんだろう。

 魔術は使えないと言われて、実際、魔力を出そうとすると何だかパンクしそうな熱を感じてしまう。何というか、風船に限界まで空気を入れていくような恐怖感が込み上げてくる感じだ。

 つまりこれは魔術を封じているというか、魔力を外へ出せなくなっているという感覚になる。蛇口に詰めものでもしてバルブをひねったら、水道管が水でいっぱいになってぼーんと水圧で吹き飛ばされちゃうみたいな。問題は僕の体内で魔力がいっぱいいっぱいになって、行き場を求めるように爆散だということになった時にどういうことが起きてしまうのか。見るも無残な高所からの落下死体めいた潰れたトマトと成り果てるのか、あるいはすぽんと栓だけ吹っ飛ばして勢いよく出ていくだけで済むのか。

 栓がぽーんと飛んで詰まって、ううってなっちゃったりしないだろうか。

 いずれにせよ、やるしかない。今度は真正面から戦うなんてことはせず、各個撃破のつもりで、そう、あのヴァイオレットという人をふん縛って色々と聞き出そう。二度も襲ってきた上に足を麻酔なしで千切り切られたのだから捕まえて尋問したっておあいこだ。

 温厚な僕だって腹にたまりかねることはあるのだ。

「よーし」

「何すんだよ?」

 つるつるタイル床で焚火をして魚を焼いているヴァイオレットにジト目で睨まれた。

「復讐さ」

「ほおーん? できんのか? てめえの状況が分かってねえのかよ!」

「熱いっ、熱っ、熱っつ!?」

 燃えさしを近づけられるけど逃げ場などない。僕が熱がる様子をサディズム溢れる笑みを浮かべて彼女は楽しんでいる。

「生かされてる身ってえのを弁えろ」

「生きているから反抗するんだ」

「ハッ、んじゃあ生きてるからこその苦痛をくれてやるよ」

 燃えさしを捨てるとヴァイオレットがナイフを抜いた。これ以上やられたら気力も失くしてしまいそう。

「ろくに動けない相手をナイフでちゃっちゃと切りつけるの? 性格歪んでるよ」

「歪んでちゃ悪いかよ?」

「……悪いよ。ろくな大人にならない」

「生憎ろくな大人なんてもんに興味はねえんだよ」

 鋭利なナイフを首筋へ突きつけられた。寝かせて当てられていた刃をゆっくり立てられ、ぷつと皮膚が切れる。痒みの強い痛みがする。

「悲観論者は好きじゃないな」

「はあ?」

「どうせ、とか言ってしまう人は諦めてしまっているからだ。その便利な言葉で物事を諦めていったら最後には何も残らない。現実的に見て絶望的だからって諦めておいて何も良くなるはずがないじゃないか。僕は手足がもがれようが抗ってやる」

「だったら確かめてみるか?」

「嫌だ。わざわざ痛い目には遭いたくないもん」

「てめえが望もうが望むまいが、変わりゃしねえんだよ」

 あんまり僕が怯えたりしないのがヴァイオレットには面白くないのかも知れない。さっきから脅すばかりで問答無用に痛めつけようとはしてこない。なるほど、そっち方面の嗜虐性もあるのか。

 だったらやりようはある。

 この間に、ぽんっとやってしまおう。

 どうせこの問答が終われば多かれ少なかれ傷つけられるのは分かっているのだ。

「自分の力で変わらないことだってあるよ。当然だ。

 だけど、打ちのめされて終わるか、落ちぶれて世の儚さを叫ぶか、抵抗して幸せを目指すかは自分次第だ。僕は絶対に俯いてなんかやらない」

 魔力を出す。何だかすごく、やっぱり暑さを感じてしまう。ぐんぐんと魔力を出す。やっぱり普段は手とかから出せるのに栓がされているような感じで出ていかない。出せば出すだけ、体内で熱いものが波みたいになって皮膚の少し内側で跳ね返って、それがさらに溢れ出てるものとぶつかってみたいなせめぎ合いと膨張を感じる。

「だったら首刈り取って吊るしてやるか?」

「趣味が悪いし、時間切れかな」

「はあ? つーか、てめえ、何汗垂らして――」

「ふんぬうううっ!」

 もしも潰れたトマトみたいになったのなら、せめて僕の血と臓物でヴァイオレットを汚して不愉快にさせてやる。他に手はないのだからこれしかないのだ。魔力はまだだ出せる。でも出ていかない。最後のひと踏ん張りでさらに魔力を引き出して、頭がいきなりカァッと熱くなった直後に――抜けた。

「は、ああっ!? 魔術はクリフォードが封じたんじゃ――」

「有言実行あるのみ! ――パンツァー・フォー!」

 至近距離で、これまで行き場がなかったアホほどの量の魔力でヴァイオレットを狙い魔術を放つ。突破力と破壊力に長けたその攻撃で瞬時にヴァイオレットの姿は僕の視界からは消えた。

「ふうう――ってしまった、これじゃ、情報を聞き出せない!?」

 こうなったら、もう、逃げるべきだろうか。

 ギルの居場所を知りたいけど、ここにはいないとか言うし、それならばもう逃げるしかない。せめてギルの精霊器は取り戻してあげたい。

「……気配がだだ漏れって、どういうことだろう……」

 いわゆる殺気的なサムシング?

 そんな物騒なものを僕が発することができようか。

 それとももっと別のもの――例えば僕が発するものと言ったら、臭い?

「すんすん……」

 ちょっと臭いかも。いやでも匂いだったらヴァイオレットやフェロメナさんに気づかれてもおかしくはなかった。

 別のもの。僕ならでは——と、したら、魔力とか、かな。しかし、だだ漏れとは。

「…………」

 意識したことはなかったけれど、確かに微量に僕の魔力が外に垂れ流されている感じはある。ということは、この垂れ流されてしまっている魔力を気取られたとか。止められるんだろうか。……できた、気がする。

「よし。……また<ルシオラ>探しに行かないとかあ。……困ったなあ。<ルシオラ>ちゃーん、来てくださーい……」


 ▼


「ぶわっは……! くっそ、あのチビぃっ!? 一体どうやりやがったんだ!」

 直撃を避けたのに吹っ飛ばされた。

 どんだけぶっ飛ばされたのか、古城が見えねえとこまで来ちまった。

「痛っつ――」

 やっべ、これ、腕折れたか。やたら腫れやがってる。

「チッ……チッ、チッ、チッ!」

 ああああああクソ、腹が立つ。

 あのチビ、チビめ、チビが。

「ぶっ殺す。<レヴィス・テグラ>!」

 <レヴィス・テグラ>を出して飛び乗る。即座に<レヴィス・テグラ>は浮き上がり、風へ乗って宙を駆け始める。クリフォードにもらった<黒威>とかいう精霊器を試すチャンスだ。

「待ってやがれ、クソチビぃっ!」

 古城に戻れば新しく空いた穴の向こうからまだ噴煙が上がっていた。そこから<レヴィス・テグラ>に乗ったまま入る。どうせまたてめえの精霊器を探しに行ったはず。となれば、地下。いっぺん、あのチビは歩いてるから場所もすぐわかるか。だったらまっすぐ向かえばいずれかち合う。

「どこだ、チビィッ!」

 駆ける。翔ける。

 地下への階段から――チビが間抜け面で出てきた。

「<黒威>!」

「嘘ぉっ!?」

 精霊器を構えてぶっ放す。

「うおおっ!」

 たった一発の反動で<レヴィス・テグラ>から剥がされる。そのまま<レヴィス・テグラ>は軌道が逸れて壁へぶつかっていく。土煙のせいでチビがどうなったかは見えないが、想像以上の反動のせいで狙いは外れたはず。すぐに出てくる。姿の見えた瞬間を逃さないように今度こそ<黒威>を両手で構える。

「ウォーター大サービス!」

 腹立たしい、おふざけをしているような声が聞こえる。粉塵の向こうから津波のような大水が流れ出てくる。

「チッ!」

 壁を蹴ってナイフを握り、天井へナイフを突き刺して体を固定する。

「何その動き! キモい!?」

「てめえのチビさ加減の方がキモいんだよォッ!」

 今度こそ<黒轟>をぶっ放す。

「ラッシュアップ!」

 放たれた黒雷はチビの手前の床から突き上げられるように迫り出した無数の土棘で遮られる。尋常でない量の土棘だが黒雷は貪るように破壊していく。破壊された傍からまた生やされていく。

「もおう一丁、ラッシュアップ!」

 こいつは確かに異常と言える。精霊器もなしに次から次へと、精霊器と大差ない現象を繰り出す。これが魔術――それもクリフォード曰く、底知れぬ莫大な魔力にものを言わせたゴリ押し魔術。

「チッ」

 体を固定していた天井からも土棘が無尽蔵に突き出てくる。

 床と天井との間――土棘の先端同士の間に空間がある。火力はあっても細かい制御までは気が回ってないような魔術だからこそのゴリ押し。だったら、隙はデカい。

「舐めんな、クソチビがっ!」

 <黒轟>のアホほどの反動を利用して、棘と棘の隙間を一気に突き進む。

「何それ、どういう思考回路!? えぐい、キモい、有り得なあーい!」

「るっせえ、死ね、チビカス!」

「――とか思わせられたら良かったのにね」

 おちょくられた。

 <黒轟>の銃口を前へ向け、棘と棘の隙間へ片手をついて勢いを止める。チビがさっと脇へどいたかと思ったらその背後にすでに魔術は用意されていた。流線形の巨大な塊が炎を纏って回転している。

「パンツァー・フォー!」

 <黒轟>を放つが、チビの魔術の軌道は逸れていた。上向きに角度をつけて発射されたそれが<黒轟>を受けながら天井をぶち破る。振ってきた瓦礫に目の前が埋め尽くされる。

「ウォーター大出血サービスぅっ!」

 直後に先ほどとは比べ物にならない大水に呑まれた。

 溺れる――息が続かない。瓦礫までもが水に流されぶつかってくる。

「ぶはっ、げほっ――」

 通路の奥の壁まで押し流されて水面から顔を出す。

「僕の勝ちだ。ギルの居場所を教えて」

 眼前に黒い刃を突きつけられる。水で押し流された瓦礫の上にチビが立ち見下ろしている。手足は瓦礫に埋もれ動かせない。

「クソチビィ――」

「チビチビ言うけど、僕ときみと、大差ないからっ!!」

 逆ギレ?

「はっあああああっ!? てめえのがチビだろうが!」

「チビ、チビってそれ自分が気にしてるからほんのちょっとの差を鬼の首でも取ったかのように言ってるだけでしょ? 僕は別にチビでもいいですぅー、これから背が伸びるもん。でもほら、男と女じゃ成長の差があるから。つまり、チビチビ言ってるきみは今後、僕に背で追い抜かれる。だから今の内に喚いておけば?」

「ぶっ殺す、殺してやるっ! くっ、クソっ!」

 抜け出せない。冷える――冷える? 冷たい?

 瓦礫を押し流した水が凍結して固められている。力ずくでこっちが抜け出そうとするのを読んで凍結させたことで封じた? ちょこざいなことには頭の回る――。

「ギルはどこ?」

「知らねえよ!」

「知ってる、知らないの問答を続けてもいいけど、そのままずっと氷に半身を固められているままだと凍傷になるよ。最悪は組織が壊死する。患部を除去――つまり切断するしかなくなってしまうけれどどうしたい? 切断するはめになったら、手伝ってあげてもいいけどさ」

 このクソチビ――意趣返しのつもりか。

 良い子のお子様演じておいて、その目は何だってんだ。

 遊び半分に虫けらを殺してきゃっきゃするガキの目じゃない。殺しを楽しむ阿呆の目でもない。無感情、無感動に、作業として人を殺せる目だ。

「っ……おい、てめえもどうせ、ろくな大人になりゃしないぜ」

「僕は立派な大人になるつもりだよ」


 ▼


「<カエレスティス・ポルタ>」

 移動用の精霊器があるだなんて便利すぎる。

 でも、ヴァイオレットがちゃんと僕の指示通りにラ・マルタへ繋げてくれたのかは入ってみないと分からない。

「……そら、行け。クリフォードが戻る前によ」

 不服そうにヴァイオレットが言う。

「一緒に来てもらうよ」

「はあ?」

「ここをくぐって、もしも雪山の頂上だったりしたら困るから。それに、その精霊器も没収させてもらう」

「てめえ――」

「ほら、行くよ」

「待て、お前だけで行け!」

 ヴァイオレットの手から精霊器をもぎ取って、ロープでぐるぐる巻きにしている彼女の手を引いて門をくぐる。

「はいはい、ギルの無事が確認できたら解放しま――」

 門をくぐって外へ抜けた瞬間、ものすごい熱を感じた。

 直射日光。即座に皮膚が焼けていくような感覚がするほどの熱烈な太陽光と、見渡す限り一面の砂――。砂漠の上には雲の一欠片もない青空と、ギラギラすぎる太陽。

「ちょっとっ!? どういうこと!?」

「チッ、バレたか」

 本気で門をあらぬところへ繋げていた……。

 この子、本当に侮れない。一緒に連れてきて良かった。

「ああもう、今度こそラ・マルタに繋げ――」

 精霊器を持たせようとしたら足元が滑った。尻餅をついて精霊器を落とす。

「うわっ、とと……セーフ」

 確保。これを失くしたら帰れなくなっちゃう。しかし、砂漠って熱い。というか、砂、熱い。

「熱っつ!」

「ぶわははっ! バーカ、チビ、間抜け!」

 ものすごい煽ってくる。性格悪いな、ほんとに。

「ふーんだ。間抜けなばっかりにこれ失くしちゃうかもよ? いいのー?」

「は? 本気で失くしたらてめえもこの砂漠に取り残されるんだぞ。間抜けなら有り得るけどやりゃしねえだろうが」

 むむ、まあ、やるつもりはないけれどそうもスカした態度を取られるとカチンとくる。僕、ヴァイオレット嫌い。

「まったくもう……。今度こそ、繋げ——痛った!?」

 精霊器を持っていた手に痛みが奔る。慌てて目を向けると蜥蜴とかげっぽいのが噛みついていた。モモンガ的な羽根がついている。飛ぶの、こいつ。砂の下から飛び出してきて、僕の手に噛みついた?

「砂漠の生き物かあ……。興味深い」

 尻尾を掴んで持ち上げてみる。甲殻と鱗とを備えている。全長は手の平サイズ。割とかわいい。小さな鱗と鱗の隙間に溝みたいなのがある。これで砂漠の少ない水分を吸い上げるんだろうか。でもこの口、牙はびっしりだ。噛まれた傷口ももう少し深かったら抉られていたかも。

「おい、何じろじろ蜥蜴なんか見てんだよ」

「あっ、尻尾切れた」

 本体が落下したかと思ったらそのまま砂の中へ潜ってしまう。

 これが蜥蜴の尻尾切り。痛いのかな。悪いことしちゃった。

「またね、蜥蜴く――ん?」

 蜥蜴が潜っていったところを見下ろしていたら、その周りの砂がぽこぽこと動き出す。何だろうと思ってしゃがんで見ていたら、何匹もの蜥蜴がひょこっと砂の中から顔を出す。

「……ちょっと可愛い」

 と、思ったのもつかの間、蜥蜴達が口を開けていきなり飛び出てきた。

「うあっ? 痛っ、痛い痛い、ごめんごめん、やめて!」

「何を蜥蜴に遊ばれてんだよ、クソチビ! さっさと帰るぞ、精霊器寄越せ!」

「帰るんじゃなくてラ・マルタに繋げ——おわっ、と!? え、えっ、あっ!?」

 精霊器を持っている手にばかり蜥蜴が噛みついてくる。そうか、右手は篭手をつけてるから狙ってこないのか。賢い——じゃなくて、精霊器!

 砂の上へ落ちたそれを拾おうとしたら、地面に落ちた蜥蜴がいきなり、地面の中へ引きずり込まれるように消えた。何かと思ったらいきなり今度は砂がごっそりと真下へ落ちる。精霊器ごと。

「ちょっ!?」

 砂に手を入れようとした瞬間、ガチンと鋭い歯が噛み合わされた。飲み込まれた。

「てめえ、何してやがる!?」

「い、今取り戻すから!」

 慌てて<ルシオラ>を抜いて砂の中へ突き刺す。

 でも魚の尻尾みたいのが砂の下から少し出て、かと思うとするりと潜っていってしまう。まさか、砂の中を泳いじゃう魚めいた魔物? 逃げられたらまずもう見つけられない。

「待ってえっ!?」

 <黒迅>を砂の中へ斜めに突き入れてそれで砂をかきあげる。でも、何も出てきやしない。砂ばかり。

「てめ――クソっ、次に会ったら必ず殺す! それかこの砂漠でくたばれ、クソチビ!」

 汚い声に振り返ったら、ヴァイオレットが古城から砂漠に出てきた門へ入って行くところが見えた。

「ちょ、待っ――へぶっ!」

 慌てて僕も門へ入ろうとしたけど砂に足を取られて顔から転ぶ。

「ヴァイオレット!」

 顔を上げたら門が——消えていった。

「…………」

 言葉が出ない。

 砂が熱い。日差しが熱い。

 それも込みでだらだらと汗が流れて止まらなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る