27.復興
城に着き、謁見の間へ通される。女王が待っており、俺達の顔を見るなり
「どうだった」
と急いて聞いてきた。
「全員捕縛しました。奴らは隊の者達我が国に連れ帰りました。きっちり情報を吐かせ、元を潰します」
女王はそれを聞くと表情に僅かに安堵の色を滲ませた。それからすぐに満足げに頷いて、
「良くやった」
とオンを労った。
「おい、約束の報酬をここに」
女王が云うと、側に控えていた甲冑姿の妖精がたっぷり膨らんだ布袋をオンに渡す。オンはそれを受け取ると恭しく頭を下げた。
「それでは私も国へ帰ります」
「うむ。達者で……もう会う事が無ければ良いが」
「全くですな」
そう云って笑う二人に、俺はああ終わったんだ、と心底ほっとした。
俺はオンを見送りに城の外に出た。
「ダイチ。元気で」
「隊長さんも、お元気で」
オンが杖を手に何やら呪文を唱えると、小さな落雷の様にばちっと音がして光り、眩しさに目を庇った。恐る恐る目を開けると、そこにはもう、オンの姿は無かった。少し寂しい様な、そんな気持ちが胸に残る。
女王の元へ戻ると、今回の功労を称えて褒美をくれると女王が云った。だが俺は、国王様を救いに行く時に貰った銀のナイフで充分過ぎるとそれを断った。女王は少し面白くなさそうな顔をしたが、その分ケット・シーの国の復興に回してくれと頼むと、彼女は笑って了承してくれた。
俺とエミリーはケット・シーの国へ戻った。
亡くなったケット・シー達は既に弔われていて、俺達は皆に涙ながらに迎えられた。
事の顛末を語ると彼らは安心した様で、思い出した様に俺に帰る様に云って来た。
「ニンゲンの世界で騒ぎになっちゃうよ」
「ダイチが行方不明って騒ぎになっちゃうよ」
オーエンとダヒが云う。
「私も同意見です。これ以上あなたに迷惑をかける訳にはいきません」
だが、俺は首を横に振った。
「国が建て直されるまではここに居るよ。いや、居させてくれ。俺の事は……まあ、何とかなるよ。知ってるか、人間の世界ではな、俺の国だけで年間失踪者数が八万人にも上るんだ。家族には心配させるけど……こんな中途半端な状態で帰るなんて出来ないよ」
「ですが……もう来られなくなる訳ではありませんし、一度戻られては……」
エミリーも心配そうに俺を見上げる。
「起きてる間気もそぞろじゃ生活に支障が出るよ。大丈夫、心配しなくて良い」
国には女王が派遣した復興部隊が既に来ていた。彼らとケット・シー達はテント暮らしをしている。俺もそこに加わった。
俺はケット・シーと彼らと協力して瓦礫を撤去し、新しい建物を造った。
妖精は大抵がケット・シーと同じサイズかより小さかったので、俺の大きさと力は大いに役立った。妖精の中には件のレプラコーンも居て、彼らはケット・シー達の為の服や靴を修繕したり作ったりしてくれた。自分達の居場所を秘匿した為に国が襲われ国王様が怪我をしたと聞いて、申し訳無く思っていると、自分達は悪くないのに謝ってくれた。
そして一年が過ぎ、ケット・シーの国は元通りとまではいかないものの、殆どの建物が建て直され、もう大丈夫だろうと云う所まで来た。
そう、俺が帰る時が来たのだ。
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