第11話 ううっ♡はらはらバレバレやばいやばい (꒪ཫ꒪; )

「あーあー、テステス。キこえテマスか?」

「はい、ヨク聞こえテマス」

「初めまシテ。広告代理店『クリエイスタイル』の房井ともうシマス」

「どうも、オレンジパイでス」

「今日も『オレンジパイ』のアバターなんでスね」

「スミません。ちょっと事情がありマシて」

「構いマセんよ。それで、先ダッテ新川クンからお話はウカがっていると思いマスが、弊社とのコラボレーションの件、イカがでしょう?」

「はい、ありがたくお受けいたシマス」

「そ、それはヨカッタ! どうぞよろシクお願いシマス」

「こちらコソ」

「ところで、オレンジパイさん」

「ナンですか?」

「ゲームのナカとお声が違いマスね」

「んあっ! アレ、実はボイスチェンジャーをツカッテ地声をカエテいるんですよ」

「そうダッタんですか。ん? どこかで聞き覚えがアル様なコエだな」

「そっ! そんなの気のセイじゃナイんですか?」

「そうデスかね? ナンだかボクの身近にいる人と似ていマス」

「・・・・・」


 ヤ、ヤバいっすー。

 みかんパイセン、ボイチェのスイッチをオンにスルの忘れてるっすー!!

 またパイセンがいつものドジぶり発揮してるっすー!!

 このままじゃコーキパイセンにみかんパイセン本人だって事がバレるっすーっ!

 テロップ、テロップ!


「んあ?」

「どうなさいまシタか?」

「いえ、え、えーと。あっ、なるほど! 実はこのコエもボイスチェンジャーをカケているんですよ」

「そうダッタんデスか。でも今ヘンな間ナかったデスか?」

「ナかったデス!」


 ほっ。

 モモちゃん機転のテロップのお陰でなんとかバレずに済んだわ。

 で、でも。

 これから私、どーなっちゃうのーっ!?



モモ語の解説だヨ♡

「ゴアウる」=デートする。

「レフトく」=置いていく。

「リして」=返して。

「ツショ」=二人だけ。

「サドン」=いきなり。

「バズった」=話題になった。

「キプキプ」=秘密。

「ハンシェクる」=手を組む。

「ブラ」=了解。

「カナ語」=いやらしい言葉。

「ファっ」=楽しみ。

「テリる」=怖い。

「テロップ」=自分のビデオチャット画面だけに出る管理者からの指示。




 オ オ オ オ オ


 ビュルルルルぅ~ 


 ぶるるっ

 寒っ


 ここは『氷の牢獄』。


 わたくし『プリンセス・フロレンス』は、お花畑で遊んでいる所に通りかかった『大魔王様』に見染められ、その場で求婚されまシタわ。けれど『大魔王様』は仮面をお召しになっていまシタし、おコエも低くてなんだかとても怖そうでしたから、ついついお断りしてシまいシタの。そしたら『大魔王様』はたいそうオイナリ、じゃなかった。お怒りになられまして、私はこのマイナス40度のお部屋に閉じ込められていますのよ。あれからもう何年タツのかしら? アレは、まだわたくしが15歳の頃だったから、少なくとも2年くらいかしらね。


 ああ、私が生まれ育った『ボタニカル宮殿』の生活が恋しいわ。このままここで暮らしていたら、身も心も凍りついてしまいそう・・・。


 ちゃぷっ

 ほわわん

 ふうぅ


 やっぱりこう言う時はお風呂ですわよね。この『氷の牢獄』にはとても大きなジャグジーが備え付けられていて、いつでも好きな時に入れマスの。入浴剤も世界各地の温泉からお取り寄せされていて選び放題。今日は『血の池地獄』で有名な別府温泉の素『マグマオンセン』にしましょうね。あ~、いい眺め。高台からファンタジー・ワールドが全部見渡せるから気分も最高ですわ。


 かたっ

 ぴとっ

 ぶるるっ

 寒っ


 とは言っても、やはりここは『氷の牢獄』。お部屋の温度はマイナス40度、やはりお風呂上がりにこのお部屋の寒さは厳しいですわ。まあ、東北地方で真冬の露天風呂に入られる方は、こう言う状況を楽しんでいらっしゃるのかも知れませんわね。でも、さすがに毎日はコタえますので、わたくしは『大魔王様』にお願いして、お部屋に最新型のエアコンを付けて頂きまシタの。そうすればこのお部屋はいつも快適な温度になりますわ。


 ついでに大型テレビやクイーンサイズのベッド、床暖房付きのフローリング、高速インターネット光回線とWi-Fi、最新型ノートパソコンやタブレット端末、スマートフォンもありますの。ですからお父様やお母様、お友達とは好きな時間にビデオチャットでおハナシ出来ますわ。お食事は毎日お付きの料理人が世界中から新鮮な素材を使った高級料理を作ってくれますし、フィットネス・マシンでエクササイズ、ジャズダンスやヨガのインストラクターもいらっしゃるので、このわたくしの完璧なボディラインを保てますの。ファッションやドレスだって特注出来ますし、週末には毎週パーティや舞踏会も開かれて、大勢の着飾った紳士的なモンスター達と時間を楽しめておりますわ。


 本当に『大魔王様』もチョロいお方ですわね。私が18歳になるまでに『大魔王様』を倒す勇者が現れなかったら、私が『大魔王様』のモノになって差し上げますとお約束しまシタのよ。まったく『大魔王様』もロリコンですのよ。『青少年保護育成条例』と言うのをご存知ないのかしら? とにもかくにもそう言う訳で、あの『大魔王様』を倒したプレイヤーにはこのわたくしが、『なんでも一つだけこのゲーム世界で願いを叶えられる呪文を唱えてアゲル決まりとなりましたのよ。


 かちゃかちゃ。

 ぴっ。


 メールアドレスとパスワードでログイン。


 それは現実と理想が交差する瞬間。


 大抵のヒトはチップに記憶させてるけど、


 私は別。


 自分でタイプする瞬間が楽しいの。


 だって、そうじゃない?


 それは自分にだけ与えられた特権だから。


 コレはわたくしの楽しみの一つ、『フロレンス魔戦記』でプレイヤー達がどんな活躍をしているかをモニタリングしマスの。さあ、今日のランキングの一位は誰かしら? まあ、やっぱりアノ御方々だわ。『ブルバレル』と言うパーティは人気ナンバーワンですモノね。あの『オレンジパイ』ちゃんも可愛いし、『ジョッシュ』クンなんかカッコいいんだかカッコ悪いんだか分からないギャップに惹かれますわ。でも最近、なんだか『ブルバレル』は調子良さすぎるみたいですのよね。これでは他のパーティ達のヤル気が失せてしまいそう。


 あ、イイ事を思いつきまシタわっ!!



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