第10話 イヤっ♡ソレだけはイケませぬ、イケませぬ (≧Д≦);

 そう言えばこないだ読んだマンガの中に、『レンタル彼女』ってのが出てキタんだけど、モモちゃんとまさしく同じ行動を取ってイタわ。まさか彼女も同じバイトをシテるんじゃナイかしら? まあ、これはプライベートなコトだから、会社の副業禁止の規則には違反シテるけど、見なかったコトにシテおきましょうね。


 そして翌週の月曜日。


 またケダルイ1日の始まりだわ。今日のシゴトは先週の案件の見積書の作成。私が計算苦手なのを知ってるクセに、房井クンはナンデこう言うシゴトをフって来るかなぁ?


「みかんパイセン?」

「んあっ、ってモモちゃん。どうしたの?」

「これからパイセンとツショで話がしたいんすけど、イイすかね?」

「ええ、イイわよ」


 モモちゃんが向かったのは会社の密室の喫煙室。今は就業時間だから誰もイないけど、2人だけってイッタイ話ってナンなのかしら?


「パイセン、サドンなんすけど、先週のミーティングでバズった『オレンジパイ』って、みかんパイセン本人すよね?」

「んあっ?」

「しかも会社にナイショでチャットレディのバイトしてるっす」

「な、なんの話かしら?」

「今さら隠しても遅いんスよ。実はモモの耳って他のヒトよりかなりイイんす。部屋同士の壁はコンクリすけど、隣のみかんパイセンの声が丸聞こえナンすよね」

「・・・・・」

「証拠もちゃんとあるんすよ。土曜日にパイセンが酔っ払って全部話してたのをモモのスマホに録音済みなんす。ホラ、聞いて下さい」

「んっ! モモちゃん、アナタ一体私のナニするつもりなの?」

「モチロンこのコトはキプキプっす。だってパイセン、モモのナイショのレンタル彼女のバイトの事も知ってるっすよね?」

「何を言ってるのかゼンゼン分からないわ」

「この期に及んでまだシラ切るつもりっすか? モモはちゃぁんと気づいてたんすよ。先週の土曜日にパイセンがモモの事をずっとツケてたって」

「なっ?」

「だってパイセンのパンプスで歩く特有の音がずっと背後で聞こえてたっすから」

「そ、そうだったんだ。でもヒミツにしてくれるってホント?」

「まあ、ココはお互いキプキプを共有するモノ同士、ハンシェクるのが最善のチョイスじゃナイかとモモは思うんす」

「手を組む?」

「お互いのキプキプのバイトのコトは置いといて、コーキパイセンは『オレンジパイ』と連絡取れってイッテたっすよね?」

「ま、まあそうだけど」

「だけどみかんパイセンは身バレしたくないんじゃないスか?」

「よくシってるわね」

「そこでこのモモが『オレンジパイ』専属の連絡係になるんす。そして顔出しN Gってコトにしてボイスチェンジャーをカケれば、憧れのコーキパイセンにバレずに済むって寸法す」

「く、悔しいけどモモちゃんの言う通りだわ」

「これで取引成立っすね。まあモモの方がパイセンより多くパイセンの秘密をシってる訳っすけど」

「ぐぐぐ」

「これは一つカシにしておくっす」

「わ、わかったわ」


 あー、なんだかトンでもナイ事にナっちゃった。でも考えてみればモモちゃんのプランは的確ね。後輩にカリを作ってしまったのはシャクだけど、ここはモモちゃんの言う通りにシテおくのが賢明みたい。



 カタカタカタ

 のびぃ〜


 ん〜っと、ちょっと休憩するか。

 先週のプレゼンは上手く行って良かったなぁ。

 里山さんと新川君もサポートしてくれたし。

 でも何だか彼女たちのリアクションが変だったんだよな。

 まさか、この僕が『フロレンス魔戦記』にハマってる事がバレてる訳じゃないだろうか?

 あの時に『オレンジパイ』をイチ推しにしたから、ヲタク認定されてなければ良いんだけれど。

 まさか万が一、ハーバード大学卒業の僕みたいな一流エリートがそんなゲームに夢中だと思われたら、恥ずかしくて死にそうだ。


 ピロピロリン♪


 お、新川君からのラインが来た。

 なになに?

 えっ!?

『オレンジパイ』の本人と連絡が取れたぁっ!?

 ヤバイぞ、ヤバイ。

 どんな人なんだろう?

 早く会いたいな。

 これを機にお近づきになって、色々と聞いてみよう。

 早速新川君に報告させるぞ!


「えっと、ゴホン。それで新川君、『オレンジパイ』の本人はどんな人なのかい?」

「とってもキュートでラブリーな人っすよ」

「そうなのか。では可及的速やかに直接ミーティングのセッティングをしてくれ」

「ソレがっすね。本人はスゴく恥ずかしがり屋さんで、顔出しNGでビデオチャットならOKってイッテルっす」

「ナンだとっ!?」

「ナンすか、コーキパイセン。そのアワてぶり?」

「ゴホンっ。いや、対面でミーティングがデキないと、コラボの話がウマく進まナイんじゃナイかと思ってね」

「それなら心配御無用。ナゼか本人ビデオチャット慣れシテるっすから」

「ソウなんだ」

「それより、コーキパイセン。さっき途中からヘンな所でセリフがカタカナにナってマスよ?」

「っ! き。キミにだけはイわれたくナイな」

「そりゃそうっすけど。コーキパイセン、普段あんまりそうイう喋り方しないっすよね?」 

「き、キのセイじゃないのカイ?」

「ホラ、またっす」

「ご、ゴホンっ! それで、いつビデオチャットはデキるんだ?」

「ハヤくて今日の17時からならオーケーっす」

「ヨシ! スグに手配シてくれタマえ」

「ブラっす!」


 クスクスクス。

 コーキパイセン、アセるとカナ語になるって可愛いトコあるっすねぇ。

 まさか、『オレンジパイ』がみかんパイセンってシったらどんな顔するかファっすけど・・・・。

 いつかバラしちゃいそうでテリるっす。


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