致死率の比較、対H1N1インフルエンザ

 H1N1のインフルエンザは新型コロナウィルス同様、軽症者が多くいたとされている病気です[30]。その為多くの把握されていない感染者が存在していたとされており、致死率に大いに影響しました。

 では致死率も似たようなものなのでしょうか。


 以前も紹介したH1N1の致死率を調査した論文を五十以上まとめたものを基に計算された三種類の致死率は下記の通りです[7]。


 A 検査でH1N1が確認された感染者の致死率:    

     0.1%から5%

 B H1N1らしき症状がでた患者の致死率:      

     0.005%から0.05%

 C 推測されているH1N1感染者全員の中での致死率: 

     0.001%から0.01%


 別の論文でも似たような致死率が報告されています。

 H1N1のパンデミックの初期段階で確認された感染者184,812人に対して死者1,272人と、致死率でいうと0.69%となります[30]。

 対象となるAの範囲内です。


 更に症状が出た感染者の致死率は約0.05%としており、全感染者の致死率は0.005%と推定されています[30]。

 いずれも上記のBとCとそれぞれ合致します。


 ですがH1N1も地域ごとに致死率の違いが見られたようで、日本においてのH1N1インフルエンザによる致死率は、全体の症状があった感染者の中では約0.001%とされています[30]。

 こちらはBで提示されている確率よりも低いようです。


 メキシコでも確認された感染者の致死率は0.3%から1.5%(Aの範囲内)とされていましたが、数理モデルなどを用いて解析したところ、症状が出たとされる全感染者の中では0.0004%から0.06%(Bと被っているものの、下も上もはみ出ている状態)ではないかとしています[31]。

 こちらの論文は解析方法に難があったともされていますが[30]、新型コロナウィルス同様に多くの把握できていない感染者がおり、それらを分母に含めれば致死率が下がるというのは単純な割り算で分かります。


 このようにH1N1を調査した論文でも少し数値のばらつきが見られますが、同じインフルエンザウィルスとあって、おおむね季節性インフルエンザと似て、0.1%の致死率が主流のようです。

 これらから判断してしまえば、前回と同じく新型コロナウィルスの僅差の勝利となります。


 唯一、Aの確認された感染者の致死率がH1N1では0.1%から5%と高めです。

 なのでこちらを新型コロナウィルスの確認されている感染者の致死率と比べていきましょう。


 WHOが二〇二〇年に提示した3%から4%というのは[16]、H1N1の0.1%から5%の範囲内に収まるものの、この3%から4%という範囲自体が「参考までに」という感じが滲み出ています。


 というのも、この章で既にこの数値を優に超える致死率が挙げられています。


 例えば、イタリアで二〇二〇年三月十二日に観測されている6.22%[25]。

 先ほどは省略されていましたが、三月二十三日にはイタリアの9.26%以外にもスペインの6.16%やイランで7.79%と記録されています[25]。


 解析されているのは最高でも二十五ヵ国ののようですが、そのうち三ヵ国が5%を超えているのは……多いのか? 少ないのか?


 分からないので取り敢えず、下限の0.1%を割っている国を探してみたところ、チェチアとイスラエルは千件以上感染者が確認されている中、死者はどちらも一名[25]。

 ですがそもそも感染者が出ていない国であれば、論文でも取り上げられないだろうし……

 この論文のみでは新型コロナウィルスの致死率がH1N1のものより高いのかどうか判断に迷います。


 取り敢えず言えることは、この論文では新型コロナウィルスの致死率が参考としているH1N1致死率の0.1%から5%の上限を超えたのが三つの国で、下限を下回ったのが二つと、かなりの接戦のように思えるということでしょうか。

 平均値をとろうかとも頭を過ったのですが、そもそもH1N1の平均も0.1%から5%のどこら辺に位置するのか分からない中、どうにも気が進まず……


 少し悩んだ末に確認された感染者数を使った致死率ということで、論文からいったん離れてJohns Hopkinsのウェブサイトの力を借りることにしました[26]。

 こちらは百七十ヵ国近くの検査で確認された感染者のデータから致死率を計算し、度々更新しているものです。今回は九月二十四日時点の致死率を見ていきたいと思います。


 これによりますと、5.0%以上の致死率を記録しているのは二十ヵ国であり、0.1%以下のものはシンガポールのみとなっています[26]。

 世界には確か二百弱の国があるのですから、二十ヵ国は単純計算では世界の10%となります。

 とはいえ人口の割合は全く無視した計算となっています。


 なのでまたもや人口の割合をまとめてあるウェブサイトのお力をお借りしました[32]。

 そして二十ヵ国の人口の割合を足していくと、中国の存在が大きく、世界人口の27.94%が新型コロナウィルスの感染が確認された患者での致死率5%以上という国に住んでいる、ということになりました。


 しつこいようですが、専門家ではない私が計算したものなので、信用度がいまいち、いや、いまに、というところです。


 なので無理やりですがまとめさせていただきますと、新型コロナウィルス対H1N1インフルエンザの致死率レースは、測定機器の精度不足により、判定不能とします。

 つまり、引き分けです。


 ただ、観客たちの素人目では新型コロナウィルスがやや優勢と映っており、レースの企画者の方はバッシングの嵐を浴びるという結果になった、というおまけ付きです。


 結果、論文以外のデータも活用すると新型コロナウィルスの致死率はH1N1と同等かやや高いようであるものの、根拠としてはあまり強くないということです。

 要研究であります。

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