致死率の比較、対季節のインフルエンザ

 まずは致死率の比較からお話ししましょう。


 以前も言いましたように、致死率とは感染した患者が死亡する確率であり、そのウィルスの危険度の指標の一つとなります。


 まずは一番レーンの季節のインフルエンザウィルスと比べてみましょう。


 季節のインフルエンザの致死率は、WHOによりますと0.1%以下と低いものとしています[16]。

 こちらは分母として感染者の総数を使っています。


 実際厚生労働省のウェブサイトでも日本で季節のインフルエンザにかかるのは、推定1000万人に対し死亡数は214人から1818人と年によって異なるものの[29]、確率としては0.002%から0.018%ほどになります。


 ですが季節性インフルエンザにはワクチンや薬もあるので、致死率は「人間の対抗策によって制御されたウィルスの危険度」という認識が、この場合は正しいでしょう。


 とまぁ前置きはこれくらいにしておいて、新型コロナウィルスの致死率を見ていきましょう。

 新型コロナウィルスの致死率は検査で確認された感染者の実際数を使って算出するのが多いですが[2]二〇二〇年九月現在までの論文で、季節性のインフルエンザと同じく感染者の総数の推定を用いたものを引っ張り出していきます。


 すると0.1%以下という致死率は、私が読んだ論文の中では二回ほどしか出てきません。


 一つは、抗体検査により人口の28%から39%が感染したのではないかと述べていた、イラン北部で行われた研究です[14]。

 新しい感染者数の見積もりでは致死率は0.08%から0.12%に該当するとしています[14]。


 うーん。

 確かに0.08%は0.1%以下ではありますが、範囲を考慮すると実質致死率0.1%と言っているようなものです。

 季節性のインフルエンザの数値より高めに感じます。


 二つ目は、アフリカ各国の致死率を計算した研究です。

 致死率1%以上の高い国もありましたが、二〇二〇年五月の時点では0.1%以下の国も二十五程見受けられます[27]。

 こちらの研究ではボツワナをはじめ0.004%とかなり低い致死率も記録されているので、地域によってはインフルエンザと同程度かそれ以下の致死率が見られるのかもしれません。


 まぁ、五月末から致死率が変わっている可能性も否定できないので、喜べるほどの事でもないようですが。


 何より他の論文では感染者総数を用いた致死率は二〇二〇年二月の中国で0.657%[4]、三月末のニューヨーク州の0.6%[17]や1.1%から1.45%[18]、そして五月末のアフリカでもナイジェリアの1.53%、南アフリカの1.28%、カメルーンの1.01%にモロッコの0.80%と、アフリカだけでも致死率0.1%以上の国も二十五ヵ国近くで見られています[27]。


 ということで断言はできませんが、このレースはどうやら僅差で新型コロナウィルスの勝利のようです。


 第二レースは新型コロナウィルス対H1N1インフルエンザとなります。

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