　早速致死率の話をしたいと思いますが、一つ大事な要素は「どこの」致死率ということです。

　ニュースなどからもうお気付きかと思いますが、新型コロナウィルスの致死率は地域によって大きく異なります。

　原因は医療体制や感染症対策、はたまた遺伝的なものなのか文化や社会的な違いが起因するのかと様々な仮説が飛び交っています。

　今回はそれらの仮説には触れずにおいておきます。沼なので。

　機会があればいつか「ジャパンミラクル」と呼ばれている事象について書いてみたいとは思いますが。

　二〇二〇年三月十二日と二十三日にて各国の検査で把握されている感染者数を使って計算したで致死率をまとめた論文でも、地域によって致死率が違う事が確認されています[25]。分母は最も限定的な検査で確認された感染者を使っている計算なので、やはり高い数値が見られました。

　その中ではイタリアでの致死率は解析されていたどの国よりもどちらの日付でも高く、十二日には6.22%、二十三日には9.26%となっていました[25]。

　それより少し低い数値が見られる中国では、この頃にはもう検査数が安定していたのか十二日は3.91%、二十三日は4.03%とあまり変わっていません[25]。

　ドイツはその時は特に低い致死率を誇っていました。三月十二日には0.13%、二十三日では0.38%とどちらでも1%未満です[25]。

　大規模な検査制度があるのか、感染者の流れを徹底して把握しているのか、はたまた三月ではまだ爆発的な感染拡大は起きていなくて制御できていたのか、ドイツのニュースに疎い私では判断しかねます。

　ですがJohns Hopkinsのウェブサイトによると二〇二〇年九月ではドイツの致死率は3.4%に上がっているようなので[26]、三月の後に感染の規模が広がったのではないかと推測します。

　因みに日本は三月二十三日の致死率のみが掲載されており、4.00%でした[25]。

　どれらの致死率も検査で確認されている感染者数を分母に使っているので、実際よりも重症化のリスクが膨れて見えている場所が多いでしょう。

　ですが数字のばらつきはかなり顕著です。

　このばらつきは先進国のみならず、アフリカの国々でも確認されているようです。

　プリプリントでアフリカで二〇二〇年五月末までに感染者が確認されている四十八ヵ国での新型コロナウィルスの致死率を推定したものがあります[27]。それによると、アフリカも地域によって致死率が大きく異なるとされています[27]。

　特に高い国ではナイジェリアの1.53%、南アフリカの1.28%、カメルーンの1.01%、モロッコの0.80%とされていますが、0.1%以下と低い国も二〇二〇年五月の時点では見られます[27]。

　こういった違いがなぜ起こるのかというのは、先程も言ったように話が長くなってしまうのでここでは触れずにおきます。

　ですが研究する価値という意味では、今後の対策や治療法に取り入れられないかということが注目される理由なのです。

　地域別に見られる致死率の違いの原因がとある国の有効な対策によるものであれば、参考にすればいいのです。

　過去に地域的な流行したウィルスに対する獲得免疫が新型コロナウィルスに効果があるのならば、そこから治療法が見えるかもしれません。

　このように地域別の致死率の違いというのは世界的にも注目度が高い現象なので、分かり易い地図[28]や更新される棒グラフ[26]などもあります。

　論文を読むのはハードルが高いけど、データを見るのが好きであれば、一度覗いてみてはどうでしょう？　

参考文献の一部　

国別の致死率（確認されている感染者数の中）を棒グラフと表にまとめたもの。

[26] Johns Hopkins University & Medicine, “Mortality Analyses,” 2020. [Online]. Available: https://coronavirus.jhu.edu/data/mortality. [Accessed: 23-Sep-2020].

地図をはじめ、国や地域別の新規感染者数を図解で表しています。

[28] World Health Organization, “WHO Coronavirus Disease (COVID-19) Dashboard,” 2020. [Online]. Available: https://covid19.who.int/. [Accessed: 23-Sep-2020].