数理モデルなどから分母を推定

 総感染者数を知るためのもう一つの方法が、数理モデルなどを用いたやり方です。この手法も厳密には先程の抗体検査の結果を解析するものと、全く別のデータから感染者数の合計を割り出すものがあります。


 まずは抗体検査と併用するタイプの数理モデルについて触れていきましょう。


 先ほども紹介したニューヨークでの大規模な抗体検査では、二〇二〇年三月末の時点でのニューヨーク州の新型コロナウィルスによる致死率は0.6%と算出されていました[17]。


 別の研究(現在はまだプリプリント)ではこちらのデータをある数理モデルに落とし込み、致死率はもっと高いのではないかとしています[18]。

 それによりますと、二〇二〇年三月一日から五月十六日までのニューヨーク市では二ヶ月という短い期間で、実に二万人以上が新型コロナウィルスによって亡くなり、致死率は1.1%から1.45%に昇るのではないかとしています[18]。


 この解析方法では更に年齢別の致死率を計算し、七十五歳以上の感染者ではリスクとして13.83%もあると考えています[18]。


 同じデータを扱いながらも、数理モデルというのは仮定などを立てたり、あらゆる関係性を数値化することでよりデータだけでは捉えきれない情報などを得ようとします。

 これらは違う仮定のもと計算されたり、特定の法則が盛り込まれていたりという具合で、数値が変わります。モデルによっても仮定が違うので、解析方法によって算出される致死率が変わるという事はざらです。


 ゴルフは道具だと豪語する母によると、クラブを変えれば飛距離が変わると言います。通ずるものがあるのでしょう。多分。


 そして勿論数理モデルを抗体検査とは異なるデータと掛け合わせたものもあります。


 例えば二〇二〇年二月二十八日まで日本にてPCR検査で確認されている新型コロナウィルス患者データと、中国の年齢別の重症化リスクを基に、把握しきれていない感染者、特に重症者以外の割合を計算してみた論文があります[19]。それによると無症状から中程度の症状の感染者の数は、報告されているものよりもおよそ二倍いるのではないかとしています[19]。


 つまり数理モデルを用いる一つの利点というのは、発想の飛躍により限られたデータからもある程度あたりをつけることができるということです。


 更に数理モデルによっては、ある程度時間と共に変化する感染者数を推定するなど、現状だけではなく、過去や未来の数値を知ることもできるものもあります。

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