新型コロナウィルスってどんなウィルス?

君の名は

 いつかはこの題名を使ってふざけたかった。

 夢が一つ叶いました。


 それはさておき、まずは新型コロナウィルスの基本について話すとしましょう。本音を述べるのであれば、その前にそもそもウィルスの定義について議論したいのですが、それだけでもかなり長い話になってしまうので、またの機会とします。


 新型コロナウィルスの正式名称はSevere acute respiratory syndrome coronavirus 2、略してSARS-CoV-2[1]。現在確認されている人間に感染する七種類のコロナウィルスの中でも最近発見されたものです[2], [3]。コロナウィルスは他に二〇〇二年から二〇〇三年に流行したSARSウィルスや二〇一二年のMERSが含まれており、全体の特徴としては肺炎を引き起こすものが多いということが挙げられます[3], [4]。

 実は人間に感染できるコロナウィルスというのはSARSやMERSが猛威を振るうまでは、軽い風邪のような病症を引き起こす程度のウィルスという認識でした。その認識が改められたのはSARSやMERSのウィルスが体内に入った場合、病気につながる確率が高かったことと、死に至る確率が以前の比ではなかった為でした[3]。加えて今回のSARS-CoV-2はそれらよりも強い感染力を持っています[4]。

 まさに鬼に金棒。そうして新型コロナウィルスは世界を巻き込んだPandemicパンデミックと化けたのです。

 

 余談ですが、三月十一日にWHOが新型コロナウィルスの感染をPandemicパンデミックと認定しましたが[5]、似ている言葉としてEpidemicエピデミックというものがあります。

 Epidemicエピデミックというのはとある病気が素早く、そして多くの患者を出してしまう状態の事です。対してPandemicパンデミックEpidemicエピデミックの一種であり規模が特に大きいものを指します。これらの境界線というのは、実は結構あやふやだったりします。

 なので新型コロナウィルスについては文句なしのPandemicパンデミックなのですが、二〇〇三年のSARSは正式にはEpidemicエピデミックとされているにも関わらず[6]、当時としてはかなり広域の感染を見せたため、二〇二〇年以前に書かれた論文などではPandemicパンデミックと書かれているものもあります[3]。

 しかしより強力な新型コロナウィルスの登場によって、桁違いの規模を鑑みてSARSは今後、Epidemicエピデミックと称されることは容易に想像できます。

 

 なんだか冥王星が惑星から準惑星に降格されたことを不意に思い出しました。

 ドンマイ、SARS。


 さて、話を戻しましょう。

 実はこのSARS-CoV-2というのは二月十一日に公表されたものであり、以前は2019 novel coronavirus(2019-nCoV)という名前が推薦されていました[1]。よって初期の研究論文は古い名称が使われているものもちらほらとあります。


 因みにテレビなどでよく目にするCOVID-19というのはSARS-CoV-2新型コロナウィルスを原因とした病気の名前です[1]。

 病気とウィルスに個別の呼称があることには色々と理由があるのですが、その中でも個人的に少し面白いものを挙げるのであれば、管轄が違うことです。ウィルスの名前はInternational Committee on Taxonomy of Viruses(ICTV)の担当であり、対して病気の名前はWorld Health Organization(WHO)の責任となります[1]。

 なので理論上は矛盾するような組み合わせができるということです。新型なんちゃらウィルスによって発症する旧式ほにゃらら肺炎。或いはウィルスは二〇一九年に発見されたということで2019と名前にあるのに対して、病気が爆発的に増えたのが二〇二〇年ということで病名は2020を使っているとか。

 実用性からの理由としてはとても単純な話でして、研究論文がウィルスの話をしているのか病気の話をしているのか一発で分かるというものです。非常にありがたいことです。


 まぁ、大抵の場合は「コロナ」の三文字で事足りてしまうので、余計な知識だと言われてしまえばそれまでですが。

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