集結

 翌日、コースケたちはもう一度管制室に呼ばれた。重たいドアを開けて中に入ると、管制室の後方中央にあるコンソールの前に島本とブロンド髪の女性が立っていた。コンソールの上には開いたラップトップPCが置かれていた。


 島本と女性が話をしている。

「以前のような人員を揃えるのは難しい。厳しい運用条件になるが」


「わかってます」


「来たか」

 足音に気づいた島本はコースケの方を向いた。島本に招かれるようにして、コースケたち3人は話の輪に加わる。


「こちらは管制官のケイト、フライトディレクターを担当してもらう」


 軍人を思わせるようなスラリとした体格と強い意志を感じさせる鋭い眼光を持った女性だった。彼女は表情を緩ませると、肩にかかるブロンドの髪を軽やかにかきあげた。

「ケイト・ルーカス、ケイトでいい」


 コンソール上のラップトップPCには、ビデオ通話のソフトが立ち上がっていた。


「彼はシステムエンジニアのニール、本業は大学教授だ」

 島本はラップトップの画面に映る男性を紹介した。太い眉毛とほんの少しぽっちゃりとした風貌が特徴的で、年齢は島本と同じくらいか、それより少し若い。


「話は聞いたよ、よろしく」

 ニールは画面越しに笑った。


 よろしくお願いします、とコースケたちは挨拶した。


 その時、ガヤガヤとした声が管制室の外から聞こえてきた。コースケが音の方を見ると、管制室の前方端に作られた組み立て施設の吹き抜けへと繋がる扉が開いている。コースケたちは、正面のガラス窓の向こうに設けられたキャットウォークに出て、組み立て施設を見下ろした。


 組み立て施設に入ってきたじっちゃん。その後ろに和気藹々と話をする灰色の作業服の集団が続く。それは数十人の元ISA職員たちだった。頼もしくも個性的なおじさんとおばさんたちで、平均年齢はやや高い。彼らはじっちゃんに組み立て施設を案内されているようだ。


「島ちゃん、これだけいれば最低限間に合うだろう!」

 じっちゃんはキャットウォークの島本を見上げて、声を張り上げた。


「伊達さん、それに皆さん。本当にありがとうございます」

 島本は頭を下げた。コースケたち3人も深く会釈をした。


 島本とじっちゃんの呼びかけで集められた技術者たちが日を追うごとに集結し、組み立て施設は賑やかになっていった。人員の数は決して十分とは言えなかったが、シャトルを飛ばすために不足はなかった。そこに集まる誰もが、シャトルの打ち上げをもう一度実現させたいという思いで1つになっていた。

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