ホモ·川合のご登場
慧桜さんが行きたかった場所は、おみやげさんだった。
「その薬指の指輪、俺とお揃いの指輪をはめる場所にしよう」
と言ってくれたので、一緒にペアリングを探しているところ。
「んー、やっぱりクラゲのペアリングが良いよなあ」
「あ!!海月展とコラボした限定ブースにたくさん海月グッズありますよ!」
つい、夢中になってしまい、慧桜さんの腕を強引に引いて行く。
「この、青いリングの中に白い斑点でクラゲをモチーフにしてる縦幅太めのやつか、一匹のクラゲが泳いでるようなフリーサイズのリング、どっちが良い?」
「んー··········青いリングの方が良いです!光に透かしたら、きっとキレイだろうし!あと、その青さが上手く水槽内のクラゲを表現出来てるなと!」
「俺も、青い方が良いなと思ってた」
「本当ですか!?」
「ああ·····よし。これ買ってくるわ」
「半分、ボクが出しますよ!ペアリングですし!」
「いや、これは俺がお前にプレゼントしたいから、ダメ」
と言われてしまい、慧桜さんが全額払ってくれた。
この青い方のペアリングには、二種類あり、ひとつは青とピンクのペアリング。もうひとつは、青と
ピンクは、さすがにちょっと·····と抵抗すると、
「かいと、可愛いからピンクでも良いと思うけどな?かいとちゃーんって呼びたくなりそうだけど」
って言うから、青と透明のペアリングの方にした。
青い方は、水族館にいる海月という感じで光に透かすと、よりキレイに海月が映る。透明の方は、海月をモチーフにした斑点が、青と紫がマーブルになったような色合いで透明標本に似ていた。
どちらも、キレイで見応えがあるから、迷う。
「かいと、青と透明、どっちがいい?」
「んー·····悩みます!」
「俺も·····あ、なあなあ。ぼく?このお兄ちゃんと隣のお兄ちゃんどっちが青い指輪、似合うと思う?」
と、慧桜さんは急に、近くにいた幼稚園生ぐらいの男の子に声をかけた。
しっかりと、目線が合うようにしゃがんで話しかける、その姿勢が素敵だなと思った。
さっき、入館してすぐに見かけた幼稚園生ぐらいの集まりにいた子だろうか。
「んー、こっちのお兄ちゃん!!」
男の子が慧桜さんを指さしそう言ったので、
「ありがとう。そうさせてもらうな」
と、頭をわしゃっと撫でて立ち上がる。
「かいと、透明の方で良いか?」
「はい!もちろんです!」
この男の子のおかげで、ボクらはどちらの指輪か決めることが出来た。
「指輪交換っつーんだっけ、こーゆーの。新郎から新婦、新婦から新郎って順番らしいけど、この場合どっちが先なんだろうか。」
「ボク、新郎似合わなそうなんで新婦の方で良いです!」
「なんだそれ」
と、今日一番良い慧桜さんの笑顔が見れた。
「かいとがそういうなら、そうしようか·····ん。左手出して」
そっと左手を差し出すと、片手でボクの手をとり、もう片方の手で今までつけてたシルバーの指輪を隣の中指へ、はめ直してくれた。
そして、深呼吸してから薬指に、さっき買ってくれた透明の指輪をはめてくれた。
「·····よし。これでOK·····次は、かいとの番」
おそるおそる慧桜さんの手をとり、薬指に指輪を通した。
·····あの男の子が言った通り、ボクよりも慧桜さんの方が青いリングがよく似合っていた。
次の日。
学校は、指輪など装飾品が禁止なので、こっそりネックレスにペアリングを通してみる。
シャツ的に首元が目立ちにくいので、ネックレスは、指輪よりはセーフ·····だと思う。
「よお、夏糸!!」
「おはよう!梨都揮」
「あ、あのさ·····今日の放課後、残ってくんね?」
「いいよ!」
放課後になり、教室にはボクと梨都揮のふたりきりになった。
「梨都揮、話ってなに?」
「おう·····単刀直入に言う。オレ·····ずっと前から、お前のことが好きだった。オレと付き合って」
まさかの展開。驚きでなかなか言葉が出なかった。
「えっ、と··········気持ちはすごく嬉しい。けど、昨日から付き合ってる人がいて·····ほら、このネックレスについてる指輪。彼とのペアリングなんだ。」
「·····今、彼って言ったか?なあ。なんでオレじゃダメなんだよ。ソイツよりオレの方がお前のこと知ってんのに。なあ、オレと付き合えよ」
「·····ごめん、なさい。ボクは、彼のことが好きだから·····別れられないし、梨都揮と付き合えない」
「は?マジ、意味わかんねえ。お前がゲイだってこと学校中にバラすからな」
こちらの返事を聞く前に、梨都揮はさっさと教室を後にした。
次の日、廊下を歩いているとチラチラと見てくる人が多かった。もしかしたら、気のせいかもしれないけど。
「【ガラッ】おはよう!」
教室の扉を開けると、さっきまで騒がしかったのに、急にシンと静まり返った。
ん?みんなして、どうしたんだろう。
「おいおい。みんな、ホモ·川合のご登場だぞー!あ、でも近づきすぎんなよ?お前らもゲイだと思われるぞ!!」
と大声で発したのは、梨都揮だった。
昨日のこと、本当だったんだ。
その日から、ゲイキャラが周りに定着してしまい、登下校だけでなく、近所の人たちからもヒソヒソと後ろ指をさされるまでになってしまった。
·····どうして、こんなことになってしまったのだろう。
ボクは、どこか間違ったのかな?
いやそんなことない。
ボクは、『間違っちゃいない。』そう胸に抱いて、今日も授業を受ける。
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