第79話 この世界は商機に溢れている!


 実習もあと残すところ2日。


 帰りの事を考えれば実質1日ってとこか。

 

 まあ、いざとなったら転移するだけだから問題はない。


「先生! おれ……卒業したら、いえ、今すぐでもいいです! 先生の弟子にしてもらえませんか?」


「お、おま! 抜け駆けは許さねえ!」「そうだ!」


 おお! 弟子入り希望が増えてうれしいぜ!


「そうか、弟子入りしたいか? ならば、最低でも卒業証書受け取ったらおれの所へ来い。せいぜいこき使うぞ?」


「へ? ほ、本当ですか? やった~!」


「おれはこの国での身分はあくまでも臨時講師だ。弟子入りしたきゃ、共和国まで自力でこい。その程度の事ができなきゃ話にならんしな。手段は問わんぞ? 護衛ならいくらでも雇え。魔法が使えるのなら転移して来い。商人はどんな汚い手段を持ってしても目標を達しようとする輩だ」


「は、はい!」


 弟子入り予備軍10名確定だな。



「せ、先生…… 誰か倒れています! あれって……もしかしてオーガ?」


 どう見てもオーガさんです~


 異世界の種族オンパレだな……

 予想通りのオーガ登場である。


「おまえら、ここに居ろ。おれが見て来る」


「ぼ、ぼくも行きます! これも試練、立派な商人になるための試練です!」


「…… まあ、いいだろ。ついて来い」


「は、はい!」


 行き倒れのオーガは生きていた。


 なぜ倒れていたか…… そんなことは知らん。


 だが、誰がみても餓死寸前…… やせ細ったオーガ…… やたら不気味である。


「どなたかはしらぬが、これも縁……我の最後を人族に看取られるとは……」


 既に死ぬ気満々のオーガさんである。


「ちょっと待ってろ、飯を用意してやる。何が欲しい? 何が食いたい?」


「おお…… お主は神か何かか……そうだな、末期の食事……肉が腹いっぱいに食いたい……」


「任せろ……」


 お取り寄せ豚の丸焼き10丁! 完売っす!


「うまい! 美味いぞ! 人族の男よ! 我の末期の食事!堪能した! これで思い残すことはない…… あれ? 我は生き残った?」


 まあ、餓死寸前のオーガが腹いっぱい食えば、そりゃあ生き残るだろうさ。


 さあ、事情聴取の時間である。


 瀕死だったオーガの話である。


「我らの集落は恒常的な飢饉に見舞われた。狩猟で得られる獲物はわずか。最後の頼みの綱の木の実などもとても足りず。窮余の策として、我が他種族への食糧確保のための旅へと出張ったのだが……」

 

 途中で行き倒れ……


「頼む! キンタ殿ともうしたか! 村を! 村を救ってほしい! 村には腹を空かせて今にも死にそうな同輩ばかりなのだ。対価なら!対価ならいくらでも払う! この身をと言われればすべて受け入れよう!」


 にや~っと笑うおれの表情に、生徒たちは引き気味である。


「なんでも~~~??」


「あ、ああ……我らに出来ることなら何でも?」


 言った側から『しまった』と思わなくもないオーガであった。


「へ、へえ……」


 思考の追いつかないオーガ…… 金儲けの匂いを嗅ぎつけるキンタであった。



 行き倒れ寸前のオーガに案内された村は、まさに壊滅寸前であった。


 この世界のオーガ……一般的には、その大柄の体格と見た目の厳つい印象で、強力無比、人みれば襲い掛かってくる魔物と言われていた。

 だが……この村のオーガは、農業を営み、穏健な生き物であった。

 

 ただし、1日あたり必要な食料が半端なかったのだ。


 一度飢饉など迎えれば、一気に食糧難。とはいえ緊急食糧を奪えるほどには人里などは皆無。

 今まさに滅びようとしている集落であったのだった。



「足りない食料はいくらでも供給しましょう。対価は……」


 村の長であるオーガとの交渉…… フフフ……またまた金儲けかな!


「せ、先生の顔が、悪徳商人面になってる……」


「やばい…… だれか止めろ……無理か」


「どうせ、また面白いことやってくれそう。黙ってみてようぜ! 勉強になるし」


「そ、そうだな」


 ひどい言われようである。おれはお前らの教育のために…… ああ、それはないわ!



 オーガを使った、さらなる金儲け! おれの気分はルンルンである


****次回最終話****

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る