第77話 オークたちの苦悩……

「ちょっと痛い目をみてもらおうか」


(パン!パン!)


 おれが取り出したハンドガンが火を噴く!

 

 BB弾だから火は噴いてないけどね、気分だよ、気分!


 BB弾とはいえ、殺傷能力は高い。

 実弾以上の性能アップがされているので、簡単に盗賊どもの脚と手を撃ち抜く。


「い、痛ええ! な、なんなんだ、てめえ!」


「ぐわ! あ、足が……」


 それでもまだ抵抗しようとするやつは、さらに反対側の手も足も撃ち抜く。


「お~い! お前ら、出てきていいぞ? こいつらを縛り上げてくれ」


 声を掛けられてのそのそと馬車から降りてくる学生10人。


「な、なんだと! お前ら、が、学生か?」


「ああ、おれらはただの校外実習中なのさ、それも騎士科とかじゃないぜ、商人科だがな」


「な、なんで商人科の、お前が教師か? 物騒なもん持ってんだ!」


 そりゃあ身を守るためですよ。あんたらみたいなやつがいるからねえ。


「せ、先生…… てか、もう大丈夫なんか?」


 ゴブの次はオークに盗賊…… なかなかの実習メニューにうれしくて涙目らしい。


 おそるおそる盗賊を縛り上げていく。


「しっかり縛っておけよ。逃げられるぞ?」


「は、はい~!」


 盗賊たちのリーダーらしきやつから情報を聞き出す。

 渋ったが、もう2、3発撃ちこんだらべらべらしゃべってくれた。


 殺さないんだからおれは十分優しいだろ?


 盗賊のアジトの位置と残りの人数を聞いて後、こいつらはこの場に放置。


 そのうち獣が始末してくれるだろう。ただでさえ出血多量で生き残れる可能性はゼロ。


「運がよければ仲間が来て助けてくれるかもだな。まあ、がんばれ。縁があったらまた会おう、盗賊諸君! 今度会ったら遠慮はせんけどね」


「ひ、ひ~~~! このままおれたちを放置していくのか! もうすぐ日が暮れるじゃねえか!」


 おれの知ったことではない。盗賊になってしまったことを恨め。


「さて、オークのお嬢さん、いきましょうか」


『お、お嬢さん……わたしがお嬢さん……』


 いや、お嬢さんかおばさんか、BBAかどうかなんておれには区別つかんよ、だってオークだし……


 おれたちはそのオークの案内で、オークたちの巣を訪問することとなった。


『お父さん!』

『娘よ! 大丈夫だったかブ!』


 熱きオーク親子の再会であろう。なぜか感動しないおれは正常ではないのだろうか……


「あんまり、感動せんよね、先生……」


 おまえもか、生徒B……


『娘を助けていただき感謝するブ』



 ようやく『ギャ』から解放されたかと思いきや、今度は『ブ』なのか……


 おれと会話ができることでオークの村の住人たちも、おれたちへの警戒心は薄れたようだ。

 助けたオークの娘の父親はどうやら村長だったらしい。


 早速、状況説明……娘が盗賊に襲われていた経緯を説明してもらう。


 この周辺は、人族(主に盗賊)とオーク族は共存していたらしい。


 だが、所詮は人とオーク……間違いは起こる。


 オークの若いやつらが、盗賊たちの囲う『女』を激情を押さえきれずに襲ったらしい。


 報復措置として、オークを皆殺しにするかと思いきや、何をとち狂ったのか盗賊の頭はオークのメスを攫ってくるように配下に命令。

 お互いがお互いの女(メス)達を使いつぶし、今では双方ともに男ばかりになってしまったらしい。


 おれたちが助けたのは、オークのメス最後の生き残り数十人のうちの一人……


 このままではお互いに種の保存ができないのだ。


 盗賊はいい。どこぞの村でまたかっさらって来れば済む。


 だが、熱きオークの雄たちはその欲望のはけ口を失い、暴走しつつあるのだ。このままでは彼らはありとあらゆる種族の村を襲い、暴行の限りを尽くすだろう。


 オークの村の村長の憂いはそこにある。


 オスオークの欲望を押さえつつ、静かに種の存続を図るにはどうしたらいいか。

 このままではいずれにせよ、一族は一人残らず狩られてしまいかねない。


 なんか、おれにはどうでもよさそうな話である。

 オークも盗賊も、滅びたところで問題はない。


 とはいえ、おれも商売人である。


 このどうでもいい事件の中に『大きな儲け話』はないかと考えてみる。


 問題は……


・オスオークの欲望の解消


 に尽きる!


 これさえ解決できればすべて収まる気がする。


 その受け皿が圧倒的に足らないからこそ問題なのだろう。


 ぴこ~ん!



「あ、先生が悪い顔してる!」「キモイ! その悪人のような笑い方!」


 ひ、ひでえ!


 まあいい。オークの村の救援ミッション、開始である!


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