第76話 ゴブリンの次って……やっぱり定番なんですかね?

 ゴブたちの洞窟を去ることになった。

 どうせおれはいつでも転移できるので問題はない。


「王よ、またのお越しをお待ちしておりますギャ」


 ゴブリーダー……名前を付けてやったらさらに進化しやがった。


「名前を付けていただき感謝の言葉もございませんギャ」


 次に来たときには『ギャ』言葉はなくなってるといいな。


 ゴブリーダーの名前は、期待込で『スマート』と名付けてやった。


 意味も教えたら大そう喜んでたわ。

 涙顔で抱きつかれてもなあ、野郎は勘弁だわ……


「おまえら、出発するぞ!」


「「「はい!」」」


 昨日は生徒10人もゴブ達と温泉に浸かってきて、今日はさっぱりしている。


「先生、温泉ていいですね」


「肌がすべすべだな」


「彼女に今度教えてやろうっと!」


 く、リア充爆発せえよ!


 嫁候補を何人も抱えてるおれがいう話じゃないな……


「先生って結婚してんの?」


「結婚はしていないが、婚約者はいるぞ?」


「ほうほう!」


「たった4人だけだが、婚約者候補は数知れん……」


「「「はああ????」」」


 いや、嘘は言ってないぞ、諸君!


 だから早く教師なんかやめて帰りたいんだよ、おれは……


「先生だしな……」「今更だし……」「おれもハーレム作れるかな……」


 ちなみにゴブくんたちから得る魔力は自動回収するので問題なし。


 出発から2時間ほどを山道を行くと平坦な平野部が開けてきた。


 なのだが……


「先生! 悲鳴が聞こえる!」


「ああ、そうみたいだな」


 大抵こういう場合は、オークに追われる姫騎士だの夜盗に追われる商人だのを想像すると思う。


「あれってオークだよね?」


 確かにオークはいる。


「あれも野盗?」


 ああ、野盗もいるみたいだな……


「野盗に追われて悲鳴を上げているオークってなんなんすかね、先生」


 おれに聞かれても知らん。


 助けるべきなのだろうか……野盗に追われて泣き叫ぶ、多分♀のオーク……


「黙ってスルーすっか……助けてやんなよ……ってか、オークかあ……微妙?」


「先生…… ひどっす。おれは断るけど」



『た、助けてください!』


 あちゃ~…… 下手に全種族言語など覚えてたばかりに……


 オークの…… 美形とはとても思えないご婦人の救援要請…… 無視していいかな?


「どうすんだよ、先生……あれってオークのメス?」


「た、たぶんな……」


 馬車ののぞき窓にかぶりつきの10人の生徒たち…… いいよな、おまえらは……


「お前らはここにいろ。おれが話つけてくる」


「さすがは、先生!」「すげえ! オークのメスも守備範囲? さすがっす!」「おれは……やだ」



 うっせ!


 

 おれが馬車から出ると、なぜかオークのご婦人?はおれの背後へと隠れる。

 泣き顔がこれほど似合わんメス……女性には初めてお会いしたでがす。


 いや、おれの蔭に隠れても、身体の大きさ的に意味がないんだが……


「おい、そこの小僧! そのメス豚(オーク)をこっちに寄越しやがれ!」


「おめえ…… どっから来た? いい馬車持ってんじゃんよお! そのメス豚と馬車寄越せばてめえの命は助けてやるぜ? げへへへ!」


 鑑定でみると、おれの目の前のやさぐれた男たち10人は間違いなく『盗賊』であり、おれの後ろで山のように縮こまっているのはオークの♀なのだ。


「一つ確認させてもらっていいですか?」


「おうよ! 一応優しいおれたちだ。聞いてやるぜ」


「なんで、このメスブ……いやオークを追いかけまわしてるんですか?」


「ああん? そりゃあ決まってるだろ! こいつらの仲間のオークがおれたちの女を手籠めにしやがったからおれたちも復讐ってわけだ」


 え? このオークの『娘さん』を寄ってたかって手籠めにするんですかいな…… 相手選べよ……


 間違ってもおれは遠慮したいんだが…… あんたら、メスならなんでもええの?


「えっと…… ノーコメントで……」


「ああ?何訳の分からん事言ってるんでえ! おい、やれ!」


 問答無用ですか……なんか理不尽な気がするのはおれだけでしょうか……


 仕方がありません。


 この場は盗賊を無力化してもう少し状況確認の必要ありですね。


「先生……頑張れ…… オークが正しいのか盗賊が正しいのか、わからんけどとにかく頑張って!」


 馬車で恐れおののく様子見の生徒10人の祈りは、届くのだろうか……



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