第75話 ゴブ一族を救え!
鑑定結果はクロ。
倒れていたゴブは全員『ハンセン病(ゴブバージョン)』だった。
人同士では接触感染しないと言われているこの病気は、この洞窟内では急速に広がっていたらしい。
考えられるのは『空気感染』か『接触感染』かな。
大体こんなに不衛生な場所にいたら、どんな病気になったところで不思議はない。
異世界小説に出てくる魔物というのは『病気』にはならないのだろうか……
「王よ。我らにはあなた様に差し上げるものは…… 一族全員の忠誠と……この身のみですギャ」
うん、そんなことはわかってるんだぜ?
早速全員鑑定してみると……
ゴブ達の平均保有魔力は100。
ただ、中にはかなり高い魔力を有する者がいた。
多分、ゴブリンメイジとかの卵なのかも……
それを考慮してもトータルは100人分で約2万(日本円換算で200万円)
「お前らから払ってもらう対価は『魔力』だ。明日から全員3日分の魔力(600万円相当)で全員の治療を行ってやろう」
ついでに風呂(温泉)も作ってやるか。
ゴブに風呂の習慣を植え付けた人物として歴史に残るやもしれんが……
「あと2日分提供してくれるならば、今後同じような病気にならないよう施設も作ってやる」
「ほ、ホントでございますかギャ」
「ああ、既に手下となったお前たちに嘘は言わんよ。とりあえず病人全員にこれ食わせておけ」
コッペパンをさらに100個以上出してやる。
先の100人ももっと食いたそうにしていたので、ゴブリーダーにあと200個の管理を任せる。
「あ、ありがとうございますギャ、王よ……」
なんか力が抜けそうなやり取りだな……
「病人もおまえらも全員これを飲め!」
一本あたり60円程度で日本で販売されている『栄養ドリンク』
メーカー名は忘れた。
支出 60円*200本=12000円
収入 600万円
いい商売だな、ほんとに。
「先生! 魔力もらってどうすんのさ?」
「魔力ってお金のかわりにならないでしょうが」
「そんなもんもらっても損するぜ、先生」
まあ、任せろ。これはおれにしかできない商売だ。
お前らが将来きっちりとおれの傘下の商人になったら恩恵を与えてもいい。
「じゃあ、契約完了だな」
病気の軽重に関わりなく、あっという間に元気になっていくゴブ達……
当然配布したコッペパンには『調教魔法』が掛かっているので計200人の配下となった。
薄暗い洞窟の中、薄汚れたゴブ達が全員おれに向かって頭をたれて跪く姿もなかなか……怖ええよ!
さて、次は風呂である。
「お前ら……おれがやってることはこの世界では非常識なことだ。だが、それを受け入れて将来自分に活かそうと思えたなら、それはお前らだけの財産になる。常識は大事だ。だがそれにこだわることなく自分だけの商売の道を探ってみろ。そうすれば(多分)大商人になれる!」
まあ、おれの『奴隷』とも言うが……
「せ、先生! おれ、先生のクラスでよかったよ!」
「おれも! もっともっと教えてくれよ、先生!」
はいはい…… 生徒ABCは、将来の奴隷ABC確定でございます。
さてと…… 風呂かあ…… 大きな湯船売ってるかな…… あ、あったあった。
これなら20人くらいづつならいっぺんで入れそうだ。
どうせ源泉かけ流しだから、めんどくさいことは無しだ。
ちょうど山の近くなんで温泉があってよかったわ。
「おいちょっとどいてろ」
「は、はい!な、何をなさるのですギャ?」
(ど~ん!!)
洞窟内に突然登場した20人用湯船。耐久性を考えた総金属製(ステンレス素材)
「あとは温泉の引き込みと排水処理だけだな」
さくさくと作業を進めていくおれに、皆沈黙ばかりである。
天井部分には湯気の逃げ道も作っておく。
「さあ、出来たぞ。ゴブ温泉!第1号だ!」
「こ、これは!」
「ここに毎日入って身体をきれいにしろ! そうすれば大概の病気にはかからん」
「あ、ありがとうございます!ギャ?」
「先生って商人だよな…… 大魔術師だったりするのか?」
「あん? おれはれっきとした行商人だぞ?」
「だれも信じねえよ、それ……」
そこらの魔法使いなど問題にならん位に魔法使える『行商人』だけどな!
こうして、ゴブの洞窟救済策第一弾の完了である。
支出 ドリンク=12000円
湯船=約100万
配管材料=約50万円
収入 ゴブ達の魔力=1000万円
そこそこ稼げたので良しとしよう。
コッペパン? ああ、あれはサービスしとくわ。どうせ在庫で眠らせていたやつだし。
後世、この時出来た温泉保養地はゴブ一族の『聖地』として、大勢のゴブ達が訪れることになる。
ゴブリーダーによって、この地におれの『石像』ができることになることをおれが知るのは、ずっと後のことだった。
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