第70話 魔都の復興と商売開始! のはずだったのだが……



 数日後、ヴィオレッタ様の快気祝いということで、当人の屋敷へとおれたちは招待されたのだが……


「なんでこうなった……」


 なぜか快気祝い用の昼飯をおれが提供することになったのである。

 

 ゼッフェルト商会側から10数人、おれたち側からは総勢17人である。


「うまいのお! キンタ! こんな美味いもの初めて食べたぞ!」


 13歳程度にしか見えないヴィオレッタ様…… もはやおれのことなど呼び捨てである。

 親近感の現れといえば聞こえがいいが、おれはどうもロリとかショタとか幼児世代に縁があるのだろうか……

 おれ自身は決してロリコンでもショタコンでもなく、ましてやシスコンなどでもない。


「美味すぎる……」


「初めて食ったよ、こんなうまい飯……」


 勉強のためと言われ、ゼッフェルト商会専属の料理人も何名か同席させてもらっているようだが、総じて皆絶句状態である。

 

 昼飯ということで手の込んだものを出す必要もなかろう、だがそれなりの高級品は提供させてもらおう! ということで出したメニューとは……


『特上うな重』である。


 いえ、うなぎなんてこの世界にはいないようなので、もちろん【通販】で取り寄せた高級冷凍食品ですよ?

 向こうでは100グラム当たり3000円以上もするやつさ。


 まあ、飯は某高級コシ○カリ。


 デザートは1個5千円クラスの○張メロン!


「「「…………」」」


 この場のおれ以外全員が、黙々と涙を流しながら冷たく冷やしたメロンを食っているのだ…… 怖えよ!


 そして、食い終わったやつからおれの顔を見て無言で『お替わり!』を所望……


 どんだけ貧しい食生活なのかと、この世界は……



 ここがキンタ商会の力の見せ所だな! わははは! 皆の者、跪き給え!



 冗談はさておき、実質この魔国の女王となったヴィオレッタとの交渉が終わったわけではない。


・義手、義足を含めた今回の治療に掛かった費用の支払い

・上記に関しての別途御礼

・魔国から帝国及び共和国への迷惑料としての慰謝料の支払い

・3国同盟締結に向けた交渉スケジュールと概略の作成

・魔国復興のための食料その他の援助活動について


 魔王を殺され魔都が破壊された状況では、この国には他国に支払えるような金はない。

 もちろん、おれへの支払いも無理である。


 ただし、それは『金銭』での支払いでならば、だ。



「今回の治療費および今後の魔国への食料、建築資材、日用品等すべての援助を必要なだけキンタ商会で請け負いましょう」


「な、なんと! そのような事が可能なのですか? 掛かる経費は天文学的、いえ、国家予算規模それも数年分に上りますぞ!」


 先日の事件において、たまたま病に伏せっていた魔国の財政局長は、この会食の場に出席している。

 ほとんど唯一の生き残りの閣僚で、今後は彼がこの国の宰相としてかじ取りをしていくらしい。


 普通の精神の持ち主なら、もうとっくにこの国から逃げているだろう。

 それでもこの国のために残って、苦労を背負おうとしているのは立派なことだ。


「お金は…… 不要です」


「か、金が不要じゃと? どういうことじゃ? われらすべてを『奴隷』にでもしようというのではあるまいな?」


 ああ、そういう手もあったか……


「我が国、共和国は『奴隷制度』そのものを廃止しております」


「ならば、対価はなんじゃ? この身か? それも良いかもしれぬが、いささか足りぬな」


 嫁に行く気満々なんじゃねえだろうな、王女様よお? いや女王様か……


 ロリ、ショタもそうだが、王女とか女王とかそういう人種がどうしておれの身の周りに多いのだろうか……


 おれは『金銭』以外の対価……『魔力』について説明する。


・魔国民全員から半日分の魔力を対価としてもらう代わりに、キンタ商会がすべてのバックアップを請け負う

・対価として不足が懸念された場合は、さらに半日分


 魔国は、魔術師が多いため平均魔力は約5000程度と目されているので、半日分で2500。総人口50万なので…… まあいいや、もう計算するのも面倒だ


「そ、それでいいのか? いや、われらとしては助かる。国家財政を圧迫することなく支援してもらえるなら……」


 敵対しないやつにはおれは優しいよ? その代り敵になったら容赦はしない。


 ああ、女王様よ……おれの敵に回ったら最後、その義手義足も強制回収させてもらうのでご了承くださいませ~



「わらわは……敵対などせぬ…… し、心配無用じゃ、キンタ……殿……」


 良い子良い子と頭を撫でておく。


 ところで……一国の女王様が、なんでおれの懐に収まって会議を進行してるんすかねえ……

 この絵面の不自然さを、お前らも黙っていないで指摘しろよ!


 しっかりと契約書を交わし、当面は魔都での食料、その他物資の支援だな。


 うん! こういうのはもうキンタ商会の優秀スタッフに任そう!


 おれはさくっと魔力をいただいて、共和国とキンタ商会、それのおれの取り分を分配すればお役目終了である。


 まあ、ソフィアとかからは『また仕事が増えて……』とか文句言われそうだけどね。

 おれは会長でっせ? 知ったこっちゃないな。


「では、ヴィオレッタ様。わたしはこれで失礼します。後はキンタ商会のスタッフに任せますのでよろしく~」


「待たれよ! キンタ。この国の経済的復興とは別に、お主に頼みがあるのじゃ!」


「は、はい? よろずやごときに頼み事とは、一体なんでしょうか?」


「おぬし、暇じゃろ? 」


「え、ええ……まあ……(どうせ復興事業は商会の皆任せだしな)」


「おぬし、この国の『魔法学院』の臨時教師になってはくれぬか?」


 お、おれが教師? へ? おれ、ただの商人なんだけど……


「我が国の魔法学園は『女子校』なんじゃが……」


「お任せください! 女王様! このキンタ! 全力で職務を遂行させていただきます!」


 急きょ、なんの脈絡もなく『教師』となって教壇に立つことになったキンタである。


 さて、どうなることやら……


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