第37話 帝都で商人ギルドに登録しました~
「あわわわわ!!! き、キンタさん! こっちはもうパニックです~ た、助けてくだしぇええ!!」
「ばか兎! こっちも製作と魔力注入が間に合わねえんだ! 明日には人手を増やしてやる! 今日だけは何とかしろ! ほれ!そっちの材料はいくらでもある。頑張れ!」
「鬼! 鬼キンタ! ブラックワーキングで訴えてやる~」
文句をいいつつもその手は止まらない。汗をぬぐう暇もない。水分補給など何それ?状態……
おれと兎族のアンの二人は、目下新たに購入した移動式屋台用馬車のオープンされた両サイドでそれぞれがそれぞれの商品販売をしている真っ最中である。
販売当初こそ、売り上げはそこそこだったが、評判が評判を生み今では二人だけでは手に余るほどの状況になっている。
時は数日前に遡る。
「何を販売するのですか?キンタさん」
「ああ、まあな一応案は考えてある。この世界では、まだだれも売ってないだろうな」
「ほうほう! それは楽しみですね!」
「お前も売るんだぞ?」
「へ? わたしが?」
せっかくの看板娘だったアンを引き抜いて来たんだ、せいぜいこき使ってやるさ。
ものほんのバニーガール! くくくっ! 破壊力抜群! 間違いなしだぜ!
「とりあえず、商売するにはこの国じゃあ、商人ギルドに登録しないとだめらしい。行くぞ、商人ギルド」
「あいあいさー」
商人ギルドでよろずやキンタを代表とし、キンタ商会としての法人?登録も行った。もちろんアンも同時に社員?登録を行う。
正社員は当分アンのみで、忙しくなれば非正規雇用……アルバイトで雇う予定である。
一応バカ売れする予定なので、アルバイトの募集もお願いしておく。
ただし可愛い女性に限る! 歳いっててもおれが可愛いと判断すれば合格! 可愛いは正義だ! ここは断じて譲らない!
「コホン……えっと……ではキンタ様……募集は女性、出来れば計算と料理、接客ができればよいということですね?」
「あ、ああ、それでお願いします」
「給与はどうしますか?」
この帝国では貨幣単位はドールを使用。
1ドール=100円相当で、銅貨=1ドール、銀貨=10ドール 金貨=100ドールである。
つまり金貨1枚=1万円相当 と考えればわかりやすい。
一か月のおよその庶民の生活費は金貨10枚、およそ10万円相当らしい。
おれにとっては実にわかりやすくて結構な話である。
「日当制で一日当たり銀貨5枚で考えてますが、いかがでしょうか? 制服(バニーガール、メイド服等)はこちらで支給。場合によっては臨時の宿舎も提供します。その場合はもちろん3食休息付で」
「なるほどなるほど……それはなかなか好待遇ですね。その条件ならすぐにも集まると思いますよ。ある程度人が集まったらお知らせしますので、面接等の日程調整のためにおいでください」
ここはお任せだな。受付嬢……できる女と見た。
登録料を払い、商人ギルドを出る。
しばらく厄介になるであろう宿で、アンと今後の仕事について相談だ。
「見よ! この魔道具! おれオリジナルの最高傑作を!」
「あ~……はいはい……どこが素晴らしいのか、ちゃんと説明してくださいね、キンタさん」
「ふふふ……聞いて驚け! 何を隠そう、この何の変哲もないプレート……」
おれの使える魔法の中に【料理】というのがある。
え? それって普通は【スキル】じゃないの? と思われるだろう。
だが違うのさ。
通常は【料理】スキルといったら、料理の技量をアップする物である。実際この世界でもそういうスキルを持つ人はいるらしい。
おれの魔法【料理】とは……おれの魔力を与えることで、どんなにまずい料理、食材、果ては毒を含む素材すら無毒化し、腐った廃棄物でさえ『美味しく』食べられるように変えられる、万能料理魔法なのである。
そのおれの魔力を使うことが当然条件なのだが、その魔力がこのプレートには込められていて、プレートに食材なりを置いてスイッチオン!
赤いランプが緑になれば完了! あら不思議? あなたの劇マズ飯も、あっという間に超美味い飯に変身でございます! なのさ! 所要時間わずかに10秒ほど。
魔力を充填すれば何度でも使える、半永久使用可能商品がなんと! 驚きの10ドール!
ただし10回分の魔力充填費用は別途いただきます!(10ドール/10回分)
つまり100円費やせばどんな料理も美味くなるって寸法さ。
そしてそして!
そんな100円すら払えない人には朗報!
あなたの使っていない魔力で、このプレートへの魔力充填も可能!
1日分の魔力をいただければ、それ相応の魔力充填をします!
っていうことなんだな……
目安は大体一般人の所有魔力は100(1万円相当=100ドール=金貨1枚分)程度。
おれの投入する魔力など、無尽蔵で使えるので実質はただである。
コストがかからずに、収入だけはがっぱがっぱと稼げる…… まさに理想の商売ができるのだ。
くくくっ! どうだ驚いたか!
「へ~~~! しゅごいでしゅ~」
寝てんじゃねえ! ばかウサ! 今度はお前の仕事の説明だぞ!
ということで一応、この魔道具を100台用意したのだ。まあ1台は店頭販売のお試しようだけどね。
魔道具の名前は『美味いんです!』
どこぞのインスタントカメラかなんかと間違いそうだが、ここでは問題にはならんさ。
100台も作って大丈夫かなあ、売れるかなあと密かに心配したおれだったのだが……数日後の地獄を見るとは、この時のおれも予想はしていなかったのだ。
恐るべし!異世界…… 甘く見てたわ……
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