第26話 旧猫族の村の攻防戦 その2
「おお! これは! 素晴らしい眺めだ!」
おれたち4人は優雅?な空中散歩中である。もちろんドラゴンの背中に乗って。
「し、師匠…… こ、怖くないのですか? こんな高いところ…… 怖すぎて……」
見た目は幼女で中身は高位魔法使い(実年齢はアラフィフらしい)のイブも、初めての経験でガクブルだ。
「ひゃ~~~! きんもちいい~~~~!」
一方のソフィアは楽しそう……というかテンション上がりすぎだろ?
「ふむ……自分で飛ぶよりもこれは楽ですじゃ、キンタ殿」
族長もそれなりに喜んでるみたいなのでよしとしよう。
「ベルンシュタインさん。王都方面に向かってもらっていいですか?」
「ふむ、構わぬが……なにか見たいものでもあるのか? キンタ殿」
「いえ、帝国と魔国が王都に攻め入ったはずなので状況確認が必要かなと」
「構わぬよ。方向はこちらでよかったかの?」
「ええ、お願いします」
ちなみにおれとソフィアは変装を解いている。今の状況ならば変装している意味はない。
「キンタ様、犬族の村が見えてきました」
「ああ、だれもいないようだね」
「ああ、キンタ殿……済まなかった。腹いせにあの村を滅ぼしてしまった」
やっぱり……犬族の村を燃やしたのは、このドラゴンさんでした……
「やってしまったことはもう仕方がないです。それでも助かった命もあります。亡くなった方には哀悼の意を。命長らえた方には幸せを祈念するだけです」
「われがこの場で何を言っても何も変わらぬ。だが、これからは少しでも手助けさせていただこう。キンタ殿、よろしく頼む」
亡くなった方には申し訳ないが、これも弱肉強食の世界の定め……
でも、なんでおれがお願いされねばならんのか……理解に苦しむ。
「あれ? 人が大勢街道沿いにこちらに向かっていますよ、キンタ様」
「王都から逃げてきた人かもしれないね。降りて話を聞いてみるか……」
王都から逃げてきた人々の頭上に、突然姿を現した2体のドラゴン……
たまったものではないだろう。
地上では既に腰を抜かして震えるしかない数千人の人々……
彼らの目の前に降り立つ2体の巨大なドラゴン……恐れおののくのも無理はない。
存在するだけで強大なこの威圧感……
「すみませ~ん! どなたかリーダーの方はおられませんか~」
目の前に降りたドラゴンから降り立つおれたち4人……
「は、はい? ドラゴンから人? 龍騎士? 伝説の龍騎士様?」
「話を聞きたいんです。王都での状況についてです」
「お、お兄ちゃん!」「キンタ様!」「キンタ殿ではないか!」
お? その声とその姿…… 長屋にいたダリアさん、マーガレット、それにドワーフのクマさんじゃないか!
「皆さん! ご無事でしたか! 良かった~」
顔見知りとの久々の再会…… うれしいものである。
再会の感動もとりあえず置いておいて、早速王国の現況を教えてもらう。
「王都は陥落しました。王都から逃げ出した我らを逃がすために、レイティシア様以下100名ほどの騎士団の方々が、逃げ切れない市民を守ってこの先の『猫族の村』で防衛戦の準備をしておりました。もう既に戦闘は始まっているかもしれません」
なんですと!
「敵は、敵はどのくらいの規模ですか?」
「およそ3千と聞いていますが、実数はわかりません」
「わかりました。すぐにも救援に向かいます。王国にはなんの恩義もありませんが、少なくとも知人が殺されるのを黙って見過ごすほど、人でなしとは言われたくないですから」
まあ、偵察のついでではある。ドラゴン2体に3千程度のただの兵士が敵うはずもない。
間に合うのならば、王女さんたちをサクッと助けてこよう。
「食料と水は間に合ってますか?」
「い、いえ…… もうすでに皆飲まず食わずの状態で」
「わかりました。この先の犬族の村の跡地に大量に水と食料を用意しておきます。クマさん、よろしく段取り頼んます」
「おうよ!任された!」
「お兄ちゃん! クマおじさん、あたいのお父さんになったんだよ?」
な、なに! クマ!確か80歳だったはず。ダリアさんは20歳……
許されるか!ボケ~! あとで説教してやる! ロリどころの話じゃねえだろ!
歳の差60……ってもはや犯罪としか…… いや、異世界なら許容範囲なんだろ。
サクッと水と食料の手配をして、再び空へと舞うおれたち4人。急がねば!
「いってらっしゃ~い! お兄ちゃん!」
「王女様と皆さまをお助けください。キンタ様……いえ龍騎士様!」
「がはは! キンタ殿! 帰ってきたら酒盛りじゃな!」
うっせ! このロリコンドワーフ(というわけではないが)!
~旧猫族の村の戦場~
「全軍突撃する! 敵対する奴は容赦なく斬れ! だが若い女は殺すなよ? あとでじっくり楽しませてもらわないかんからな」
総司令官の檄に、げひた笑いで答える戦場の3千人であった。
「構え~! 全軍突撃~~~!!! ん? なんだあれは? なにかこっちに向かって飛んでくるぞ?」
「し、司令官殿…… あ、あれはドラゴンかと……」
「なに! ど、ドラゴンじゃと?それも2体!」
*****
「総員覚悟はいいな! 生きて恥をさらすより、ここで王国騎士としての意地を見せようぞ。あの世でもおぬしらを全員騎士団に召し抱えてやろうぞ」
王国騎士団100名を擁する陣地側。
固唾を飲んで、敵3千の総攻撃に備えた王女をはじめとした騎士団員……
一人の騎士団員が、ふと後ろを振り返った。
「あ、あれは? …… ん! ど、ドラゴン!」
「何!」
「緊急伝達! 後方よりドラゴン2体接近中!」
「なんじゃと! ドラゴンじゃと!」
「前門に狼の群れ、後門の龍……万事休すです、王女様……」
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