第14話 王都に向けてようやく出発です
~エルフ族のとある部隊にて~
「おい、お前ら……昨日は全員裸にひんむかれたそうだな……」
エルフのとある戦闘部隊の隊長と部隊員数十名の会話。
「あ、隊長! そうなんです~! 全員、あのキンタさんに裸にされてしまって……」
「そのキンタ殿は一回も負けなかったのか?」
「そうそう!やたら『じゃんけん』強すぎ~」
「……変な事……やらしいことされなかったか?」
「ええ、大丈夫でしたよ?」
「彼は商人なんだろう? 商人と言えば強欲な脂ぎった男と相場は決まってる」
「ええええ~~~! そんなことなかったですよ? キンタさん、すごく気前はいいし会話も面白い、何よりも若くてあの男前ですよ? 超優良物件ってやつ?」
「ふむ…… 昨夜の宴会料理も酒もほとんど彼の無料提供だったとは聞いている」
「すっごいお金持ちですよ、彼…… もうね、ここにいる全員メロメロですよ、はっきり言って」
「そ、そうなのか?」
「えっちなのは男として当然ですけど、他の人族の中年男たちと違って『いやらしさ』がないというか」
「ほう…… 確か22歳とか聞いたが……」
「あの若さで大富豪のイケメン! ソフィアさんだけにはもったいないです~ はっきり言って」
「そうだよねえ~ わたしもお妾さんでいいから立候補しようかな~って」
「それに……見せてもらったけどあの『新築の家』と『馬車』!! すごかったねえ!」
「ん? 見た目は普通だったがな……」
「隊長! 見た目で判断したら大損するっていう見本みたいなもんですよ、それ。中見たらぶったまげますって」
「そ、そうか……わたしも一度見せてもらうか……」
「絶対隊長も立候補~っていいそう」
「あ、ああ、ところで……」
「ふふふ! 隊長、気が付きました?」
「あ、ええと…… ここにいる皆のスタイルというか……」
「どうです?みんなが皆、スタイルが1ランクアップしたと思いますよね~」
「なにかされたのか? あのキンタ殿に……」
「いいえ~ じゃ~ん!!! 秘密はこれで~っす!!」
この部隊の隊長以外の全員が、昨夜キンタに身ぐるみはがされたのだが、そのお詫びにと『ブラ』と『パンティ』をもらっていたのだ。
当然この異世界に流通しているものではないほどの高級感溢れる一品である。
それも大小彼女らの大きさに合わせた色とりどりの、補正ブラ……
ちょいと上着の上から覗けば、胸の谷間が存在感をこれでもかと強調されているのだ。
ブラなしとありとでは、服の上からでも違いは一目瞭然。ただでさえ魅力的なエルフたちは一層輝いている。
ちなみに後日談だが、この部隊の成婚率は他部隊員に比べて断トツだったらしい。
「それとこれももらったんですけど、すっごいですよ、これ!」
さらに試供品として贈られたのは『化粧品』と『リンスインシャンプー』
この世界の女性様化粧品などその性能などたかがしれたものなのだ。せっかくの素材を生かしきれていないこの異世界に憤慨気味のキンタにとっては、女性の『美』を追及することは己の使命であるとさえ考えている節がある。
その試供品は、この世界の価値感すら大変革してしまいかねないものだ。
当のキンタはそこまでは深く考えている訳ではないのが……
「こりゃあ、わたしも真剣に彼との婚活考えるか……」
隊長の独り言にうんうんと納得して頷く隊員たちであったという。
*****
「さて、では出発しましょう」
予定に1日遅れで、ようやく王都に向けて出発である。
エルフの集落からの『援軍』は、約1か月遅れで出発するらしい。
馬車へと、もはや自分たちのものでもあるかのように乗り込む面々の動きはスムーズすぎるのは、もう今更だろう。
おれ、ソフィア、王女、ミランダ、ローガンの5人だと現在の馬車の広さではぎりぎりである。
王都までは約10日。
契約上、毎日3人からは『魔力』をいただいている。朝のうちにもらっておけば半日もあればかなり回復するので早速さくっとね。
「金に執着しない商人というのもキンタ殿が初めてじゃな……」
「まあ……そこは色々とありますから」
「一般庶民でも高額商品が買える可能性があるのだ。誰もが喜ぶじゃろ。いっそのこと王都で店舗を構えぬか? 援助は惜しまぬ」
王家の一員として、有能な商人を抱え込みたいというのはもちろん理解できる。
だがおれはそんなしがらみなど抱えたくはないのさ。
自由奔放に旅ができれば十分。
それも飽きたらあのエルフの集落で一生楽しく生きていければそれで満足なのだ。
今回の寄り道は、そういう拠点確保できたことが僥倖であったよ。
エルフ大好き~は今に始まったことじゃないし。
「出店というか出張所みたいなものでもよければ考えておきますよ」
「おお、そうか、そうか……うむうむ…… その際は遠慮なく相談せよ」
王都への旅は順調に進む。
途中魔物が数体出てきたが、王国騎士団長と騎士、それに遠距離支援が可能なエルフの達人弓兵のまえにあえなく瞬殺である。
ちなみにソフィさんはおれの護衛なので、高級弓と大量の矢を供給している。近接戦闘用にサバイバルナイフも貸し出したら大そう感激されたさ。
「このナイフの切れ味が凄すぎます! キンタ様」
そ、そうなの? 定価で2万円くらいの安物なんだけど……
道中暇なこともあって、おれ自身の武器も調達した。
魔法が使えるので基本武器は不要なのだが、やっぱりそこは男の子なのさ。
・ハンドガン
・ショットガン
・アサルトライフル
・狙撃用ライフル
・対戦車用ライフル
・ダーツ
・ゴーグル、暗視用ゴーグル、ボディアーマー、カモフラスーツ(森林用、砂漠用、ブラック)
なかなか物騒なラインナップであるが、何を隠そう全てBB弾を発射するサバイバルゲーム用銃器である。
もちろん電動式、可能ならレーザーサイト、スコープ等なんでもありだ。
まあ、大人のおもちゃって言えばそうなのだが…… この異世界ならば結構な性能アップしてんじゃね? って思って試し撃ちを道中休息中にやってみたらぶったまげたわ。
詳細は省くが、殺傷力がないはずのBB弾が木々にめり込むどころか突き抜け、岩をも削り、挙句の果てに鉄板さえ貫いたのだ。
射程は驚くなかれハンドガンで10Mは楽勝。対戦車ライフルで2キロ以上……
おまけにBB弾なので普通の弾倉数ではない。とんでもない量の弾が雨あられとばら撒かれるのだ。
「こりゃあ……おいそれと使えんな…… ハンドガン程度がいいところだな」
ボディアーマーも優れた能力だ。
強力な対戦車ライフルの至近距離での弾を弾きやがったよ。
あ~…… 各武器の型式等はおれには聞かないでくれ。こういうのは好きだけど色々と蘊蓄たれるほどのヲタではないのだ。
こうして無事に王都へとあと1日…… 王女たちの護衛の旅は終わりを迎えたのだった。
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