第13話 大宴会です

「この酒はなかなかうまいな。すっきりとしていて後味が残らない。白ワインよりこっちがいい」


 おれが提供した『日本酒』の、ローガンさんの評である。


「冷やしても温めても飲めるとはの…… キンタ殿…… お主……ずるいぞえ」


 おれ自身は日本酒ロックが好きなので、カップにこっそり氷なんぞ浮かべている。早速レイティシア様も同じ飲み方を所望……


「はあ…… これまでのこと報告書に上げてもだれも信じてくれそうにないわね……」


 ようやく剣呑な雰囲気がとれてきたミランダさんである。


「ミランダ…… 報告書作成はおれも手伝うから心配するな」


 再び溜息をつくミランダさんだが、どうやら騎士団長の『お手伝い』ほどあてにならないものはないらしい。


「つまみなんぞどうですか? 異国情緒あるでしょ?」


 基本的にエルフたちの料理は淡泊である。なので『日本』の定番おつまみを!


・枝豆

・焼き鳥(ネギ間、皮、もも、つくねetc)

・ビーフジャーキー

・柿の種&ピーナッツ

・ポテトチップス

・フライドポテト

・さきいか

・一口チョコ

・ポッキ○

・きのこの○


 などなど出てくる出てくる…… わらわらと……


「な、なんだこれは……」

「おおおお!! 美味い!」



 おれも多少酔ったためか、もはや歯止なしである。


 テーブルに並んだ、珍しい食い物に蟻のごとくエルフたちも集まってくる。


「婿殿…… もうわしのあとを継いでこの村の長に収まらんか?」


「キンタ殿……いえ、もうあなた?ダーリン?って呼んでいいかしら?」


 ええい!酔っ払いめ!


「キンタ殿、わらわも混ぜてくれぬかのお……」


 王女よ、お前もか……


「だが、断る! おれに幼女を愛でても嫁にする趣味はない!」


「ははは……12歳ではだめかのお……」


「な、なら!わたひはどうなんれふか!」


 おっと……いつの間にかミランダさんが出来上がっちまってる……


「いや、それはちょっと!」


「なにがちょっとなんれふか!」


「お待ちなさい! そこの女騎士とやら! キンタ様はわたくしの主! あなたのものではありません!」


 あ、いやまあ『主』は間違ってないけど、誤解を招くような発言は控えような?ソフィアさん……


「なんれふと? キンタはんはこれから王国の盾となって活躍していただくんれふ! エルフの小娘の出る幕などありまふぇん!」



 こっそりとその場から逃げ出すおれ…… 気配遮断、隠蔽を使って逃走ですな。勝手にやっててくれ。



「きゃあ!キンタ様~!」


 逃げた先にも罠があったか……


 10数人のエルフの綺麗どころに囲まれてしまった。

 どこぞの『キャンパスクラブ』など吹っ飛びそうなくらいの好待遇……ここは天国か……

 やっぱ最後はいつかここに移住すっかな…… 第一この世界では一夫多妻制は認められているのさ。ハーレムは男の夢さあ!


 

 お兄さんは大好きだよ~ そういうの、げへへ!


 ちなみに彼女いない歴=年齢のおれではあるが、未経験者ではない。ここはしっかりと宣言しておく。

 ひと夏のバイト代全額投入したことは黙っていてくれ……



 左右に双丘をこすり付けるように侍っているエロフの娘の『わたしを嫁にして』アピールがすごい……

 まあ、結構酔っぱらってるんでどの娘も同じに見えるっていえば同じに見えるんだけどね。


 後になって考えた時、この時は平和な良い世界を満喫できたんだなあとしみじみ思ったさ。

 この後にやってくる『災厄』のことを知っていたなら、今ここに居るエロフ全員をすぐに嫁にしていたかもしれない。


 これで宴会終了? とんでもない! 長い夜はこれからでっせ。



「きゃあ!!!! キンタさん、えっちぃぃぃ!」


「良いではないか良いではないか……」


「うぐっ!!!」


 ええと……誤解なきようお願いします。特段エロイことをやっているわけではありませぬ。


 ポッキ○というせっかくの小道具お菓子があるので、エロフさんたちと両端から咥えながらの一種のチキンレース中なのでございます。


 ポッキ○が無くなるまでどこまで耐えられるか! なんですが、お互いに『キス』くらいはむしろ喜んでお願いしたい人種(大人とも言う)ばかりなので、最後はチュッとね!


「いや~ん…… 最後はもっと大胆にキスしてえ~~~~」



 という方ばかりなのですよ。


「キンタ殿……おぬし、本当にただの『商人』なのか? 『遊び人』と職業変更したほうがいいのではないか?」


 ややお堅い騎士団長様ものりのりである。


 いや~……男ってそういうもんでげしょ?


 王女とミランダさんは日本酒の飲み過ぎで既に撃沈。さっさとお邪魔虫は馬車の簡易ベッドの中です。


「キンタ様~今度はわたしと~」


 ソフィアさん絶好調です。


 何をしてるかって? そりゃあ、昭和の懐かしい『野球拳』ですって。


 1対1でじゃんけんして負けたら1枚ずつ衣服を脱いでいくあれですよ。


「いや~ん! また負けた~ じゃあこれ脱ぐ~」


 もはや恥というものがあるのだろうか…… いや、恥じらいがなくてはいかんのよ、こういう世界は……


 最後は全部はぎ取ってやったぜ! 大学のコンパで磨き上げられた『じゃんけん』の能力を甘く見てもらったら困る。


 片手で胸を隠し、もう片一方の手で秘部を隠すように去っていく美女エルフ…… いい! とってもいい!


 彼女たちにはあとで、かの国の『ブラ』と『パンティ』、それに何かしらのかわええ服を差し上げよう……

 言い物見せてもらったお礼だ。安いものさ。






 大半のメンバーが酒でつぶされ、おれと族長だけがひっそりと二次会中である。


「族長……」


「お義父さんと呼んではくれぬか……」


「いえ、それは娘さんとの覚悟が出来たらお願いします」


「そうか、そうか……愉しみが出来たわい。ああ、孫は早めに頼みますぞ?」


「いえ、そんなことより…… あの家、族長とわたしが認めた人以外は入出できないようにしてあります」


「うむ……」


「どうも王国の動きが怪しすぎます。族長たちも同盟かいざというときの援軍要請を持ちかけられたのでしょう?」


「するどいな……婿殿。その通りじゃ。武器の調達、食料の確保もその流れじゃな」


「あの家の倉庫に食料、回復ポーションの類を大量に確保しています。何かあったときは遠慮なく使ってください。命さえあればなんとでもなりますから」


「ありがたいぞ、婿殿……最高の婿を迎えられたようじゃな」


「いや、まだ婿と決まったわけでは……」


「なんなら、この村からいくらでも嫁に迎えてもらってもいいぞ? 第一夫人は娘のソフィアにしておいてくれれば何の問題もない。表向きだけでもな」


「王国はどことやるつもりなんですか?」


「王国からは攻めんじゃろ。王国にはそんな力はない。隣の帝国と魔国じゃな、相手は」


「向こうから攻めてくるのはいつごろと踏んでいるんですか? あの姫様は……」


「来年の春先だそうだ。帝国の動きと魔国の動き、兵隊と魔物、それに経済(物資)の流れが完全に戦時対応とのことじゃった」


「わかりました。わたしは明日から王都へ行きます。情報収集が終えたらここへ戻るかもしれません」


「それは構わぬが……戦時ともなれば難しいじゃろ?」


 おれの転移魔法についてここでカミングアウトしておく。


「もう『大魔法士』とでも呼んだほうがいいのではないか? 転移に無限収納、それだけでも資格十分じゃ」


 おれの能力を誤解してくれているのはありがたい。無限収納あたりは想像できていたのだろう。通販魔法などこの世界の誰が想像できようか……


「それと……酒、味噌、醤油の生産をお願いします」


「承った! われらもぜひに欲しい食材じゃしな」


「エルフの村からは遠征軍はいかほど要請されてますか?」


「2000人の集落だが、合計400人出してほしいと言っておった」


「率いるのはやはり戦士長ですか?」


「うむ、そうなるな」


「その時は影ながら援助は惜しみません。一応戦士長にもその旨お伝えください」


「わかった。特に武器……弓矢については援助要請せざるを得んだろう」


「そこはお任せを…… よろずやキンタの名に懸けて!」


「支払いじゃが…… 」


「ならば明日、もう一度『魔力』をいただければ当面はなんとかなります」


「すまんのお……貧乏な村じゃて……」


 これでさらに4憶確定である。


 どこが貧乏なのかとおれならば声を高らかに叫んでみたい。


 たかが200人で毎日4憶。それが2000人なら毎日40億の収入である。

 年商にして約1.5兆…… 大企業、いや個人事業主なんさね、おれってば……


 まあ、取らぬ狸のなんとかだが、夢は大きくっすよ。


 さあ、明日はいよいよ王都に向けて出発だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る