第12話 エルフ相手に商売!商売! その3

 エルフの皆さんが欲しいものは、武器だけではなかった。


「我らは森の恵みにて生きておるいわば『森の住人』 だが、ここのところ森の様子がおかしくての……まったく食料の確保ができておらんのだ」


 エルフだからと言って『肉類』を食さないかといえばそうではない。


「木の実やら肉やらはわかりますが、主食はなんなのですか?」


 族長に聞いてみると、どうやら独自に栽培している穀物があるらしい。


 ひょっとして……


 おれはその穀物の栽培されている現場と倉庫を見せてもらった。


 集落のさらに奥に広がる『田園風景』……


 おれはすげえ『感動』したんだ…… 思わず涙ぐんだことは内緒だ。


「ん?どうされましたか、婿殿」


 いや、目にゴミが……って、おれはあんたの娘婿じゃねえし。

 隣で赤くなってる娘も娘だろ……


「収穫まであと2か月……ですが、各集落にはもうほとんど『米』がありません。このままでは餓死者すらでるかもしれないのです」


「キンタ様……食料をお持ちではないでしょうか…… 今すぐとは言いません。なんとか10日、いえ半月以内でもかまいません」


「これ米なんですね…… いいでしょう。すぐにでも用意できますよ。ですが、報酬はしっかりいただきます」


「それは! 本当ですか?」


 おれたちの出発はこうしてもう一日延期となってしまったのだ。




「わらわは構わぬ。どうせ王都へは報告にいくだけじゃしの……キンタ殿の旨い食事さえいただければ満足じゃ」


「我らは護衛するのみ。レイティシア様のご意向通りに」



 人一人が一か月暮らすには5キロほどの米があれば十分であろう。


 エルフの集落の総人口は約2000人。ならば二か月分で20トンの米があれば足りる。

 金額にして5キロ1500円の安い米を調達すると、600万円。

 先の200人分の魔力をもう1日分で販売することにした。

 

 またまた大儲けである。600万の経費でさらに4憶ゲット~


 いや、これで2000人分の魔力もらったらいくらになるざんしょ……


 ここはもうこの里に永住してもいいかも…… 別荘は最低でもほしい。


 エルフは長寿だが、おれ自身も膨大な魔力を有するために歳をとらないのだ。エルフ族との長い付き合いというのもちょうどいいかもしれない。


「族長さん」


「お義父さんとお呼びくださっても構いませんが……」


「ええと…… 米があるなら『味噌』とか『醤油』とか『酒』なんて作ってますか?」


「えっと……キンタ殿、それはどういったもので?」


 サンプルに出した商品を試しに舐めたり飲んだりしていただくと絶賛された。


「これらすべてが米から作れると!」


「ええ、そうです。作り方の説明書付きで少々分けていきましょうか?」


「お、お願いします! キンタ殿……あなたはこの里に舞い降りた精霊様なのでは……」


「いえ、ただの人族のよろずやです」


「よろずや……人族のよろずや、恐るべしですな……」


 いえ、おれだけですって……


「もう一つお願いがあります、族長さん」


「はい、なんでも聞きますよ、婿殿」


「せっかく出来たご縁ですし、この地にわたしの家を建てさせていただけませんか? 自宅というよりも『別荘』扱いになるかもですが……」


「そ、それは、素晴らしいことです! 是非! ソフィア……よかったのお……早速婿殿が新婚のマイホームを建ててくださるそうだよ」


「父上…… そんな……恥ずかしい……」


 おいおい、なに勝手に盛り上がってんのさ。


 ま、いいか……放っておこう。


 

 この日は午後から倉庫への米の収納と、味噌500キロ、醤油300リットル、日本酒一升瓶換算で約100本を納入させてもらった。

 米以外はサービスです。儲けすぎはいかんからね。

 消費者への還元は大事です。


 夕方からは家の敷地を決めてもらったのだが、族長の家の隣だったさ。


「婿殿の家です。ここがふさわしいかと……」


 もう何も言うまい。おれももう面倒くさいし。


「では、ここに建てるということで」


「大工の手配をしましょう。完成まではおよそ1か月かかりますが」


「ああ、不要です」


「へ?」


 某通販で『家』まで買える…… もはや何でも有である。


 一瞬で目の前に現れる新築の家…… 見た目はエルフ族の一般的な家なのだが、その内部は現代家屋そのものである。

 傍目からは考えられない10LDK。

 

 エアコン、地下倉庫、鍛冶ルーム、露天風呂付バスルーム、システムキッチン、暖炉、ベッド、大きなリビングルーム、トイレも複数(もちろん洗浄トイレ)…… 


「何も見なかったことに……」


「えっと、わたしがいない間は留守になりますが、緊急避難用にお使いいただいて結構です。族長さん」


 見た目は普通家屋でも、その防御性能はもはやちょっとした『城塞』並みである。


 鑑定で確認したところ、自衛隊の10式戦車の砲弾を跳ね返すとか書かれていたのはぶったまげた。


 茫然自失の族長とその娘は、放って置きませう。


 今夜はこれから歓迎会、送別会を兼ねた『大宴会』だそうだ。


 レッツ・ザ・大宴会!


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