第10話 エルフ相手に商売!商売! その1

 今回訪れたエルフの村は、人口およそ2000人。

 そのうちの約1500人は弓を使う戦士なのだそうだ。

 

 残りの500人は幼い子供たちである。


「よろずや殿…… 売っていただきたいのは『弓』なのだ」


 え? エルフの弓兵となれば当然自分の武器くらい持ってるでしょ?


「いや、エルフといえども性能のよい弓を持っているのは数少ないのじゃ。だからな……戦うには良い弓が大量に必要となる」


 騎士団長たちがこの村の族長を訪ねたのは、おそらく『援軍要請』


 なんらかの王国に迫った敵を排除するために、エルフに助力を交渉しにきたのだとおれは踏んでいる。

 それを裏付けるような族長の発言と、今回の商取引の黙認。

 

 結論はおのずと出るわな。


「もらうものさえもらえればええですよ。こっちも商売ですから」


「そ、そうか…… 試しというか商品サンプルは持ってないか?」


 某通販サイトで見つけた『アーチェリー』用の弓(25000円相当)と見た目普通の『弓』(3000円相当)を早速取り出す。

 ついでにおれの分と『子供向け』のスリングショット(2000円相当)も購入。


 ちなみにおれのはプロ仕様の『クロスボウ』で、レーザーサイト付である。もちろん無限収納からは出していない。


「おお! これは! おい!戦士長と各部隊長を呼んで来い」


 しばらくするとエルフの部隊長以上がぞろぞろとやってくる。半分は女性である。

 いや~……やっぱりエルフは美人揃いですな。


 この中からおれの嫁に来てくれる奇特な方は…… いねえな、多分。


「お呼びですか?族長…… ん? 何!」


「おおお! これは!」


 賛美するための語彙すらなさそうだ。ただただ驚くばかりのエルフたち。


「ち、ちなみに値段はいかほどだろうか、キンタ殿……」


「この高い方は金貨換算で言えば数百枚、安い方でも金貨10枚程度ですかね」


「うむむ…… 数はそろえられんな、とても……」


「お金じゃなくてもいいですけど、族長さん」


「な、何! さ、さては! エルフの女が?」


「いえいえ、そうではありません」


 金で支払い不可の場合の商取引について説明する。


「なんと! われらの1日分の魔力の提供で安い方は買えると…… 高い方は目安で10日分。または10人分か……」


「実際に魔力を提供していただいてその総量で台数を決めさせていただいてもいいですけどね」


「おお!それは助かる。じゃが……いいのかのお? 儲けがでなければ商人としてやってはいけぬだろう?」


「ええ、そこはしっかりと儲けさせていただきますとも」


「ちなみにこっちの商品はなんじゃ?」


「こちらはこうやって石なんかを飛ばせる、子供向けの商品です。子供向けとはいっても大人が使っても当たり所が悪ければ相手を死傷させることは可能ですよ? 技術がほとんどいらないし、材料もその辺の石ころでいけますのでお手頃かと」


「ちょっと使ってみてもいいか?」


「ええ、どうぞ」


 試用してみた結果、通常の弓よりも射程は短いが中距離短距離では子供も使える、かなりの威力であることがわかった。

 対人相手なら十分導入する価値はある。


 一応この村のエルフすべてが、魔力提供することになった。


 鑑定結果は…… 総数約2000人のエルフのMP総量は、な、なんと4000万!

 40億円相当だ。金貨にして4000枚


 ならば……

 

・高級ボウ:100台(金貨10000枚分)

・中級ボウ:2000台(金貨20000枚分)

・スリングショット:500台(金貨500枚分)


「まだ金額的に余裕がありますけどどうします?」


「おお!そ、そうか! ならば!『中級ボウ』を可能な限り頼む」


 追加でさらに中級ボウを1000台。これでやや足が出るがサービスしておこう。


「矢はどうします? そちらでも用意できるのでしょうけど、わたしも商売人です。ここはひとつ、こちらの『矢』をちょいとお試しで使ってみてもらえませんか?」


「おうさ、それならわたしに使わせてくれ」


 戦士長さんが、実際に元々エルフ族が使っている矢とおれが提供した『矢』の性能比較してくれることになった。


 結果は……


・飛翔距離、速度で約50%の向上

・威力はエルフの矢が貫通できない鎧を簡単に貫通


「すさまじいな、これは……」


「部隊長クラスにはこっちの矢を配給しておいた方がいいぞ、族長」


「う、うむ…… キンタ殿……こちらの矢は何本くらい提供可能だろうか?」


 矢は結構安い。もちろんこの世界では破格の性能であることは間違いない。


「1000本位ならサービスしますよ。ですがそれ以上となると弓の数を減らしてもらうしかないですね」


「ならば……1000本だけ頼む」


「族長!」


「なんじゃ! ソフィア、おぬしが出る幕ではないぞ?」


「わたしをこの商人様に買ってもらおう。この矢があれば! この村は……」


「な、なにを言う! 武器を得るために身を売るなど!」


 おっと……意外な展開! 武器を売って代わりにエルフの娘を奴隷に……

 こりゃあ、地獄行きだわ、おれ……


「商人様、わたしをいくらで買ってくれる?」


 ソフィアと呼ばれたエルフの女性……おれにとってはどストライクな理想的なエルフさんでございました。



 さて、エルフとの商取引第2弾でございまするな。


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