第7話 救援には行ってみたが……
水を飲ませてやると、くっころさんはすぐに立ち上がったのだが、空腹には勝てずに再び倒れてしまった。
「は、早く救出に向かわねば!」(ぐ~~~~)
いや、くっころさんや……救出に向かう前に腹ごしらえしないと助けられるものも助けられまいに……
緊急だったので通販で取り急ぎ某カップヌードル、カップ焼きそばを購入して食べさせた。
「な、なんだこれは! う、美味すぎる!」
いえいえ、ただのインスタント食品でんがな。
夢中になって食ってるので放っておくか……
やがて腹が落ち着いたのか、ようやく本題。
「助けていただき感謝する。わたしの名前はミランダ。王国騎士団第一護衛隊の団員だ」
いや~ 面倒ごとは向こうからやってくるのね…… まあ、しょうがない。
「わたしの名前は『キンタ』 行商をしているよろずやです」
「商人?」
「ええ、そうです」
「護衛はいないのか?」
「ええ、ソロで活動しています」
「一人で…… ああ、このような立派な馬車があればそれも可能か……」
つい先日まで馬車無しで荷物しょって行商していたなどとは言わないで置く。
「事情を説明していただけますか? 助けになるかどうかはわかりませんが……」
「あ、ああ……申し訳ない」
聞くところによれば、極秘任務のためにこの林の向こうの『エルフ族』の村へと遠征中にオークの集団に襲われ、戦闘。包囲を偶然抜け出すことができたミランダが救援隊を要請するために街道へと向かっていたがここで力尽きたということらしい。
その極秘任務に向かったという方の『肩書』が妙に気になるおれではあったが、そこはスルーだな。
「とにかく! すぐにでも救援しないと、あの方が…… いや、聞かなかったことにしてくれ」
「……このままこの馬車で向かいますか?それとも街まで救援要請しに向かいますか?どうします?」
「ど、どうしたらいい? キンタ殿!」
いや、おれに聞かれても困る……基本的にはその極秘任務とやらにはおれ関係ないし……秘密が漏れたら殺されるとかっていうのもごめんですわ……
「選択肢はいくつかあります」
1 ここから再度ミランダだけで救援に走る
2 この馬車でひとまず救援に赴く
3 ミランダだけで街へと救援要請に向かう
4 馬車を使い二人で救援要請に向かう
5 どちらかが救援に向かい、片方だけで救援要請に走る
「い、いいのか?」
「ただ働きはしません。それとどのような状況に陥ってもわたしの命の保証がなければ一切の協力は出来かねます」
「金を寄越せと?」
「金でなくても構いません。ただで動くにはリスクが大きすぎると言っているのです」
「王家……いや、困っている人間を助けるのは人として当然ではないのか?」
「すでにあなたを助けています。騎士たる戦闘に特化した方たちが対応できない案件に、ただの1商人が介入してどうにかできるとでも?」
「くっ!……」
「戦闘に巻き込まれようが何しようが、たかが商人であるわたしがその財産である馬車を使ってそれなりに援助しようと言っているのです。ただ働きさせるなどというのが人の道と思えませんがね……」
「す、すまん……だが! それでも! わたしは救援、助けに行かねばならんのだ!」
「それはあなた方の事情というものです。なんの見返りもなく一般市民を巻き込まないでいただきたい」
「それでも! 時間がないのだ! 今から街へ行っても間に合うまい。ならばこの馬車で急ぎ現地での生存者を救うのが最善策なのだ」
「おっしゃることは理解できます」
「ならば!」
「ミランダさん、あなたは何を見返りにわたしに危地へ赴けと?」
「報酬は払う。わたしの名に懸けて必ず!」
「たかが騎士団の一介の団員であるあなたにどんな権限がおありで?」
「くっ! も、もういい! わたし一人で救援に行く! お前はどこへとなり勝手に行け!」
「ちなみにわたしに助けられた恩はどうするおつもりで?」
「だ、黙れ! 騎士をぶ、侮辱するか!ゆ、許さんぞ!」
おお! 逆ギレーぜってやつですね? わかります。
おいおいおれの質問に答えてから出て行ってくれよ…… カップヌードルだってただじゃねえんだからさあ……ミランダさんよお……
ミランダさんが飛び出てから、しばらくの後おれは馬車を一旦収納して彼女を追跡することにした。
救援を手伝って赴くならば『有料』だが、おれが勝手について行く分には勝手にどうぞってやつさあね。
追跡すること1時間ほど。
殺戮現場では、未だにいかにも『王家』の馬車を守る一人の騎士が、満身創痍ながらも頑張っていた。
男を囲むオークの数は約10体ほど……
地形を巧みに利用していたとはいえ、オーク10体相手に見事なもんだ。
すでに倒れているオークは20体以上、戦闘不能または死亡したとみられる騎士は10人といったところか……
「だ、団長!」
団長と呼ばれた男が叫ぶ。
「ミランダ! なぜここに! 救援を呼べと言っただろう!」
はてさてどうしましょうかね…… あの馬車の中にはとっても重要人物がいるんでしょうに……
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