第29話 ケンちゃん、ついに就職す
ぼくの名前は『佐伯健二』
都内の超有名進学校を中退した、今はただの『ニート』予備軍、一歩手前……
だったのだが……天は我を見放さなかった!
そうなのだ! 高校中退のぼくが、見事就職できたのだよ、ふふん!
それも『大学新卒』並みの給与で雇用が決まったのさ!
とまあ、威勢のいい話はここまでだ。
面接してくれた『店長』の肩書をもつ、ユキさんは名前からは想像もつかない中年のおっさんである。
話はしやすい。っていうかはっきり言ってぼくと同類? いや同じ匂いがするんさね。
給与が良ければまあ、多少のブラックは我慢するさ。
で、採用の条件だったんだけど……
なんとまあ、コスプレーヤーに偏見を持たないこととか、コスプレに興味があることとか…… まあぼくにとっては願ったり叶ったりだけどね。
でもなんで、時代遅れの『時計修理職人』の店が、新たな店員を雇えるのかがわからない。
それに秘密厳守っていうのも、怪しい……
絶対に何か秘密があるんだって睨んでるんだけどな。
ってえことで、ぼくは信用を勝ち取るために、ぼくの『オタク』としての全財産を担保に入れることにしたのさ。
そこまですれば、同類ならばわかってくれるはずである。
もちろん『契約書』を交わすことは当然……
今時雇用契約書も交わさないような会社は、それだけでブラック決定なのだ。
あ~……明日からの初出勤が愉しみだなあ……
どんな『秘密』をかいま見ることができるのか!
なんとしても試用期間三か月は、がんばるぞ~! お~!
*****
な、舐めてました……社会人一年生……完敗です!
なんなんすか! あの方たちは!
ひ、非常識にもほどがあります!
初仕事のバスガイド役……
秋葉原でもみくちゃにされて脱出を図ったような場面が何度あったことか……
そんな危なそうな状況でも楽しんでいるよな彼女たちは、どこかおかしいのかもしれませんね。
か、可愛いですよ?そりゃあ…… コスプレーヤーやその道のマニアが泣いて喜びそうなほど完璧なコスプレ……
いや、まさか本物ってことは……ないですよねえ……
だってエルフ嬢と猫耳獣人ですよ? それも想像通りのドストライクなんですよ?
いくら何でもあり得ませんて……
でも……でもですよ……
ああ、あれが本物なら…… 彼女らの住まう世界……異世界に、なんとしても行ってみたいものです!
神様……ぼくの願いが叶うのならば、一生その異世界でこの身を捧げます!
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