第27話 各家族で報告会の模様
深夜の異世界開業時間のこと……
~モロトフ家~
「おまえたちばかり…… 異世界に行ってきたとは……うらやましいぞ……」
「お父様…… それはもうにぎやかで楽しくて美味しくて最高でした!」
「くっ…… このままでは死んでも死に切れんわ…… で? 何かいい商売のネタはあったのか?」
「あっ…… そんなの忘れてた……てへっ!」
「ば、バカ娘!」
「まあまあ、あなた…… まだまだ時間はあるでしょう? 陛下の話では王都が落ち着くまでしばらくはここに退避してるようにとのことなのです。また機会はいくらでも」
「まあ、そうなのだが……わしらが大変な仕事を請け負っているというに、お前らだけ愉しみおって……」
モロトフ家の猫耳当主はなんとしても自分の目で『異世界』を体験したいらしい。
「ユキさんの話では『商店街』というのらしいですが、なんでもほんの小さな寂れた街の一部なのだそうです」
「でもその通りをみただけでも信じられないくらい綺麗だし、食材も商品の数も信じられないくらいたくさんあったよ?」
「あそこに並べられた商品のほんの一部だけでも王都で販売できたなら……一財産築けそうでしたわ」
「そ、そんなにか!」
「ええ……」
「なんとかできないだろうか……」
「ユキさんと相談するしかありませんね」
「そうそう、行き来できるのはユキさんのお店だけだし……」
「ふうむ……」
これからの商売にどうつなげていくか…… 一日中悩むことになるモロトフ家当主であった。
~王家の四人~
もはや、コッコがパルティア王国第一王女であることは周知の事実となってしまった。
それはユキ自身、すでに洞察していた話なので今更おどろくことでもない。
「王妃よ、どうだったのじゃ……」
まだ完全には寝付いていない『第一王子』をあやしながら、王妃は国王の言葉に答える。
「う~ん……わたくしにはなんとも言えませぬ……」
「ん? ああ、そうか…… 王妃は元々王都の様子すら知らぬのだから比較しようがないというわけじゃの…… ココテリアはどうじゃ」
「わたくしも…… 確かに物珍しそうなものは多かったように思います。ですが、商品の多さには驚かされましたが、今ここであれもこれもと検討するには時間が足りませんですわ、お父様」
「そうか……で、街の様子はどうじゃった?」
「遠くまで出かけたわけではないので、これもなんとも言えません。もっと遠くへ行けたなら珍しい風景等に出会えたかもしれませぬが……ただ……」
「ただ?」
「通りの中を見たこともない乗り物で、すいすいと進むご婦人や子供たちの姿をみました」
「ほお……」
コッコが見た乗り物とは『自転車』である。
車が行き来するところではないので『自動車』や『バイク』はさすがに目にすることは出来なかったのである。
それ以外には『想像以上に空気が汚かった』などという抽象的な感想しか報告できなかったのは残念な話だが、それは仕方がないことだろう。
「ふむ…… もう少し様子見じゃな……今度はわしも行けんかのお……」
O157対策に翻弄されている国王も、かなりお疲れ気味のようである。
~騎士団団長カップル~
「そうか…… 武器になりそうなものはなにもなかったか……」
「ええ、表立って武器や防具になりそうなものは何もありませんでした。最もユキさんの話では、そういったものを持っていると『けいさつ』?という人たちに捕まるのだそうです」
「なるほどなあ……警備隊のようなもんか……魔物や山賊もいない平和な世界なのか、そっちの世界は……」
「基本的にはそうらしいですが、戦(いくさ)そのものは無くなっていないとのことです。なので武器とかが全くないわけでもないと……」
「その辺は詳しく聞けなんだか……」
「ええ、言葉を濁しておられました……」
「う~ん……残念だな……ゴブリン程度ならまだしも、ハイオーク以上の敵にも対抗できる手段があればよかったのだが……」
「そのあたりは今後の調査次第ではないでしょうか。それに今回は……」
「ん? 何か見つけてきたのか?」
「はい…… 料理用のものと言っておられました。包丁というものです」
バルデスの婚約者がおもむろに取り出したのは、日本の包丁文化の一端を垣間見ることのできる出刃包丁やら刺身包丁やら果物ナイフ、パン切り包丁まであった。
「おお! これは…… 料理用とはいえこれだけの業物を作れるのだ。きっと剣も期待できそうだな」
「ええ、もう少し気長に調査しましょう。ダーリン! ね、今夜も可愛がっていただけるのかしら……」
「むふふ…… この好きものめ…… 可愛いやつ……」
「例の薬はまだあるのでしょう?バルデス様…… あっ…… もうこんなに……燃えてしまいますわ……」
バイアグ○効果なのか……最近は薬に頼らなくとも正常な働きを見せるようになってきた王国騎士団長なのであった。
隣の部屋とか、他人の家なのだということにももっと気を使って欲しいものである。
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