逆ファーストコンタクト 編
第26話 おれの店舗はカオスです
おれの店の常連たちは、最低限自分たちの大事な家族を避難させてきたのだ、おれの家へ……
じゃあ、その間王都はどうなるって考えたのだが、常連組(男性陣のみ)とモロトフ家当主はおれの店の異世界営業時間は、王都で奮闘している。
万が一のためを考えておれの家へと……ってことらしい。
だが…… 営業時間過ぎればみんな帰るんだろう? って安易に考えていたらそうはならなかったのである。一体全体どうなってるんだろうか…… 基準がわからん……
それにしても部屋は三つしかない。各家族が一つずつの部屋を……というわけにもいかないのである。 うっ……狭いことこの上ない……
実はもう一つ部屋はあるのだが、そこはもはや不良在庫品置き場と化したおれの趣味の部屋なので、ここだけは空けるわけにはいかぬのだ!
四家族とさらにはおれ自身の行き場は? 寝床は? 頭が痛てえよ……
それならば、どこかホテルにでもと考えたのだが…… それはまずいだろ!
日本の常識外の異世界人を大量に放流したらどうなるか…… 絶対にやってはいけない感満載である。
危険物は蓋をしておくに限る……
とりあえず、部屋割りは以下の通りである。
一 モロトフ家(妻、ミッキー) 騎士団長の婚約者
一 王家(王妃、第一王子(一歳児)、コッコ)
一 宰相一家(妻、長女)
大急ぎで商店街の布団屋に頼んで人数分の布団セットを運び込んでもらった。もちろん狭い店舗内にである。寝る時以外は必要ないし、日中は邪魔である。
飯の準備は王妃様を除いた女性陣にお願いし、第一王子と宰相閣下の長女には風呂とトイレの使い方を覚えてもらった。
ああ……呑気な一人暮らしはどこへ行ったのだろうか……
こうして王都のO157が収束するまでのおよそ十日間…… おれの『戦い』をしばらくはお付き合いいただきたい。
~避難生活第一日目~
やれ、トイレがすごい! 風呂がコンパクトで使い安くて最高! 食材が豊富!
と、まあ想像通りの話なのだが、一番はなんといっても炬燵だろう。
悪魔の暖房兵器?と おれが言った通りにそこから抜け出せない異世界人多数発生……である。
それはいいのだが、ずっと部屋に閉じ込めておくこともさすがにどうにかしたくなってきたので、ご近所の商店街ツアーにお出かけすることになった。
いつもの常連組以外の女子供だけなので、エルフだの獣人だのと言っても、コスプレ好きの『親戚』が、年末年始の時期に遊びに来たとでも言っておけばさほど問題はない。
はず……
異世界人とは言っても、見た目とその知識に違いがあるだけで、使っている言語は『日本語』である。なぜなのか……
もちろん、おれの知ったことではない。
なので、それぞれにお小遣いと、それなりに貨幣価値を簡単にレクチャーしてから商店街探索ツアーの始まり始まり……
「おばちゃん! それ何? おさかな?」
「おお、きれいなお嬢ちゃんだねえ……見たことないのかえ? お正月用のしゃけだよ。こっちは数の子、とか色々さあね。よかったら試食していっておくれ」
「お母さん! あっちにあるのはなあに?」
「ユキさん、あれはなんですか?」
正月用のしめ縄……言ってもわからんだろうな……宰相の奥様……
いくら寂れた商店街と言えども、そこはさすがに大晦日が近い年の瀬である。
小さな大通りが大勢の人々でにぎわっている。
各店で出される数々の試食品やらお茶、コーヒーなどなど……
今まで見たことのない食品や商品に驚きの連続。
トラブルがないように冷や汗たらしながら同行するおれ…… 誰か褒めてほしいもんだわ……
各家族、親子が気に入った物珍しきものを買い、お金が足りなさそうなときはおれが出張ってやる。
案外現代日本の生活の一角に簡単に溶け込んでいる異世界人である。
子供たちが駄菓子屋に嵌り、大人たちは服や化粧品、日用品雑貨店に嵌り、買い食いをしては味覚を楽しみ、そして大道芸をやってるお兄さんにチップをあげたり……
冬の温かい一日を楽しむ異世界人……
騎士団長がいないせいで、なぜかおれの側から離れないバルデスの婚約者。
「バルデス様も来れたらよかったのに……」
まことに残念そうである。
だが、あんな大男の、それもバリバリのアーマープレートのおっさん連れてたら銃刀法違反でとっ捕まるわ……
こうして、皆疲れた疲れたとは言いながらも会心の笑顔で『ユキの時計修理店』へと帰宅するのであった。
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