第21話 騎士団長の討伐遠征始末記

 『夜食』と言ったら何を上げるか……


 決して少なくない日本人が『ラーメン』もしくは『おにぎり』と答えるのではないだろうか。


 ここのところ贅沢な夜食が続いたので、ここらあたりできっちりと夜食らしい夜食に起動修正しておこう。


 というわけで、今夜の夜食は……


一 さんかくおにぎりに『味噌』を塗って焼いた『焼き味噌おにぎり』と醤油を塗った『醤油味の焼きおにぎり』の二種類


一 自家製茄子漬


 ふた昔くらい前ならば、冬に茄子漬は食えなかっただろう。


 だが今の時代なら、結構季節はずれでもそれなりの野菜は手に入る。

 旬を外せばそれなりの味しかしないかもしれないが、夜食のおにぎりには『茄子漬』は外せない、おれなりのこだわりがあるのだ。


 それはなぜかというと、おれの親父が定番で作ってくれた夜食が味噌おにぎりと茄子漬だったからだ。


 実際にはもっといろんなメニューがあったはずなのだが、おれの印象に最も強く残っていたのがこれだったのだからしょうがない。




「ユキさん! 美味い! 美味いよ、これ! ……なんだかこれ食べてると泣けてくるわ…… ああ、生きて帰って来れたなって実感できるよ! う、うめえよ!」


 皆の前で、鼻水垂らしながら恥ずかしげもなくオンオン泣いてる三十過ぎたおっさんの姿に、ややドン引きな常連客とおれなんだが……


 ここでは肩書は基本的に無視することになっているので、まあ、構わんといっちゃあ構わんのだけど……


 騎士団長の話をようやく落ち着いて聞くことが出来たのは、いつものお開きの時間まであと十五分というところだった。


 山賊は早めに片づけることができたものの、その夜襲ってきた魔物の集団は、数も戦力も予想以上だったため、急きょ防衛柵は放棄し、全員で教会に立て籠もったらしい。


 万が一を考えて、村人たちは戦えない者は全員地下室へと非難させ、騎士団唯一の魔法使い数人は魔力が尽きるまで教会の屋根の上から遠距離攻撃。


 教会の門付近のバリケードを挟んで魔物と騎士団の一進一退の攻防は、明け方まで続いたらしい。


 とにかく広範囲に囲まれることを避け、攻防の接点をまさに点でカバーできたことが結局は、数で押しまくる魔物側の有利を跳ね返すことにとつながったとのこと。


 騎士団側も消耗はしたものの、幸い死亡者はおらず魔物側だけが最後にはハイオークだけとなってしまったのだという。


 そしてついに戦える騎士団員全員とハイオークの戦いで、騎士団長バルデスの一撃が決まりようやく任務を終えたと……


 聞いているだけなら、ああ、結構簡単だったんだね? で、終わるのだがそうとうやばかったらしい。


 ハイオークの一撃は、強力で最後まで持ちこたえたのは騎士団長だけ…… それも強化してあった防具と研いでもらった剣がなければ死んでいたと、この大男に言わしめるほどに強かったんだとか……


 う~ん…… 間違ってもこの異世界で戦闘に巻き込まれたくはないな…… ましてや相手が魔物ならばなおさらだ……


 今夜はさっさと帰って寝ろよと思ったが、帰還祝いはこっそり渡しておいたのでお試しあれ……(バイアグ○の話は既出:十七話)









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る