第14話 一難去ってまた一難、バルデス騎士団長奮闘す!

 バルデス騎士団長以下、騎士団の面々は与えられた己の職務をきっちりとこなし、山賊集団を一人また一人と仕留めていく。


 見張りの六人は早々にご退場いただき、村長宅で慰み者にされていた女性たちは無事救出、そして快楽にだらけ切っていた山賊の首領をはじめとした幹部は捕縛、そして教会を包囲していたならず者たちはほどなく降伏した。


 だが…… 騎士団の真の敵は彼らではなかったのである。


「ハイオークにゴブリンの集団だと! おまけにゴブリンメイジまでいたというのか?」


「はい……一度は撃退できたのですが……」


 辺境の村が、王都への救援要請を出した本当の理由は、魔物の襲撃があったからなのだそうだ。


 一度は撃退出来た理由…… ちょうど運よくハンター協会に属する冒険者(ハンター)のパーティが滞在していた故である。


 だが、そのハンターパーティはその一度の襲撃により全滅、その後今回の山賊の攻撃を跳ね返すだけの戦力はこの村にはなかったのだ。


 なんとか逃げのびた村人は、教会に立て籠もり救援を待っていたらしい。逃げ遅れて捕まった村の男性は殺され、女性は慰み者……


「これは……我らだけでは荷が重いのでは? 団長」


「村長! その魔物の集団の数、おおよその数はわかるか?」


「はい…… 確かなことは言えませんが、ハイオークは一体、オークがおそらく五、六体。それにゴブリンメイジは火属性のものが五体。普通のゴブリンは百を超えているかと……」


「う~む……微妙な数だな……」


 ゴブリン百体だけならばさほど問題はない。現有戦力だけでも戦える。


 だが問題は火属性魔法を使うゴブリンメイジとオーク、それにハイオークである。


「よし…… とりあえずは村人とおれたち全員で村の周囲の柵の補強と修理を急ごう。やつらがいつ戻ってくるかわからん」


「了解です」


「我らももちろん手伝わせてください」


 バルデスの部下と村長以下の村人も、緊張感あふれる表情で散開していく。


 山賊にいいようにされていた十数人の女性たちは、目下別家屋にて休んでもらっている。

 今回の事件が解決した後、彼女らの処遇は村人に任せるしかない。

 

 そこまで面倒を見てやれるほどには騎士団も余裕はないのである。


「副官! 持ってきた食料は可能な限り村人たちに分けてやれ。斥候隊!二人はすぐに王都へ行って現状の報告と増援要請を頼む」


 それ以外はもちろん村の防衛任務に就くことになる。


「ユキ殿に防具を強化してもらっておいて正解だったな…… どうせなら全員の研ぎも間に合っていればよかったのだが……」


「長い一日になりそうですね、団長……」


 いつの間にか夜が明け、予想される夜間の襲撃に備えての時間的余裕はわずかばかりである。


「補修を急ごう! 今夜あたりは危なそうだ……」


 まだまだ王都への帰還を果たせそうにはない、バルデス王国騎士団であった。





~王宮内、国王執務室にて~


「エドモンド…… お主また我の知らぬものを食してきたというのか!」


「は、はい…… 昨夜は『そば』なるものをいただきました。それはもう! トッピングとやらが極上でして…… ああ…… エビ天…… また食べたい!」


「が~! 許さん! そこになおれええええ~! たたっきってやる!」


「ひ、ひえ~! お許しください! 陛下!」


 結局エドモンド宰相が許されたのは、ユキの店でお土産にと渡された『ウイスキー』の小瓶をしぶしぶ献上したからであった。



「これはうまい! 美味い酒じゃ! エドモンド、早めに会談の段取りを頼むぞ! むふふふ……」


 にやけた顔でウィスキーをたしなむ国王に、何も言えないエドモンド宰相……


「あ、あの……国王陛下……私にも一口だけでも……」


「ならん! お主はさんざんいい物を食してきたのであろう! これはのお、わし一人で楽しませてもらう」


「そ、そんな……」


「ん? 何か文句でもあるのか? 宰相」


「い、いえ……ありませぬ……」


 今夜も今夜とて、美味いもの食ってきてやんぜ~! と心の奥底で叫ぶ宰相であった。



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