第12話 問屋との打ち合わせ & 防具の補強
「いや~、ユキさん…… こんな注文の見積もり、本当にもらっていいんですか?」
日中は異世界にはいないおれは今、懇意にしている問屋との打ち合わせ中である。
今日のメインは、直径三メートルから五メートルに及ぶ巨大機械式時計の見積もりの件である。
「ええ、お願いします。クライアントのことについてはお話しできませんが、確かな注文ですよ」
「そうですかあ! 良かった~! 久々の業界の大型受注案件です。製造元も大喜びですよ。ぜひとも成約を期待していますわ」
ちなみに今回の案件での王国側への見積もり金額は、大型時計一基で金貨百枚、四基で合計四百枚(四千万円相当)で、その他に設置や技術指導料、当面のメンテナンス代含めてほぼ一億に上る。
「それと置時計、目覚まし時計、腕時計(紳士用、婦人用、子供用)の大量発注もお願いすることになりますが、大丈夫ですかね」
「もう、ユキさんは業界の救世主っすね…… 今日から足を向けて眠れませんわ」
「ははは…… 今後ともよろしくお願いしますね」
支払いは当月締めの翌月払なのでなんの問題もない。むしろ金は有り余ってる状態だ。
在庫が一気にさばけているし、すべて金貨でのニコニコ現金払いなのだ。
昼間金貨を現金に交換するだけの簡単なお仕事です。
時計台用の大型時計が実際に発注されても、納品までには一か月かかるはずだ。
今すぐにどうこうはないが、あの時間帯以外におれ自身があの異世界に取り残されたらどうなるかはいずれ近いうちに確かめねばなるまい。
さてと……問屋さんとの打ち合わせも終わったし、頼まれていた防具の補強もやるかあ!
バルデス騎士団長がおれに預けていった防具は、どう見ても標準的なプレートアーマーである。それと騎士用の盾。
もちろんどちらも金属と木材を併用したものなのだが、はっきり言って防御力は眉唾ものである。
それは、現代の地球でのレベルで考えての話ではあるが、いくら何でもこの防御力じゃあ、あまり役に立たんでしょうって感じだ。
そこでおれは、プレートアーマーと金属製盾の中に『ケプラー繊維』を仕込むことを考えたのだ。
なんでケプラー繊維をお前が持ってるんだって話だが、おれ自身は立派なサバイバルゲームヲタクで、金に余裕のある時に大量に買っておいたのがケプラー繊維なのだ。
ケプラー繊維は鋼鉄の約五倍の強度を持ち、対刃能力、対火、対電気系、対衝撃に強いとされている防弾チョッキ等にも採用されている物である。
盾の表面を網の目状のケプラー繊維で覆い、さらにその上を薄いチタンで補強した盾……
う~ん…… はっきりいってあの異世界では最強の盾になるかもなあ。
さらには同じようにプレートアーマーの重要部分にも同じように補強を加えておく。
こちらは既存のアーマーの内側にケプラー繊維を貼り付けさらに内側をチタン合金でサンドイッチ構造にしてみた。
チタン合金なんてどこで手にいれたかって?
趣味で買ったチタン製ロードレーサーが壊れたので趣味で板金にしてもらったのさ、てへ……
これで一応様子を見てもらおう。
具合が良ければまた注文があるだろうけど、その時は正式にケプラー繊維とチタンの薄板は発注かけるしかない。
問題は値段だわな……
パルティア王国というか、あの異世界にはないケプラー繊維とチタン合金…… 一体いくらの値がつくだろうか……
翌日の深夜、いつものように訪れた騎士団長に完成した防具を渡す。
「とりあえず試しで使ってみてよさそうならば代金お願いします」
「わかった、ユキ殿。早速明日からの討伐遠征に使わせてもらおう。命を長らえることが出来たなら……」
どこの誰と戦うのだろうか…… 討伐ということは結構強い獣と戦うんだろうなバルデス騎士団長さん。
手付金を金貨十枚ももらえたので、おれとしてはすでに黒字です。ありがたや、ありがたや! うひょひょひょ~
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