第10話 大型販売契約、来た~!……かな?

~王宮、深夜……国王と宰相の会話~


「余の手紙を渡してきてくれたであろうな、エドモンド……」


「はい、明日の同じ時間に返答いただけるようお願いしてまいりました」


「で? どのような男であった? その『トケイシュウリテン』の店主とやらは……」


「ええ、ごく普通の中年男性という感じでした。おそらくは一般市民となんら変わりはないかと……」


「危険性は薄いということじゃな」


「そのような雰囲気はまったく感じられませんでした。むしろ人の良さだけが感じられるような……およそ争い事からは無縁といった風情です」


「ふむ…… ならば、向こうが了解してくれるならばここへ招いても良いかもしれぬな……」


「いえ、陛下……それは難しいかもしれませぬ。あの店の営業時間があれだけ短いには訳がありそうです。時間外に彼を引っ張り出すのは無理かと……今のところはですが」


「そうか……ならばこちらから出向くしかないかな……」


「ん! 陛下自らですか?」


「うむ…… 王女についていけば問題なかろう。あれもいっぱしの戦闘力は持っておるでな」


「確かに…… 王女様以上の護衛はいませんな。それに騎士団長もおられましたし……」


「な、なに! バルデス騎士団長もおったのか!」


「は、はい……いつの間にかあの店の常連になっていたようです。わたしも夜食をご相伴させていただきましたが、あれは美味かったですなあ……」


「エドモンド…… 余は必ず参るぞ! その店に! お前らだけ……許せん!」



「はっ! も、申し訳ありません、陛下…… 今夜、その店主にいただきました『お土産』にてご勘弁のほどを……」


 冷や汗たらたらな宰相エドモンドであった。


 せっかく一人でちびちび飲もうと思っていた『スパークリングワイン』…… 国王に献上してしまった後悔の念が、一晩中エドモンドを悩ますことになったこと……本人以外は誰も知らない。



*****



 はてさて、手紙の内容は何ぞや? と、あらかた片づけの終わったおれは、ソファに座って手紙を開封してみた。


「やけに丁寧に封がされてるんだが……」


 手紙の内容におれは愕然としたことは言うまでもない。


 王家からの相談……それも国王陛下直々のお言葉である。




 内容はというと、


一 『時計』というものをこの国に広めることと、時間という概念をこの国に広めるための協力要請


一 そのための最善と思われる方法の検討とその実現に当たって必要と思われること一切合切の依頼


一 国としての国家事業となるであろう本件に対しての契約の締結


一 報酬については基本的に被依頼主からの請求金額に準ずる(詳細等については要相談)



 ほっほ~! 要は時間という概念と『時計』を広げるために協力せえとな…… それに報酬は思いのままであると!


 こりゃあ、問屋さん経由でいっちょう大きな仕事を依頼せねばならんかもなあ……



 例え異世界の話とはいえ、おれにとっては初の大型受注になるかもねえ……ふふふ……


 まあ、とりあえずは明日の夜、ってかもう今夜だが…… エドモンドさんの話を聞いてからかな。


 さて、今夜の夜食は何にしようか……


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