第13話 突然の変わった訪問
退院して一週間が経った。交通事故のケガは治ったが、入院が少し長引いたこともあり仕事を辞めた私が母の代わりに食事、洗濯など家事をするようになった。弟は相変わらず寝たり起きたりしていた。
アパートのドアをノックする音がして、母が仕事から帰ったのかとドアを開けると二人の男が立っていた。
「山本さんのお宅ですか」
「はい」
突然のことで驚きながら私は答えた。
「お父様のことで、お話しがありまして」
「警視庁の田口です。こちらは勝田」
男たちは交互に言いながら、遠慮もなく部屋に入ろうとする。
「えっ、ちょっと待って下さい」
私の制止も聞かず二人は部屋に入りドアを閉めた。
「薰さん、三年前の件は、御存知ですね」
男は断定的に言う。
「はい。父の・・・」
三年前の夏、父は突然、公園の老木にロープを括り付けてぶら下がり自殺をしていた。私がまだ高校生の頃のことだ。男は書類を出して私に見せて読み上げた。令状のようだったが、なにが何だか分からず混乱してほとんど聞き取れなかった。しかし法的に適正な手続きの捜査だということは分かった。
「お母さんは、まだお仕事ですか? 帰宅はまだですか? 今日は帰られますよね」
矢継ぎ早に男が尋ねる。
「はい、もうすぐ帰ると思います」
まだ理解できない私はそう答えた。
「ただいま」
いつもどおりに母は帰宅しドアを開けた。二人の男が咄嗟にふり返る。母はアパートの前に停まっている警察の車を見て、すべて心得ていたようだった。
「警察の方ですか・・・」
「山本達彦さんは、あなたのご主人でしたよね? あなたが自殺に見せかけ殺害した。後は警察で伺います。お子さんたちも同行お願いします」
母は何も言わず男たちに従いアパートの階段を下りた。母と私と弟は二台の車に分乗し警察署へと向った。
(つづく)
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