第4話 新たな土地への準備

教会に戻ってシスターに聞いてみると、明日の早朝に出発するから準備しておきない。と言われ、ふと一つの疑問が湧いてきた。

“もしかしてここの教会では修行は出来ないのでは…。それに、分かったことがひとつある。やっぱり思いは違くても剣士になりたい人はいるのだと言うこと。”

そうなると、分からない土地に行くことになるということか。不安ではあるがサヤカのを助けるためにはそんことも頑張らなくてはならないな。

気づけば夕日も落ちて肌寒い夜になっていた。

“今夜は、いつもより早く寝ないといけないな。朝早くから動くとの事だったし、それにケントに起こしもらうのも申し訳ないしな。”

今日の夜ご飯は、ビーフシチューだ。みんな食堂に集まって配膳の準備をしていると明日からここをしばらくの間離れるのか…。考えて事をしているとケントが

「今日は、いっぱいご飯食べて明日いいスタートをきれるようにしようぜ」

「そうだな」

少しばかし不安がなくなった。

熱々のビーフシチューを美味しそうに平らげ、おかわりをした。それに続くようにケントもした。二人はいつも勝負をしている。ご飯を何杯食べれるかの。周りの人たちもどっちが多く食べれるのかとても興味がある。ケントとユウキは、見た感じ同じ体格だ。


翌朝。当然ではあるが、ユウキはごく普通の男子高校生であって昔の武将では無いので、剣の使い方なんて知る由もない。しかし、現代はVR<バーチャル・リアリティ>が流行っており見様見真似でやってみた事はある。ホラーゲームからサバイバルゲームまで多種多様に。今からやろうとしていることは、遊びではない。それはわかっている。遊びなら、幾ら死んでも構わないだろうが一度すら死んではならない。ユウキは、

“俺が死んだとしても、サヤカだけは助けなければ…。”

色々と考えているうちに、迎えの馬車が来た。2頭の馬がパッと見て見える。どうやら、これに乗って修行場所に向かうのか?ケントが珍しく7時になっても起きていなかったため起こしに行った。

「おーい。修行に行くんだろ。荷物をまとめて出発するぞー」

「むにゃむにゃ」

「よっぽど、いい夢を見ているのか??

だが、時間が無いから力強くだけどしょうがない…。こしょこしょだー。」

「うわぁーっ!ごめんなさいごめんなさい。起きますから」

「早くしろよー」

「おーす」

しばらくすると、ケントも出てきてガイドの説明が始まった。

「今から、約1日ほどで都市協会に

着きます」ガイドさんが教えてくれた。護衛のために、剣士も付いて来てくれるとのこと。剣士は二人いて一人は優しい人のようでもう一人は厳つくて怖そうだ。

「短い期間ではあるけど君たちの護衛をさせてもらう。アナンシだ、よろしく。それともう一人のやつはマックスだ。」


これから、楽しくなりそうだ!!






アスワンを出てどのくらいの時間が経っただろうか?空を見渡せばカンカンと陽が照っている。日本では、まず考えられない気温だ。馬車に乗っているだけなのに汗が絶えず垂れてくる。それもそのはず、ここの気温は40℃近い気温なんてまずまず体感したことがない。ましてや、ユウキが住んでいたのは温帯湿潤気候に属するところであってここは砂漠気候だ。朝と夜との気温の差がとても激しい。

「アナンシさんいまって、何処に向かっているのですか??」

「いまは、ギザっていう大都市にある大きな教会がある。そこには君たちのように剣士を目指す人たちが集まるんだよ。男女合わせてだいたい500人くらいいるかな」

「そんなにいるんですか!?」

「うむ。色んな理由をもって剣士になる人は結構いるよ」

「ライバルが多そうですね。心配だ…。」

「そう心配するでない。直ぐに慣れるよ。」


前方見てください!ガイドさんが口元に手をやって大きな声でいう。

「何事だ!」

声を張り上げ、顔を顰める。それまでゆったりとしていたアナンシとマックスが立ち上がり、緩い空気が一瞬にして張り詰めた空気になった。

ユウキは、何が起きたのかと気になる。一方のケントは馬車に揺られながら気持ちよさそうに眠っている。

「どうかしたのですか?」

「分からない。だから状況を確かめてくる!ガイドさんすまないが、止まれるところがあるならそこで少し休んでおいてくれ。」

「分かりました。では少し行った先に洞窟があるのでそこに待機しておきます。」

「わかった。また後で合流しよう。」

「俺も加勢するぜ」

あまり喋らないマックスが喋った。

そう言うと、2人は動いている馬車から飛び降りた。

「何が見える?」

双眼鏡を持つマックスが覗いてみる。

「これは、厄介だ…。ハイエナの群れがこっちに来る!」

「それは面倒臭いな。それにしてもなぜこの時期に?」

「そんなこと考えたってしょうがねーよ」

「それもそうだな。まずは、退治してやるか。」

即座に数を数える。今見えるだけでも1、2、3、4…匹か。上等じゃねーか。

「よしなら、決めた俺とマックスでどっちが多く狩れるか勝負だ。」

「望むところだ!」チリチリの髪の毛を揺らしながら荒野を駆ける。

馬車のなかから、2人の光景を目にする。マックスさんって寝ていてあまり喋らないっていうイメージがあったけどアナンシさんと連携を取っていてギャップがある。正直馬車のなかからは、黄砂が発生していて状況がわからない。

腰に身に付けていた、アナンシは剣を出して向かってくるハイエナに立ち向かい1度攻撃をする。が、その攻撃はカスっただけだった。マックスも、剣を出すがマックスの場合は剣が変形して弓に変わった。オレンジ色の髪をした彼が軽傷しかダメージを与えられなかったからマックスが弓矢でハイエナを射抜く。それも、弓矢は2体のハイエナの身体を貫通させた。

「あー、俺の獲物!」

「ふつうに攻撃ミスってたじゃん。」

「一体くらいお前に譲るけど、後は全部俺のものだからな」

「はいはい、なら援護するよ」

そんな言葉を交わしながらあっという間にハイエナを殲滅した。雑談をしながら荒野を駆け回っていたため周りがあまり見えた。突如、マックスの後ろから黒いハイエナが現れた。油断していたマックスは咄嗟に判断することが出来なかった。少しの油断で腕に噛み付いてきた。

「お前はもう時期死ぬ。」

「何が言いたい。」

「今噛んだところの毒は、猛毒だ。」

「ここは、何処だ。いまいるところが街ならまだ希望はあったかもしれないが残念だな!」ハイエナが大口を開けて笑う。

「マックスに何してくれんだよ!

うぉぉぉ!!クレセントムーン。」

首から斜めに刀を入れる。すぱーん。竹を切るかのように簡単に切れた。

首から顔と胴体の2つの部分に分かれた。

「これで終わったと思うなよ…」

そう言い残して、倒れた。

「マックスお前大丈夫か?」

マックスの元に駆け寄る。

「気にするな。大したことねぇーよ、こんな傷。」

「そんな馬鹿なことあるよ。重症だろ!とりあえずケントとユウキの居る場所に行こう」


「すまない。遅くなったが、3人とも怪我はないかい?」

アナンシだけが、洞窟のなかに入って三人の様子を伺う。マックスはと言うと洞窟の外にある気の近くで楽な体勢で寝ている。

「はい、特に大きな問題はないのですがケントが擦り傷を…。お二人は大丈夫ですか?」


アナンシとマックスが交戦するなか…

ケントとユウキは、馬車のなかで待機をしている。出発したときの勢いのある様子とは一変していた。ケントは、街から出たことがなくユウキも同じだ。馬車に乗って『さぁこれからだ』いきなりのハプニング。更に言うと、馬車の後ろをなにかが迫り来る。それは…。目を細めて凝視するとアナンシさんとマックスさんのところに居たと思っていたハイエナ?!丁度、洞窟のところに着いた。

「ちょっと、行ってきます」

「ど、どうしたの?!」

「ハイエナがスグそこまで来ているので」

馬車から降りて教会から持ってきた竹刀を使ってハイエナに勝負を挑む。攻撃されないように、ある程度の間隔を取って勝負をしないと。急所を狙って、戦わなければこの武器では到底倒すのは厳しいだろうけどせめて時間稼ぎになればな。

ハイエナは全くこっちに好意を持たない。

このままでは、ケントとガイドさんのところに行ってしまう。

目を瞑ったケントが、

『くらえ、ファイアーボール!』

いつものケントなのか?!何処と無く、いつもと雰囲気が違う。その赤いボールはハイエナ目掛けて放たれた。

ばぅぅ…。ハイエナは弱まっていく。

なんだ今のは?疑問ばかりが頭を埋め尽くす。教会にいたときの、ケントとは別人のような気がしてならない。これは後で聞いてみよう。本人でもちゃんと分かっているのだろうか?


「こっちは、マックスが猛毒を喰らった。それにケントも怪我したのか…。少し経ったら、出発しよう」







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