第37話 魂消祭 予選

 強い雨が降る。風は傘を弾き地面を跳ねる雨は足を濡らす。こと岳公園。標高451mから見下ろす海に雷柱が沈み、雷光は頬を照らす。

 雷雨の夜に長崎中の神々が船雲や牛車に乗って集まる。

 審査員は『魂消祭実行委員会』から選出された十三柱の神々。

 世話役は隠蔽班、治癒班、警備班は七夜河町と酒衣(さかえ)町の双方から集められる。

 七夜河の警備班の中に三島段、水織さくや、雷静知客の姿がある。

 桜尋須多羅の警備には古鷺こさぎ端木たんぼく世聞せきアンヤ、葉島はしま時生じしゅう、黒国業太。

 青の陣営。桜尋須多羅の選手はー

 

 近藤英助。

 不破たまき(ビー玉)。

 早見小百合(チイコ)。

 丹羽・ダヴィッド・京吾。

 

 赤の陣営、笠取姫の選手はー

 車屋くるまや臨馬りんば。顔に刺青、首から下は骨が露わになり隠そうともしていない。低身長の童顔野盗。

 川合かわい清成きよなり

 黒い骸骨に首から下はマフラーで隠され、羽織りに猟銃を持っている。

 さと日五郎ひごろう。フォーマルなスーツにハット姿。他の二人とは違い人間の姿を保った二十代後半くらいの男性、職業は医師。

 

 そして生贄は金原剛。高校生の前科者。

 異能は金剛肢こんごうし火生かしょう、異能を二つ持つ生贄は珍しい。

 

 これが予選の顔合わせ。

 

 場所はこと岳入り口前の国道を沿う杉置(すぎおき)トンネル。

 夜でも車通りは少なくは無い。

 

 拘束具に巻かれて現れた金原剛は数名の妖怪に囲まれて現れた。

 アスファルトの上に丁寧に畳を敷かれたその上で彼はあらゆる罵倒を周囲に浴びせる。

 見物する神々は、その不様な暴言に扇の下の顔をしかめる。

 桜尋家家臣、今城いましろ夏天かてんは槍を振るい拘束を解く。

 そして大音声だいおんじょうで雷天に叫ぶ。

 

「それでは魂消祭、予選。いざ尋常に勝負!」

 

 それは雷が地から天に昇るようだった。

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