第35話 ゲームは一日一時間

 あ?今回は俺が主役か?

 そういうのもありになったのか、この話は。

 ああ、俺は神様やってるよ。

 困ったら桜尋神社に来て絵馬にお願い事を書いてくれよな!

 住所を書いてくれないと探すのが大変だからそこは本当に頼むぜ。

 桜尋 須多羅、桜尋神社のおやしろ様。

 桜尋様って呼ばれてる。

 七夜河の産土神をやってるよ。

 元は武神で桜尋本家の棟梁だった。

 官位は参議までやった、今は隠居して彼杵守そのぎのかみという取って付けたみたいな呼ばれ方をしてる。

 趣味はゲームとアニメ鑑賞。和歌に漫画もラノベも好きだ。書画は嗜み程度、ペンタブでも描くぞ。武芸も好きだけど俺が大ぴらにやると周辺諸国が警戒するので社内でやってる。

 今、魂消祭の予選前でちょっとバタバタしてるから、梅雨が上がったら参拝してくれ。

 妖怪が七夜河を狙ってきてるから、とばっちり受けるのは勘弁だろう?

 魂消祭が終わる頃には静かになるよ。


 ああ、悪霊や妖怪達がこの町を襲ってる話をしておくか。

 ズバリ、狙いは俺の首だ。

 この土地も欲しいだろうけどそれはまた別の話。

 昔から人質に取られる事が多い神生じんせいを歩んできたからな。

 もう珍しくも何ともない。

 魂消祭の予選を狙って仕掛けて来るのも予想済み。

 前科者の金原剛を生贄に設定したのも裏がある。

 全部、泳がせておく。

 うちの選手の四人を今城と業太に徹底的に鍛えてるのも、あいつらが消えない為。

 

 霊魂がダメージを受けて、死者が死んで霊魂が維持出来なくなっても、閻魔庁が欠片を捕捉してくれれば運が良い方で、地獄にも行けない虚空に消える魂は惨めなものだ。

 居場所が無い。霊魂が雲散霧消してしまうと、いつ霊魂として生まれるか解らない。

 完全なロスト。だがロストから万物は生まれる。

 根元は一緒だから、全ては同一で出たり入ったりするだけなんだけど、事実が寂しいものだとはいえ何とも侘しい物じゃないか。

 もっとゆとりが欲しいよな。

 いつかは俺も行く場所だけど。

 ああ、そんな話はどうでもいい?

 

 じゃこれだ。

 雷静和尚が悪霊を捕まえて拷問しているらしい。

 写経一日十枚だって。

 エグいよ、霊には拷問だ。

 本来、有難いんだけどな。

「空」とか、わかんねぇだろ…可哀想に。

 

 でも、吐かない悪霊もアレだよ。

 後にいる奴に人質取られてるんだろうな。

 可哀想に。

 せめて、半分の五枚にしとかないと下手すりゃ成仏するからな。

 雷静和尚にとっちゃ、どっちでもいいんだろうけど。

 

 そろそろ予選を始めるよ。

 雷雨の夜は明後日だ。

 正直、普通に終わらないと思ってる。

 

 笠取姫陣営の霊達は強敵だから勝てないな。

 この昨日、笠取姫と面談して対戦相手を見た感じだと三人中、全員が五十年オーバーの古参怨霊。

 一人は江戸時代からの野盗。

 一人は明治時代のマタギ。

 一人は大正の医師。

 古い霊だけあって自分の生前の姿を保てているのは医師くらいだが医師の男もスーツの下はどうなっているか解らない。

 勝てなくても思い出は残るから英助も満足するだろう。

 笠取姫との面談の結果、さくやを襲ってきた妖怪と七夜河の結界を弄っている奴らは笠取姫陣営とは無関係な様だ。

 同じ県内の神同士、魂消祭がきっかけで関係が拗れるのは避けたいところだしな。

 笠取姫との関係を拗らせたい勢力がいると考えていた方が良さそうだ。

 

 四天王を呼んどこう。いや、勝手に来るなアイツら…。

 

 仮にこっちが魂消祭の本戦に上がっても、霊とはいえ化け物揃い。

 優勝経験のある強豪達の中には偉人も多数混じっている。

 土方歳三とか岡田以蔵とか森長可とか、死後も暴れ周っている。

 地獄に堕ちなかったのは何故なんだ?

 早く成仏するなり、生まれ変わるなりすればいいのにな。

 戦闘狂なら修羅道に生まれ変わればいいのにな。

 まぁ、それもどうでもいい話か。

 さっさと終わらせる。

 無事に負けてくれればいいんだけどな。

 業太から雑務手伝わされるし…。

 忙しくなってきた。ちょっと愚痴ったら怒られて…

「魂消祭が終わるまで、ゲームは一日一時間」だって…。

 俺が隠れてゲームしてる事がバレない様に、段とあちこち見廻らせよう。

 

 ああ、こんな感じだよ。

 帰るのか?そっか…。

 

 何かあったら、またおいで。

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