第27話 這い寄る手 2

 化け物達は騒めく。俺から距離を取る。

 

「まて、逃げるな!ここで!皆が逃げられては、かなわん。一人だけ伝令に行け、お前だ、行け!」

 

 化け物は一体を指差し、走らせた。

 

「小僧、動くなよ」

 

 ああ、流れが変わっている。

 立場が逆転している。

 身体中が光っている。爽快感が流れている。

 何の色か解らない、青にも赤にも黄色にも紫色にも揺らめく煙のみてぇな光が鼓動の様に弾けて消える。

 光る煙の花火のみてぇだ。

 周りの化け物達の汚い顔に焦りと恐怖が浮き上がる。

 身体は充実している。

 心は落ち着いている。

 多分だが、今の俺なら何でも出来そうだ。

 この光の正体を聞き出すまでは、従っているフリをした方が良さそうだ。

 

「どうする?このまま小僧を起こしたまま帰したら計画は破綻するぞ」

 

「仕方あるまい、小僧の家で結界を張れば世話役共に気取られる!」

 

「外まで運ぶしかなかろう、間違っとらん」

 化け物達が揉めた始めた。

 

「おう、アンタらの計画、乗ってやるよ。抵抗もしねぇ。だから、この光の事を教えてくれ」

 

 俺の助け舟に、化け物は乗った。

 いや、乗らざるを得なかった。

 化け物達は困惑しながらも、俺の意見に聞く耳を持つくらいの態度にはなった様だ。

 

「その前に、我らの素性は探らんと約束出来るか?」

 

「ああ、約束する」

 

「貴様は深入りするのも許さんぞ?」

 

「あ?条件多いな?」

 

 空気が冷える。

 立場が下では聞きたい事も聞けない。

 

「わかった、小僧の能力は…」

 

「小僧?俺の事か?このクソ雑魚、殺すぞ?口に利き方に気を付けろ、暴れて吐かせてもいいんだぞ?」

 

 化け物に向かっていく。

 この光が出ている間は、俺は無敵だ。

 根拠は化け物の挙動に怯えがみえる。

 身体から出る弱者の怯えの気配。

 コレを見逃す不良は三流だ。

 多対一の乱闘ではこの怯えの気配を出してる奴から積極的に潰していく。

 潰された味方を観て怯えた奴を潰す。

 それの繰り返しだ。

 

「はい、わかった、わかりました…」

 

「で?」

 

 俺の異能は金剛肢こんごうしと呼ばれるもので。

 首から下に限って、光が出ている間は全ての攻撃は無効。

 化け物がこの身体に触れると灰になって消し飛ぶらしい。

 個体差はあるが、異能が切れた時の疲労感は低く、長時間の発動も可能。

 精神力さえ残っていれば何度でも発動できる。

 今、俺が化け物に向かって走って行くだけで化け物は灰になって消し飛ぶ。

 実験してみるか?

 化け物の肩に手を置くと、消し飛んだ。

 肩から下は無くなった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ何をする!貴様!」

 

「ハッタリじゃねぇな、ハハッ悪かったな、ツッコミだよ。ダチ同士よくやるだろ?なんでやねん!ってよお」

 

 数体の化け物が逃げる、ほっとく。

 全員相手は面倒めんどい。

 逃げ遅れた奴の数体の足を吹き飛ばし、情報を頂く。

 

「俺の能力はこんだけか?」

 

「普通は鍛錬しない限り、異能は一つしか備わらない」

 

 怯えきっている。

 その顔、最高。

 写メりたいけど、携帯ねぇな。

 

「わかんねぇだろ?調べろ」

 

「今すぐやります。消さないでください!」

 

 ………。

 

 おおおおおおお、ヤベェ!ちっと疲れるが、こういうのがいいよ。

 派手なのがいいよ。

 炎を操れるとか最高だ!

 主人公感パねぇだろ。

 火生(かしょう)二番目のスキル。

 俺は一発でこいつが気に入った。

 俺は燃えないのに、他の物は何でも燃やせる。

 最高だ!勝った!

 ヤベェ!無敵だ!

 金剛肢でガード。

 火生で攻撃。試してみたら遠距離もいける。

 

 ツキが回ってきた!

 やるか?

 いける、いける。

 勿論俺は考えたよ。

 

 この二つの能力でどうやって金儲けするかってな!

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