第4話 三島段は夢の中 2

 夢の舞台は僕の中学の校舎だが、現実の構造とは違う夢の中ならではの変チクリンな場所。

 夢ってそんな感じである。


「では、続きを聞かせて貰えますか?」


「はい、今夜は魂消祭に向けて、習儀ならしの予定やったんですが、英助が来なくて、家にも迎えに寄越したんですが居らんし、三島さんは何かご存知ないかと」


「僕は禁忌の家だと思います。」


 英助は手柄を欲しがってた、あそこしかないだろう。


「英助、前から手柄立てるって言ってたから、あそこっしょ。」


「私もそう思います。あの子だいぶ悩んでましたよ?」


「僕も、相談受けました」


 数体の霊達が「そうやろ、そうやろ」とザワザワし始めた。


「ちなみに桜尋様は、何か言ってました?」


「三島さんにお任せで」と聞いてます。


 禁忌の家か…それで僕なんだなと納得した。


「因みに万が一の時、桜尋様はサポートしてくれるんですか?」


「はい、聞いてみます」


「今回は、魔女相手だから段の足手纏いになるかもしれない…って皆んなで話してた。そこは大丈夫?」


「うん、情報が無いから何とも言えないけど、特殊な訓練を受けている様子は無さそうだから、身体能力はそこまで高くないと思うよ。でも、人質に取られると困るから僕一人で入った方がいいと思う」


 話しかけてきたのは、この町ではナンバー2の通称ビー玉。

 小学生女子の血濡れた浴衣姿。幽霊歴三十年で能力の引き出しは多種多様。

 体術も鍛えられているが、人魂を飛ばしたり等の中距離での戦闘を好む。

 長引く戦闘や拮抗した状況では相当、我慢強い。


「治癒はチイコが一番この中じゃ得意だったよね、霊だけじゃなくて、生きてる人間も治癒出来る様になった?」


「出来るよ、でも…あんまりやり過ぎんなよ。治癒出来る人達、最近成仏して少なくなってっからな」


 チイコ、ヤンキー女子。喧嘩師、木刀を主に使うが、素手での戦闘の方が強いと思う。

 気合の入ったヤンキーなので、彼女も言動には気を使う。

 ここ最近、治癒スキルが著しく高い事がわかり、意外と慈愛の埋蔵量は膨大。

 桜尋様にゾッコンで、桜尋様の前では子猫の様に甘えてる。

 周りは引いてるが、僕はそんな彼女が可愛いと思う。


「作戦はどうなってます?」


 作戦参謀はダヴィ。金髪蒼眼の父がフランス人、母は日本人のハーフ。

 小学生姿なので、一見頼り無さそうに見えるが、後方支援と作戦の立て方は僕には出来ない領域。

 気弱な性格だけど甘く見ると痛い目に合う。


「まずは家の周りにある魔除けの類の無力化と通信関係はいじる。屋内の情報が無いから、外からの支援がメインになる。捕らえられている霊達の保護と搬送は、ここに居る皆でやるしか無いかな」


「わかった、記憶いじれる人は?」


「魔女に記憶介入が通じるかわからないけど、記憶介入は英助が一番得意なんで、動けるようだったら英助にやらせよう」


「大体こんなもんかな…基本的には交渉。交渉が出来ない場合に備えて、桜尋様に救援要請、救護班は治癒や搬送も含めて全員で。記憶介入は英助。室内が荒れた時の隠蔽は霊達と世話役の田中さんにお願いしよう」


「こんな感じだけど、補足はありますか?」


「いや、一番大事なこと忘れてます。英助達の無事もそうですけど、魔女とはいえ嫁入り前の娘です、派手にならない様に」


「同じ高校の同級生ですし命までは獲りません。基本的には交渉で済めば一番良いと思ってます」


「わかりました。では私は桜尋様に救援を頼んでおきます、他の世話役の方々にも連絡しておきますんで、後はゆっくり休んで下さい」


「わかりました、ではこれで解散ということで」


 そして、霊達は僕の夢から出て行った。


 急に静かになった夢の中で微睡まどろむ。

 

 あの馬鹿、皆んなに心配かけて…。

 でも、桜尋様も悪い。

 魂消祭の予選まであと半月も無いのに…。

 桜尋様が魂消祭のメンバーを早々に発表しないことが問題なのだ。


 英助は魂消祭の選手入りを狙ってたから、こんな無茶したんだろう。

 桜尋様は怠け者でも無いし、仕事が遅いわけでも無い。

 只…神ゲーが発売されたら諦めるしかない。

 僕もさっきまでやっててハマってたから人(神)の事ばかり言えないけど。


 水織さん、七夜河ななよがで魔女指定の女子高生。

 どういう娘なのかって同級生の誰に聞いても「普通の子じゃん」って返答しか無い。

 

 魔女っていう先入観が無かったら普通の子にしか見えない。


 あ、思い出した…。 

 小学生一回、クラスの皆んなに「お前ら結婚しろ」ってからかわれた事があった。

 何がきっかけでそうなったんだろう…。


 忘れた。


 からかわれた事、水織さんが覚えてたらなんか気まずいな…。


 子供の頃の英助が出てきた、夢の中だからな


 

「…織は段が…………んだ。お……絶…………した……い…ぞ」 



 え?何?聞こえない。え?



 意識が落ちていった、夢の中で眠りに沈んでいく。

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