第31話 涙
気づけば、泣いていた。
顔を覆い、ただただ涙した。
桐谷…いや、麻梨さんに認めてもらえた事が嬉しくて、夢の女との乱れた情事が情けなくて…震えた。
熱は冷め、体も楽になっていたが心は重く硬く冷え切っていた。
僕はどうなってしまうのだろう。欲望に溺れていくのだろうか…
悔やみながら涙を流しているとラインの通知音が鳴った。
『いってきますね!真白さんはちゃんと休まなきゃダメですよ〜(`・д・)σ メッ!』
なんだか気が抜けた。これだけ悩んでるのに、間の抜けた顔文字に笑みがこぼれる。
爛れた生活を過ごす僕にとって、健全な彼女は似つかわしくないだろう。
薬に溺れる僕は、彼女を救う事はできないだろう。
ただ、マイナスの沼に引きずり込むだけだろう…
そう考えると涙が止まらなかった。
「こちらにおいで?」
ハッと彼女の声が聞こえたが、これは夢の女…幻聴なのだと気を確かにもった。
限界だ。このままでは現実さえも壊してしまう。
耐えられない、耐えられない、耐えられない…
「そう…それなら、少しおやすみ?」
プツンとテレビの電源を切られるかのように意識がなくなった。
願うならば、己の醜い部分を吐き出す自分を見ずにすみますように…
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