第6話 補充

主治医と当たり障りのない会話をして、処方薬を貰い家路についた。

汗ばんだ体なんて関係なくベッドに倒れ込む。

吐きそうなほど頭と胃がぐるぐる回る。

「薬だけデリバリーで持ってこいよ…」


具合は悪いままだ。

食欲もない、瞼以外動かそうとも思わない。

通院日はいつもこうだ。ただただ憂鬱でしかない。

家の目の前が病院ならどれだけいいんだろう。空から薬が降ってくれば子供のように口を開けて外を舞うのに。

「辛い…」

その言葉は何を指すのか自分もわからなかった。


辛い

辛い

辛い…


そうだ


さっきみたいに彼女との思い出を振り返ろう。

思い出だなんておこがましいほどの些細な出来事の数々だけど、僕にとっては幸せな半年間だった。

それを振り返れば、いつか優しい眠りがやってくるだろう。

幸い、時間はたっぷりある。きっかけだったあの日から思い出していこう……


僕は記憶の扉を開いた。

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